当ブログでも度々書いていますが、ここのところピアノの弦を巻きつけて音を保持している「チューニングピン」というパーツの修理メンテナンスを行う機会が増えています。結果その作業に必要な工具の使用頻度というのも多くなります。その工具で僕的に欠かせないのがこちらのラチェットハンドルとそれに取り付けるエクステンションソケット=ジョイントです。
ラチェットハンドルはメーカーを問わなければホームセンターでも通販でも普通に誰でも購入できます。がしかしピアノの弦が巻かれているチューニングピンを回す工具は特殊な通称"スターチップ"という専用のものが絶対に必要で(チップをつけるハンマーも必要)、普通の工具屋さんでは需要もないしまず売ってません。でこのチップ自体はピアノ調律師御用達の専門店では購入できるし、最近では通販などでもあまり精度は信用できない安価な外国製のものが手に入るようになりました。
星の形をしたスターチップ これでチューニングピンを回します。
で実は厳密にいうと更にもう一つ絶対に必要なものがあり、それがラチェットハンドルとスターチップを繋ぐためのジョイント(エクステンションソケット)です。なぜならスターチップは通常のラチェットハンドルには直接取り付けられない構造になっているからです。そこで二つを繋ぐためのモノが必要なのですが、一般的な普通のラチェット用ジョイントではやはりスターチップを取り付けることが物理的にできません。でその特殊なジョイントソケットを作ってくれている会社が日本に存在し、それが
Ko-ken(コーケン)
という変わった社名の会社です。
ラチェットハンドルとチップの間にあるのが特殊なジョイント
このジョイントはチップが取り付けられるようにオスネジ仕様なのだ!
このコーケンという会社、正式名は株式会社山下工業研究所(工研=コーケン)といって1946年(昭和21年) 創業の老舗工具メーカーなのです。こちらの会社が特徴的なのは、創業当時はレンチ類の製造も行なっていたようですが現在は一貫してソケットレンチとソケット、それにラチェットハンドルだけにこだわり他の工具は製造していない点です。つまりソケットツール専門という珍しい工具メーカーなのです。今やKo-ken(コーケン)といえば業界内や工具愛好家にその名が広く知られていて、MADE IN JAPANでありながらむしろ欧米での方が有名で人気シェア共に高いのです。
<Ko-kenさんのHP>
僕が愛用しているラチェットハンドルのメーカーが、偶然にも調律専用の特殊工具を製造していたということに最初はとても驚きました。調律関係の工具を専門に作ってている会社は海外にも日本にもありますが、コーケンさんは調律工具を専門に作ってる会社ではありません。例えソケット専門メーカーであってもそんな採算の合わないものを作ってくれているということに感謝と尊敬しかありません。まさに調律業界=ピアノ界に"貢献"してくれているというわけです。ただしかし、当然ですがこれ一つだけでめっちゃ高くて、弊社の調律代一回分近くします まぁでもこれは需要が少なくていいモノは高額というのは世の常で仕方ないことでもあるし、この工具を使えるということ自体が光栄なことでもあります。
monoマガジンで紹介されるほどのクオリティ
でも一体どのような経緯でコーケンさんがこのジョイントを作ることになったのかわかりませんが、日本におけるピアノの故郷である同じ静岡県内の会社であるということがもしかしたら関係しているのかもしれません。工具製造といえば関西方面か新潟が一般的ですから。
調律をする際に使うチューニングピンを回すための専用ハンマーでもこの修理作業はできるのですが、細かい作業を小刻みに何百回も繰り返すにはこの短めのラチェットハンドルが有効なのです。特に手のあまり大きくない僕にはとても作業しやすいジャストサイズでKo-kenさんのラチェット精度も非常に優れた逸品だと思ってます。
刻印されたKo-kenの文字が誇らしい..
信念を持ち一つのものに強くこだわり社会貢献をする。小さな一つの工具から教えてもらったことで、自分もそんなちっぽけで偉大な信念を持ちたいです。
今日も僕のブログを読んでいただきありがとうございましたm(__)m
<ブログお引越し勝手に2周年記念リブログ>