自分を自分たらしめるのは記憶か、環境か。


霧の魔女と名乗る者から同窓会への招待状を受取り始まるクローズドサスペンスもので、ファタモルの登場キャラと設定を一部引き継いで繰り広げられる全く別のお話なんだけど、悲劇の描き方や真相への展開の仕方が上手くて夢中でプレイしました。あと音楽も素晴らしくて物語への没入感も半端ない。短いけど凄く満足できる作品でした!



以下全体感想。ネタバレしかしてません。





まさか記憶喪失がクローンという真相に発展するとは思わなかった…!覚えてる物事や人もあったから、道中襲われたことで記憶が曖昧になってるだけなのかなって思ってたら、記憶喪失のキャラはクローンでオリジナルと入れ替わっていたという根本から覆される感じに鳥肌立った。ポーリーンが交換制度の事を話し出してからの展開がとにかく凄かったです。


ポーリーンといえば笑顔でマリーア惨殺しちゃうのは怖かった(震)明らかにサイコパスとか分かるキャラよりおっとりお嬢様系のほわほわしたキャラが普段と態度が変わらずに色々やってしまうのとかが1番怖いかもしれない。ほんとにマリーアはポーリーンに料理の作り方(包丁の使い方)教えた事後悔してると思う…w


ネインがポーリーンを殺して自殺したのも頷ける。自分の為なら友達も躊躇いなく殺す、何の疑問なく交換制度を使う事が分かっているから向き合おうにも向き合えないし館から無事に出られたところで処分されないようにずっと顔色伺ってオリジナルのように振る舞わないといけない苦痛。でもメルと一緒に生きて味方でいて欲しかったよ。


最初は館までの道中でのメルの発言が色々と怪しすぎて黒幕かと疑ってたんだけど、全然そんなことなくて全てを知ってたからこそのああいう言動だったのかと思うと…父親の期待に応えられなければいつでも替わりがいると知りながら過ごす日々って辛すぎる。オリジナルメルからネリーへの遺書は胸にきた。このプロジェクトってオリジナルもクローンも誰として幸せにならないんだよね…


実際の黒幕は白い髪の娘だったわけだけど、同じクローンで愛したメルに自分と同じ苦痛を味合わせたくなくて記憶だけ失わせて何も知らずにオリジナルとして生きていけるようにしたかっただけ。それをプロジェクト側の人間である館の女中に手のひらで転がされて他の交換対象の問題とかと重なりあってああいう悲劇になってしまったかと思うと白い髪の娘もプロジェクトの被害者なんだよなぁ。


そしてミシェル…!!本編だけだとなぜそこまで白い髪の娘に固執するのかは分からずだったけどサイドストーリーを読んだらもうさぁ…泣 自分より下の人間がいれば少しはマシに思えるんじゃないかっていう始まりだったのにそれが初めてありのままの自分を受け入れてくれる存在への出会いで。絶対的な救いで、好きとか嫌いとかの言葉で収まるもものではないのに結局好きって言葉になってしまうっていうのを白い髪の娘が死んだ時に自覚して泣くシーンで気持ちがいっぱいになった。

伝える相手も待つ相手もきっとオリジナルの方なんだろうけどもういないから。その気持ちがクローンへ向かったのもあの悲劇に繋がってるのかなと思った。ネージュからのあのメール達が届いて読んでたら違う未来もあったのかな?



なぜ他人は自分の欲望を満たす為に理想の相手を作りだすのだろう。


オリジナルを生かしきちんと向き合うべきだった。でなければおまえの愛した者は結局偶像でしかない。


とにかく霧上のエラスムスという作品はこの言葉達に詰まってる気がしました。悲劇がだいたいこのすれ違いで起きてるのよ。


ネインがポーリーンを愛せなかったように、メルが妹を大切に想うように、白い髪の娘がオリジナルじゃなくてクローンのメルを愛したように。

いくら遺伝子が同じで命令されようと感情まではどうにもできないから。やっぱりオリジナルとクローンは違ってその人はその人だけしかいない。


メルはプロジェクトをとめることを決意してたけど、最後ミシェルのクローンがいたことをみても、悲しいけど人間という生き物がいる限り終わらないんじゃないかなぁと思ってしまいました。



あと最後にひとつ。ヤコポ退場早すぎるよ!笑