第十四回 資料冊子の制作
書籍や学者の方々の論文など、このプロジェクトを通じて、
僕は、S寺さまが所有されている多くの資料に触れてきた。
その中に、ある資料があった。
それは、約50頁に及ぶ手書きの原稿で、
開基さまとその周辺の人々のことが、とても詳しく説明されていた。
住職さまのお話によれば、アマチュアの研究家の方が執筆された論文で、
戦前、S寺さまに奉納されたものとのこと。
非常に内容が良いことから、S寺を訪れる研究者の方々に
住職さまが、その論文のコピーを渡しておられるとのことだった。
絵本プロジェクトの一環として、
この資料を、活字にして製本することをご提案し、
お手伝いをさせていただけることとなった。
この資料のように、お寺に伝わりながらも
あまり世の中に知られていないものは、全国にたくさんあるはずだ。
こうした良質の歴史資料を、お寺自らが整理し、
地域や研究者の方々に向けて発信する。
お寺のこうした取り組みによって、
地域社会や各機関、様々な人々との繋がりを、
広げることができるのではないだろうか。
資料を多くの方々に見ていただくため
僕は、以下の内容をご提案した。
【 冊子の仕様 】
版 型:B5サイズ 並製
頁 数:64頁
製 本:無線綴じ(背表紙のある製本)
【 編集の内容 】
・ 旧かな使いや旧漢字を、すべて現代用法に変更
・ 幅広い年齢の方々に見やすいよう大きめの文字を使用
・ すっきりと読みやすいレイアウトデザインにする
今回、住職さまのご意向により
この資料冊子は、非売品として無料頒布する。
多くの方々に請求していただくため、
僕は、ホームページ内に資料紹介ページの設置をご提案した。
手書きの文字をすべてデータ入力。
さらに、表現をすべて現在用法に変更した。
紙面のデザインや表紙の色など、住職さまと打ち合わせを進め、
約1ヶ月半で、開基さまを紹介した「資料冊子」が完成した。
完成後、この資料をS寺さまのホームページで紹介。
冊子の請求窓口を設置し、無料頒布を開始した。
以降、決して山ほどの申し込みがあるわけではないが、
月に数件、研究者の方々からの請求をいただいている。