この映画が心に残っている理由の一つに音楽の良さが挙げられる。

「サルサ」で分類される曲がこの映画全般を引き立てている。

 

3拍子で代表的な「ワルツ」の「ズン・チャッ・チャッ」のリズムは1拍目が強いが、

「サルサ」は3拍目が強い。

1拍目を強くするのが自然な感じがするが、この3拍目を強く蹴り上げるような

リズムの取り方こそが、「ワルツ」の柔らかさとはまったく別の「サルサ」の

力強さを生み出している。

そしてこの「サルサ」の力強さがヴィラの力強さ、ラテンの力強さそのものの

ようにも感じる。

 

曲のメロディ-は、かつて大洋ホエールズにいた「ポンセ」の応援テーマ曲が

近いものに思う。

 

「サルサ」の原曲というものをラジオで聞いたことがあるが、地味で単調、

インパクトがない。

これが、モーリス・ジャール(ジャン・ミシェル・ジャールの父)の手にかかると

一大オーケストラによる壮大なスケールの音楽となって現代に蘇る。

曲の概要は vol.1 で書いた通りである。

 

印象的なシーンとしては映画の冒頭であったか。

政府軍に捕らえられ絞首刑になる男が公衆の面前での刑が執行される直前に

「サルサ」を口ずさむ。

すると、周りにいた民衆が次々にこの「サルサ」を口ずさんでいき、大合唱となる。

刑の執行に対する民衆の批判がこの「サルサ」の大合唱に表れているのだ。

ついに絞首刑は中止になる。

 

絞首刑を中止させる力を持ったこの曲が、私の心に残る音楽となったのだ。