【17.デジタルアーカイブス】



・デジタルアーカイブの応用分野の例
a.貴重資料
  デジタル化することにより、
  破損や汚損の恐れなく利用に供することができる。

  貴重資料は、
  通常複写も制限されるが、
  デジタル化すれば複写制限する必要はない。

b.新しいコンテンツづくり
  デジタル資料は加工しやすいので、
 組み合わせたり、
 解説や注釈を加えたり、
 音声をつけたりして、
 新しいコンテンツを比較的容易に作成することができる。

 米国では同国における歴史資料のデジタルアーカイブであるアメリカンメモリーに蓄積されたデジタル資料を利用して、
 学校教育の教材が開発された。

・デジタルアーカイブの特徴
  a.時間的・地理的な制約を超えた資料提供
    デジタル化あされた資料は、
    インターネットにより時間的・地理的な制限を超えて利用できる。

    自宅にいながらにして、
    いつでも欧州のよーろぴあーなや米国の米国デジタル公共図書館を通じてデジタル資料を閲覧できる。

  b.さまざまな角度からの資料検索
    資料を新たな切り口から見ることも可能となり、
    資料のあらたな評価や活用につなげて行くことができる。
 
    地域における過去の災害に関するデジタルアーカイブを商品流通などの視点から検索すると、
    これまでにはないことがわかるかもしれない。

・デジタルアーカイブの作成手順を示す「デジタルアーカイブ・ロードマップ」という図をデジタルアーカイブ推進協議会が作成している。

・この図は美術館博物館を想定したものだが、
 図書館のデジタルアーカイブの作成にも有用である。

・「主体者」とは、
 デジタルアーカイブを薦める組織や個人のことである。

・組織には、
 美術館・博物館・寺院・自治体・教育機関や企業などがある。

・デジタルアーカイブには、
 「計画⇒記録⇒データベース⇒プレゼンテーション⇒利用」
 という五つの段階があることがわかる。

a.計画層
  将来の使用・活用目的・提供方法などに合せ、
  どのようなデジタルアーカイブを作るかの概要と構造を検討する。
  
  単に所蔵品の広く・保存用として出自他あるアーカイブを構築する場合と、
  所蔵品を高精細画面で来館者に鑑賞してもらうために構築する場合とでは、
  次の記録創意後における作業の規模、
  必要なハードウェアのシステム・運営管理体制・予算などが大きく異なる。

  将来の収蔵作品量の拡大、
 ハードウェアの技術的進歩などを考慮して検討することも重要である。

b.記録層
 文章・図版・画像・映像・音声などの対象資料をデジタル化する方法を検討し、
 その上でデジタル化を行う。
 
 必要に応じて、
 作品管理台帳のデータ項目の再整理と新規項目の追加も検討数る。

 メタデータと呼ばれ、
 デジタル化された資料がどのようなものかを確認したり、
 検索数rの二両される。

 デジタルカメラやスキャニングなどの技術的知識を持った人材の確保やスタジオ、
 利用目的に合わせた各種機材などの準備も必要となる。

c.データベース層
 記録層で作成されたテキスト・画像・映像などのデジタル資料とデータベース層を検索するためのメタデータを蓄積したデータベースを構築する。
 
  データベース化によって、
  さまざまな角度からデジタル化された資料を検索することができる。

  データベースのセキュリティ・メンテナンス・利用手続き・決済の管理を行うことによって、
  企業や個人にデジタル化された資料を提供することが可能となる。

d.プレゼンテーション創
 データベースに蓄積されたデジタルデータを使用して主体者が各種の新しいコンテンツを作成し、
  利用者に提供する。

e.利用者
 プレゼンテーション層で主体者が作成。・提供したコンテンツを活用して、
 利用層の利用者が再度自分の目的に即したコンテンツを作成し、
 自身の顧客などに提供する。

