第六回 絵本の制作~完成まで(その2)
完成した物語をどの様な絵で伝えるのか。
当初、僕はある著名な絵本作家さんに絵をお願いするつもりでいた。
しかし、その作家さんが多忙で
執筆していただけるのは2~3年後との返事だった。
以来、僕の書店通いが始まった。
絵本作家(画家)さんを探すためである。
京都、東京の主要書店や絵本専門店など。
絵本が並ぶ棚の前で、僕は一冊一冊を手に取り確認していった。
今にして思えば、体の大きな男が必死で絵本を見ている光景は、
周囲の人たちには、さぞかし不審だったことだろう。
そうした中で、これはと思った作品が見つかれば、
出版関係者の繋がりを辿り、その絵本作家さんに連絡を取り打診する。
お願いするのが人気の作家さんばかりということもあり、
すぐに執筆していただける方はなかなか見つからなかった。
かなりの時間が経過してしまっていた頃だった。
知人を介して、一人の絵本作家さんを紹介していただいた。
ある絵本賞を受賞されたという作品を見せていただいた。
僕の心が震えた。
「この人にお願いしたい。」
やさしく、とても温かみのある絵が印象的で
まさに、物語にぴったりだった。
2人目のアーティスト、
絵本作家Uさんとの出会いである。
早速、住職さまにも作品を見ていただいた。
答えはもちろんOK。
すぐに、正式に執筆をお願いすることになった。
ちょうど同じ頃のこと、住職さまからお話があった。
「10月に新宿区歴史博物館で“ 至宝展 ”を開催することになりました。」
“ 完成した絵本を多くの人に見ていただける ”
願ってもない大チャンスだった。
しかし、至宝展の開催までは5ヶ月。
印刷にかかる時間を考えると、
3ヶ月と少しで絵を仕上げてもらわなければならない。
これは絵本作家さんにとって、相当な負担となるに違いない。
無理なお願いと知りつつも…
僕は、絵本作家さんのもとに急いだ。