ピアノの修理メンテナンスでアクションをバラす場合、過去に同様のメンテナンスを行っていれば必ず各パーツに手書きの番号が振ってあります。これはバラした各パーツを必ず元の場所に戻す必要があるからです。逆に番号が書かれてない場合は過去に一度も大掛かりなメンテナンスを行っていないという確かな証拠になります\_(`o´)ココ!

 

特に右のペダルと連動しているダンパーはこれを書き忘れて外すと後でもれなく本当に痛い目にあうことになります。幸い僕は書き忘れたことはないんですが、これを忘れたことに後で気づき顔に縦線が入る、というシーンを過去に何度か目撃したことがあります(;゚lд゚llll)! その方はお師匠さんにめちゃくちゃ叱られていてめちゃくちゃ凹んでました。。

 

 

過去に一度もメンテナンスを行ってなければこのように何も書かれてない。※写真はアップライト

 

 

ダンパーというのは音を止めたり伸ばしたりするパーツですが、このナンバリングを忘れてバラしてしまい後で当てずっぽうで組むと音が"微妙に"止まらなくなります。ダンパーの調整はとてもデリケートなので可能な限り「ダンパーには触るな」という技術者もいます。ダンパーは一個ずつ本当に微妙に調整されていて、それで弦を押さえ付けています。結果外したダンパーを間違った場所に取り付けるとたちまち音が止まらなくなってしまうのです。

 

 

全て番号を書いていきます。狭いので書きにくい..  

 

以前、もうずっと音が止まらない場所があって気持ち悪いというお客様(アップライトピアノ)からご依頼を受けたことがありました。確認してみるとナンバリングしてあるダンパーの隣同士がそれぞれ間違って取り付けられていて、やはりその二箇所だけ音が微妙に止まりが悪かったのです。隣同士でもダメなんです。特に低音部から中音部にかけては弦が斜めに張ってあるためダンパーもそれに合わせてそれぞれ微妙に角度がついてます。またこれと似たケースで、まったく番号が振ってなかった(過去にメンテしてない)ダンパーで音止まりの悪いダンパーが二箇所隣同士であり、試しにその二つを入れ替えて見たら見事に音が止まったということもありました。

 

いずれにしてもそれくらいダンパーはデリケートなのでお客様の前でアクションを下ろした際には「このダンパーには振れないでください、気をつけてください」とアクションの近くをお客様が通る度に反射的に何度も言ってしまいます。特に猫ちゃん&ワンちゃんがいるお宅の場合はアクションの近くを彼らが通る度にめっちゃ緊張します。ダンパーに猫パンチなんかされた日にゃこっちがノックアウトとなりますボクシング

 

もうニャンコに包囲されている状態のアクション..

 

すごい勢いで尻尾を振って突進してくることも。すごいカワイイんですけどねw

 

ニャンじゃない気をつけて! まカワイイんだけど..

 

 

 

ピアノのアクションに搭載されているアッセンブリは大きく分けて

ハンマー

ダンパー

ウィペン

の3つがあります。

アクションの一番下に位置する「ウィペン」というアッセンブリには、アップライトピアノの場合スプーンと呼ばれているダンパーの動きと連動するパーツが必ず付いています(一部のグランドにもあり)。このスプーンの角度も各々微妙に角度が異なっているため、やはり番号を振って同じ場所に取り付ける必要があります。

 

 

ウィペンに付いてるスプーン。前後左右の角度が異なる。 

 

 

また僕はことピアノの修理に関しては神経質なところがあり(当たり前か)、各パーツを固定しているビス(ネジ)も同じ場所に戻さなくては気が済まないたち。特にアクションレールが木製の場合はことさら気を使います。なので厚紙や薄板で作った専用のプレートに88個の穴をあけ番号を振ってそこにビスを入れるようにしています。

 

 

 

 

ただこの取り外したビスを管理する方法に関しては全く気にならない技術者の方も多いようで、以前別の方の作業を見ていて取り外した全てのビスをバラバラにしているのを見てかなりのカルチャーショックを受けました(;゚lд゚llll)! でもこれには決まったルールがあるというわけではなくどちらが正しいとかは一概に言い切れません。ま性格ですね。O型ですけど。。

 

 

 

あとビスが錆びていたり汚れていたりした場合は木のプレートに入れると磨きやすいなど何かと管理はしやすいと思います\_(๑❛ᴗ❛๑)ココ!

 

同じ場所に戻すべし!

 

 

また弦を叩くハンマーには製造段階で印字してあるものが多いのですが、この印字番号を鵜呑みにしてはいけない。印字番号自体がなぜか間違っていることもあるし、過去にメンテナンスを行なった人が間違って取り付けているということもごく稀にあるからです。ハンマーも一個ずつサイズと角度が異なるので必ず決まった場所に戻さなければなりません。ハンマーの大きさや角度をよく見て弦の位置に合わせるとおよその場所はわかりますが、番号の確認とナンバリングはメンテナンス初期段階の最重要項目です。印字してあるからといって安心してその番号通りにハンマーを取り付けるとあきらかにおかしなことになり動揺することになります(゚_。)?(。_゚)? とにかく忘れる前にまず番号を振れ!というのは我々の間ではお決まりの合言葉なのです。

 

ただピアノのオーナー様が普段これを確認することはできません。担当の調律師さんがもしアクションを外すことがあった場合、このアクションの裏側を確認すると過去にメンテナンスを行ったことがあるか否かのいい指標になります。

ただたまに見えない部分に番号が振ってあるケースもあります。その場合は一個だけ部品を取り外せばわかりますのでこちらも担当の調律師さんに訊いてみてください。

 

 

ハンマーに印字してある番号と実際の順番が異なる場合がある。

 

 

あと過去に何度か紹介しているパーツですが、ピアノにはフレンジといってピアノという楽器にとって関節的役割を担う極めて重要なパーツがあります。このパーツは今回紹介した他のパーツと違って全て同じ形をしているのですが、新品以外は個体によってそれぞれ"個性"があります(厳密にいうと新品にも)。なので僕はそのパーツをバラした時にも必ず番号を振ることにしています上差し

 

フレンジは小さけど極めて重要なパーツ。

こんな小さくて細いピンがピアノの円滑な動きを大きく左右する。

 

 

とにもかくにも

外したパーツは必ず同じ場所に戻す!

というのが基本中の基本になります。

 

 

 

今日も僕のブログを読んでくれてありがとうございましたm(__)m

 

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