【図書館徹底活用術 監修者より 】



●図書館は本だけでなく人、
 そして自分の夢と出会う場所になってほしい

寺尾隆(図書館流通センター顧問・レファレンス研修担当)

・1959年生まれ。

・近畿大学中央図書館に30年間勤務し、
主にレファレンスサービスを担当。

・2006年から8年間、
国立国会図書館のレファレンス共同データベース(レファ協)事業企画協力員を務める。

・現在、
株式会社図書館流通センター顧問、
IAAL(特定非営利法人 大学図書館支援機構)研修委員、
レファ協サポーターとして日本各地でレファ協を活用した図書館員の研修や公園などを行う。

 図書館は本を借りる場所―誰もがそう認識していた時代から、
大きく様変わりをしてきた。

 特にこの5年ほどは、
イベントが盛んに行われている。

読み聞かせがあり、
本の紹介を対戦形式で行うビブリオバトルがある。

そうしたイベントを通じて、
参加者同士の交流が生まれている。

 もちろん
図書館は居場所を求める高齢者の方や子ども、
誰でも気兼ねなく訪れることのできる貴重な場所だから、
「1人で居られる」
ことを含め、
さまざまな人と人をつなげるハブのような役割を担うようになってきた。

 このような変化の背景には、
社会の状況がある。

活字離れが懸念されるなか、
子どもの頃から本を読む習慣をつけさせようという考え方があり、
親御さんからも読み聞かせのニーズは高くなっている。

「アクティブラーニング」も重要である。

学ぶ者同士がグループを作り、
情報収集をしながら自分たちの課題を見つけ、
ディスカッションして解決方法を考え、
プレゼンテーションするという学習法だが、
文部科学省の方針もあり、
大学で盛んに行われている。

大学図書館では、
こうした学習支援が図書館員の重要な仕事になっているのである。

この流れはその後、
高校・中学と降りてきていると同時に、
従来から小中学校を中心に行われてきた調べ学習と融合しつつある。

 子どもに関することばかりでなく、
本書でも紹介したビジネス支援の動きもある。

 「開発した商品を地元のどこの会社で実際に製造してもらえるか」
ということを考えた時、
地元企業と既にパイプができている図書館ならば仲介ができる。

図書館を通じたつながりから生まれた製品が、
図書館に展示してある…ということもある。

 図書館が、
訪れる人にとって課題や、
本当にやりたいことを見つける場所へと変化してきているのである。

 ここから先は私の願いになるが、
本だけでなく人と出会う場所、
課題を見つける場所にかわりつつある図書館の未来に、
もう一つ、
「夢を見つけること」
が含まれてほしいと思っている。

 将来どんな仕事に就きたいのか。

仕事を通じて何を実現していきたいのか―。

 図書館が、
自分を磨き、
夢を見つけるきっかけになることができたら、
こんなにすばらしいことはないと私は思っている。