さて次のメンテナンスはKAWAIのBLー82というアップライトピアノです。この機種は約50年前に製造されたもので当時のカワイが気合を入れまくって作った機種です。

 

このピアノは一枚象牙の鍵盤や総アグラフ、ハンマーはレンナーと非常に贅沢な作りなのですが、中でもある珍しい"仕掛け"が装備されています。

 

それはアクチュエーター弦というものです。

 

 

 

 

普通ピアノは鍵盤からの力がハンマーへ伝わりそのハンマーで叩かれた弦が震えて音を発します。


がしかしこのアクチュエーター弦は一切ハンマーで叩かれることなく、ただそこにじっと我慢強く2本だけ張られているだけです。つまり鍵盤の動きとは連動しない不思議で孤独な弦なのです(。-_-).。oO(。-_-).。oO

 

 

アクチュエーターというのはすごく簡単にいうと、あるエネルギー源(この場合他の弦)から何らかの二次的な動作に変換させる装置のことをいいます、言葉にするとたぶんそういうことです(僕も専門分野ではない)。

 

実は我々の日常生活の中にもこのアクチュエーターは車や携帯電話や医療機器など様々な分野に取り入れられている仕組みなのです。

 

 

既にバラバラにされたBL-82

 

 

でこのピアノで普通に演奏し弦が鳴らされるとあら不思議、この叩かれていないはずの2本のアクチュエーター弦も他の弦と一緒に震え共鳴し全体の音をより豊かにしより深みを与えているではありませんか\_(`o´)ココ!

 

つまりそういうことです。

 

一部海外のピアノの中にも同じ機能(アリコートシステム)を持たせている高級機種があります。ブリュートナー(ドイツ)とかベーゼンドルファー(オーストリア)とか。

 

 

 

アクチュエーター弦もダンパーと連動しているので当然2本多い

 

 

今回のピアノはお客様の事情により、過去に長い間外部の倉庫内で保管していた時期があったそうです。その保管方法があまりよろしくなかったようだとお聞きしました。その間に内部がかなり傷んでしまったようなのです..(-_-)

 

 

センターピンの腐食が酷い状況。全交換の予定です。

 

アクション全体に蔓延るカビや汚れもきれいに除去します。

 

 

がしかしハンマーは名門レンナーキラキラ

 

最近のツルツルしたABSとは少し違った樹脂で一見セルロイドのよう。

 

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ピアノに限らずどのような楽器でも、どこかのタイミングで必ず一度は手を入れなければそのクオリティは持続しません。持続しないどころか放っておくと確実に悪くなってしまいます。特にピアノのような気の遠くなるような数のパーツを有するアナログ楽器は尚更です。

 

今回のBLのような仕様は製造コストがかかるため特に日本では今後まず生産されない性質のピアノだと思います。そういう意味からもきちんとメンテナンスをして次の代にしっかり残すピアノにしておくことが大切だと思います\_(*•᎑<*)✧!

 

 

 

 

 

今日も僕のブログを読んでくれてありがとうございましたm(__)m

 

 

 

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