 プレゼンテーション層を飛ばして、
 データベース層から直接“生”のデジタル資料を入手して、
 コンテンツを作成することも可能である。

 ・作成の各段階のうち、
  記録・データベース・コンテンツの作成にかかわる技術的な側面について述べる。

a.記録
  絵画などだと撮影技術が通常使用される。

  撮影の時には高度なデジタル写真技術が要求させる。

  文書などの記録には、
  スキャニング具術も使用されるが、
  一度マイクロフィルム撮影を行い、
  その後デジタル化するという方法が採用されることも多い。

  記録の際には、
  将来の使用目的にあわせた解消度を確保しておくことが重要である。

  データの圧縮方法の検討も必要だし、
  データ保存の媒体についても検討しておく必要がある。

b.データベース
  記録したもの(デジタル資料)をデータベースに蓄積する。

  データベースシステムの構築には、
  データの蓄積・管理・検索の技術が必要になるが、
  今後は、
  既存のデータベースなどに分散して蓄積されているデジタル資料を統合する技術や、
  ログデータのように過去から変化しながら継続的に蓄積されて行くようなものに適切に対応する技術、
  将来ますます増加して行く大量のデジタル化資料の高速処理技術が求められるだろう。

c.コンテンツの作成
 データベースに蓄積されたデジタル資料を基に、
 DTP(印刷物の電子編集)ソフトやDTPR(電子プレゼンテーション)ソフトを利用してコンテンツを作成する。

 コンテンツの作成には、
 画面加工ができるソフトやテキストデータを不可・編集するソフトも必要となるし、
 画像の不正使用や偽造を防止するという意味では、
 電子透かし(ウォーターマーク)などのソフトも必要になる。

 作成したコンテンツは、
 インターネットやDVDで提供される。

・国立国会図書館は「国立国会図書館デジタルアーカイブポータル(PORTA)」という、
 各機関のデジタルアーカイブに格納された資料に関して、
 機関横断的にワンストップで検索できるポータルサイトを構築した。

・2012年1月以降国立国会図書館サーチ(NDLサーチ)に統合され、
  各機関のデジタルアーカイブの資料はこれから検索できるようになった。

・PORTAでは57機関のデジタル資料を検索でき、
  その件数は約2,8000万件に達する。

・国立国会図書館のものとしては、
 国立国会図書館デジタルコレクション・近代デジタルライブラリー・歴史的音源などのデジタルアーカイブなどが含まれている。

・国立国会図書館のもの以外のPORTAが対象とするデジタルアーカイブについて記す。

  ①公的機関のアーカイブ
    アジア歴史資料センターや農林水産関係試験研究機関のデータベース・府省所管の各種デジタルアーカイブサイト
  ②大学・大学図書館のアーカイブ
    各大学の機関リポジトリなど
  ③公共図書館のアーカイブ
    各県立図書館のデジタルライブラリーなど
  ④民間の機関のアーカイブ
    青空文庫・新書マップなど

・国立国会図書館(NDLサーチ)は国立国会図書館(NDL)をはじめ、
 協力する公共図書館・公文書館・美術館や学術機関等における資料の統合検索ができる。

・国立公文書館では、
 「国立公文書館デジタルアーカイブ」というサイトを構築している。

・各府省などから移管された公文書約75万冊分と内閣文庫の資料48万冊分の画像を含むデジタルコンテンツを見ることができるようにシステムの整備を進めており、
 その衆力件数は徐々に増加している。

・収録資料には、
 重要文化財や大判資料(国絵図)、
  歴史を彩る絵巻物などの重要資料、
 「日本国憲法」や「終戦の詔書」などの御署名原本、
 「民撰議院設立建白書」「全国主要都市戦災概況図」なども含まれている。

・資料は、
 行政文書・司法文書・法人文書・寄贈-寄託文書・内閣文庫というように、
 移管元ごとにまとめられている。

・キーワード検索や詳細検索画面では、
  各資料の階層構造を使って細かく探すこともできる。

・国立公文書館デジタルアーカイブのトップページを参照してほしい。

・地域の振興にデジタルアーカイブは重要な役割を果たす。

・地域振興のためには地域の魅力を外部へ広く発信する必要があるが、
  地域の特徴である神社仏閣・美術館の所蔵物・食品・芸術品・造形物などをデジタルアーカイビングし、
  市町村のサイトにあげることにより、
  実現する。


・地場産業で共同利用できるような地域伝統のデザインなどをデジタルアーカイビングすることにより、
 活性化を図ることもできる。

・地域資料のデジタルアーカイブの構築は、
  自治体自らが予算を取って進めているもの、
 商工会議所など地元の経済界が賛同企業を募って大学などと協同して進めているもの、
 ボランティア組織やNPOが進めているものなどさまざまである。

・国の予算によるプロジェクトもある。

・地域を経済的な側面から見たときのイメージを地域ブランドと称して、
  各地域がそのイメージ作りを活発に進めている。

・地域ブランドの確立は地域振興にも資すことになるが、
 確立にもデジタルアーカイブは重要な役割を果たす。