子供の頃に、ヴィラ・ライデス(Villa Rides)という映画を見た。

子供が見ても、とても面白く気分が爽快になる映画であった。

 

今にしてはとんでもないシーンの連続なのでテレビではほとんど

放送されず、話題にも登らないが未だに私の心に残っている映画の一つである。

記憶の話になるので相違があるかもしれないが、印象的なシーンは以下の通り。

 

革命軍を率いるヴィラは政府軍と戦い最後は倒すのであるが、

一筋縄ではいかず、うまくいかないことも多かった。

一度政府軍に捕らえられた場面で、ヴィラは処刑されそうになる。

民心を捉えているヴィラは政府軍の中にも実際は慕っている者も多かった。

処刑の指揮官も古参の兵士はヴィラを殺せないと思っていた。

だから、敢えて新米の兵士を3人揃えて処刑を執行しようとする。

 

ヴィラは処刑場で3人の銃を持った新兵に向かって近寄りこう言う。

    「お前は何歳だ」

新兵の一人が「19歳です。」と答える。

ヴィラ     「若いな。お前にとってこれが最初の大仕事だ。」

自分の心臓を指さして「いいか。ここだ!」

そして両手を広げて  「しっかり狙え。」

            「大丈夫だ。」

             「自分を信じろ。」

              「一発で仕留めろよ。」

 

まるで父親が息子を諭すような言い方で体を張って少年兵の心に迫るヴィラ。

19歳で政府軍に入隊するというのは、貧しいからに他ならない。

貧しさは体だけでなく心も貧しくする。親の愛もほとんど知らない彼ら。

そこにヴィラの大きな心に触れたのだ。

その大男は処刑者ではなく敬愛する父親の姿そのものだ。

少年兵3人は銃をヴィラに向けて構えるが、もう引き金を引くことはできなくなってしまう。

 

いつまで経っても処刑が執行されない状態になり、指揮官はこう怒鳴る。

「処刑は中止だ!」

こうしてヴィラは危機を乗り切る。

その後、処刑場から抜け出すのに成功する。

 

この心の駆け引きは今でも私の頭に残って消えない。