恥を知る、という言葉はもう僕たちには死語になったのだろうか。
今回の東京五輪は、もともと招致する段階から、裏交渉で要人にいくら金を渡しただの、耳を疑う噂が絶えなかった。いまだにその点は灰色のままだ。
そこだけでも気持ちが悪いのに、前例のない一年延期をした今、大多数の国民の賛同が得られていないのに、論点をごまかしながらとにかく五輪を強行しようとする。
見苦しいにもほどがあると言いたい。
少し前、我が国の感染者の数は「さざなみ」だと言って物議をかもした学者がいた。しかし、世界の諸国と比べると我が国の感染状況は、増えた減ったというものの、いずれにせよ「さざなみ」程度であることはまぎれもない事実である。
その気になれば、オリンピックはできるだろう。厳しい感染対策が施されようと、中途半端で後味の悪いイベントになろうと、いちおう行うことはできるだろう。
ただ、たとえそうでも、今はオリンピックをやるべきでない、と僕は思う。それは全くの本末転倒であるからだ。大事なことを忘れていませんか。未だに身の回りの、それまで当たり前にできていたことができなくなっているのを。学校行事、冠婚葬祭、村や町の祭り、スポーツや文化の多くの催しが、これまでいくつ潰れてきたことか。再開しかけているところもあるが、それでも完全復活には程遠い状況である。今回のウイルスを怖がりすぎたのか、自粛の癖がいまだに尾を引いており、そのために、かけがえのない楽しくて素晴らしいイベントの数々が、行われずじまいになっている。
最近見たテレビの番組で、ある五輪関係者が、オリンピックをこれ以上延長したり、中止したりしたら、中にはもう選手生命が終わってしまう人がいる、そうなったら取り返しがつかない、とヒステリックに訴えていたが、そんなことを言うのが実は全くの逆効果であることに気付いていない。
なぜオリンピックだけは特別扱いなのか。人生でただ一度の大事なこと、入学式や成人式や結婚式や、その他いろいろなイベントが、感染防止を理由に潰れているのに、なぜオリンピックだけは潰れてはならないのか。
どうも五輪の関係者には、感染防止よりも大切なことがあるらしい。特別であり時には命を冒してでもやる価値があると思っているようだ。もし、それがオリンピックのスポーツの祭典としての理念や意義から出ていることなら、それはとても結構なことだ。これまで、本当に大切なイベントだったら中止せず何とかしてやりぬくべきだ、と訴えてきた僕にしても、「オリンピック頑張れ！」と言って応援したくなるはずだ。
しかし、今回の場合は、本末転倒である。オリンピック強行の理由は、そんな立派な崇高なものではない。もしそうなら、その前に、自国の今まで潰れていた行事や活動をきちんと復活させてからオリンピックに臨むことだろう。自国の恥ずべき状態を復元してから、国際的な行事にも取り掛かることだろう。実態は、オリンピックに関係するいろいろな領域の人々が、誰も責任を取りたくなく、不利益を出したくなく、中止による不名誉も味わいたくない、という、言ってみれば金や自分の見栄のために無理やり開催しようとしているだけなのである。そんなオリンピックなら、やらないでほしい。
テレビや新聞は、そのほとんどがオリンピックを協賛しており、真面目に中止を主張することはありえない。コロナ・ウイルスの場合と同じく、政府の方針に逆らうようなことは決して伝えない偏向報道が続いている。
しかし、僕たちはこれ以上我慢したり、なるようにしかならないと諦めるだけでよいのか。今、思うのは、国会前で座り込みをしたり、政治運動に身を投じるばかりが、僕たちの意思表示の手段ではないということだ。
たとえば、フェイスブックに加入している人で、オリンピックに反対な人は、たった一行、「オリンピックは中止せよ」と書いたらいい。これが何百万、何千万と載ることになったら、相当なインパクトを国内外に与えるのではないか。
こうして、全ての関係者が、なし崩し的に巻き込まれ、オリンピックとしては意味のない、気持ちが悪く、最低のものが我が国で開催されることについて、まず僕個人はここではっきりと反対の意思表示をしておこうと思う。
「東京オリンピックはただちに中止せよ！」