しーくれっと。 | Clock knock

Clock knock

いつでも変わらない時間と場所

体にまとわりつく空気が気持ち悪くて俺は外に出た。夜の空気は気持ちが良い。
闇はシンプルで、原始的だ。
頭の中心が熱を帯る。
慣れたものだった。頭の中に浮かび上がる疑問。そのどれもが前に見た時と全く同じ形でまとわりつく。気持ち悪い。
いつからか何かがおかしくなっていた。
変わっていないはずのことが変わる。変わるわけがないはずなのに。
俺はいつも通り何かを待っているだけだ。連続的に、永続的に。
また新しく浮かぶ疑問。まただ。「また」。退屈で、つまらない。劇的な展開も無い筋書きに観客も席を立ちはじめているのが目に見えるようだ。
目覚めて消えて、眠って失せて、目には見えない大切な何かを喪っていく。誰かが死ぬ間際に願う時間を俺は目を閉じて、耳を塞いで、じわりじわりと感じていく。

誰にも見せてはならない秘密の扉がある。
その扉はいたって普通、扉らしい扉、あなたにとっても誰にとっても親近感のわく、ただの扉だ。
しかしその扉にはどの扉よりも価値がある。
材料が高価だから?
そうかもしれない。
天下一級の職人が作ったから?
そうかもしれない。
特別な思い出があるから?
そうかもしれない。
その先には巨万の富があるから?
そうかもしれない。
理由はあるがそれがどういう性質なのかさえわからない、ただひたすらに人を惹きつける価値を持つ。なぜならそれが「秘密」の扉だからだ。
俺は戦えるだろうか。