私の生まれ育った故郷は海町でしたが、
幼い頃に海で遊んだ記憶は、
数える位しかありませんでした。
母が車の免許を持っておらず、
繁華街に住んでいた私達家族は、
祖父や親戚、時には母のお店の
お客さんに連れて行ってもらう事が
たまにあり、それが何よりも
嬉しかったのでした。
あの頃…
多分、私達のような家庭は多くあり、
また、女性が自立して家庭を守る事は、
まだまだ難しかった時代だと感じています。
そう考えると…
母も時代の波に翻弄され、
どうしようもなかったのだと
今は理解しています。
けれど…
そうした家族の暗部で声も上げられず
ただじっと耐え続けた子供達は、
大人になったけれどなれなかった子達。。
(私もそうですが…)
当時、上げられなかった声を。。
今、この拙い文章で叫ぼうと
しているのかも知れません。。
『登場人物』
兄・明人(アキト)~中学2年生『14歳』
父が蒸発してから母が壊れていき、
自分が家族を守らないと…と、
いつも考えていた。。
妹・真帆(マホ)~小学4年生『10歳』
父は真帆が生まれる直前に蒸発した。
母のアルコール依存に苦しめられ、
母の異常な執着により学校に通えない。
母~アルコール依存症。
夫が蒸発してから少しづつ
アルコールに逃げるようになった。
父~10年前に蒸発して行方知れずとなる。
祖母~母との確執がある。
『Who killerd that family』
~あの家族は一体何に殺されたのか~
⑨
『僕は早く強くなりたかった。。』
『守りたかったんだ。。』
後に少年はそう語った。。
少年の母が暴力を振るうのを
初めて見たのは。。
彼が4~5歳の頃だった。
母親はその時、
ひどく酔っていたように思う。
『自制心の欠落』
アルコールにはそんな弊害が伴う。
母親が何度も何度も。。
ベッドから突き飛ばして泣き叫ぶ赤子。。
赤子は妹の真帆だった。
まだ幼い明人は、
『ダメ!お母さん!ダメ!』
縋(すが)り付くも母親は、
明人が掴んだ手を払い除けて。。
また赤子を突き飛ばし続けた。
母親は泣きながら。。
何かをブツブツと言っていた。
「あんたのせい…あんたの。。」
そして泣いていた。。
(このままじゃ赤ちゃん、
おかしくなっちゃう!)
無我夢中で母親の腕にしがみついても、
幼い明人の力では母親を
止めることは叶わなかった。。
『ダメ!ダメだよ!』
泣きながら明人は母親に訴え続けた。。
~それが最初に見た母の虐待の記憶だった~
時折、視界がグラッと歪むような感覚が、
つきまとい…それは悪夢となって甦る。。
あの時の母の暗い顔。。
無表情で涙に濡れた顔。。
少年はあの顔を思い出すと、
強い苛立ちと焦燥感が甦ったと言う。
幼い自分、
母を止められない非力な自分、
泣き叫ぶ妹、
『もっと力があれば。。』
『自分も妹も守れるくらい。。』
そればかりを願っていたあの頃。。
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そして少年は呟いた。
『ただ…一言。。ごめん』
『そう言って欲しかった。。』
誰に?
その問いかけに少年は。。
何も言わなかった。。
『砂の果実』
生まれて来なければ…
本当はよかったの。。?