放射線と抗がん剤を受けるために、入院したばかりときのことです。


入院のため、あらゆる情報を記入させられます。自分の病状をどれだけ理解してしているかとか、家族歴とか、そのなかに『気持ちの辛さ』的な項目がありました。10段階のグラフになっていて、わたしは6に○をつけました。


気持ちは、辛かったです。


病棟の看護師さんは、緩和ケアと連携をとり、緩和ケア担当の看護師Mさんを呼んでくれました。


緩和ケアというと、終末期に介入してくるイメージが強いですが、今はがんの初期からの介入が標準となっています。


わたしは、Mさんにがんになってしまった戸惑い、治療に対する不安や死への思いをひたすら語りました。とにかく話を聞いてくれる人が欲しかったんです。


夫には、がんについては語れても、死については語れないのが辛いところでした。それをポロっと病棟の看護師さんにもらしたことがあります。


主治医は、わたしのベッドサイドにきて、「ご主人に言えないことは、僕が聞きますから」と言ってくれました。わたしは、びっくりして、頷いただけでした。


とても嬉しかったです。


大病院の忙しい主治医が、そんなことを言ってくれるとは、思っていませんでした。


ただ、医師の忙しさはわかりますので、わたしの精神的ケアのために、主治医の足を止めることは、とてもできません。



けれど、Mさんが、週に1度ぐらいですが、会いにきてくれて、病状のこと、死について思うこと、飼っていた猫の話まで、聞いてくれました。ステントが入っているので尿を貯めるのが辛いと言うと、放射線科と相談してくれて、配慮して貰えるようになりました。


毎日、毎日、放射線をうけ、週に1度抗がん剤を打ち、ベッド上でしんどくて、だけど頭は正常で、時間はたくさんあって、色々なことを考えることができてしまうんです。


テレビをつけていても、スマホで音楽を流していても、どこか空虚でした。


友人たちは、電話してきていいよ、と言ってくれていましたけど、なぜか電話できませんでした。

電話って『話をしないといけない』じゃないですか、「大丈夫だよ」とか嘘ばかり言ってしまいそうな気がしました。



語弊が出てしまいそうですし、印象が悪いかもしれませんが、Mさんは、『仕事でわたしの話を聞いてくれるんです』これは、わたしにとって非常に話しやすい状況でした。また、泣いてしまったり、話につまっても、じっと待っていてくれます。『対話』のなかには『沈黙』があってもよいし、それは重要な要素でもあります。


Mさんは、人柄がよく、緩和ケア看護師としての知識、会話のスキルに長けていて、良い看護師さんです。



今は、もう寛解し通院による経過観察中ですので、お会いする機会はないのですが、感謝しています。