【生涯学習論 7.社会教育の施設・職員・関係団体】



社会教育施設

社会教育法に定められた社会教育施設

・日本における生涯学習の施策が、
学校改革の視点を欠いたまま展開されている。

・日本の生涯学習事業は、
少なくとも今のところまでは、
実質的に社会教育とほとんど重なり合っていて、
地域住民に対する行政サービスとしての生涯学習機会の提供とは、
実は社会教育機会の提供に他ならないと言える。

・社会教育行政の基礎をなしている社会教育法によって、
法的に定められた<社会教育施設>と<社会教育専門職員>について確認をしておかなければならない。

・社会教育法には、
「図書館及び博物館は、
社会教育のための機関とする」(第9条)
との規定がある。

・法に定められた社会教育施設としての公民館・図書館・博物館、
および専門職員としての社会教育主事・司書・学芸員の相互の役割負担が不分明になってしまったのである。

・特に司書(補)は図書館、
学芸員(補)は博物館という、
それぞれ特定の施設に勤務する専門職員として規定されているのに対して、
社会教育主事は必ずしも公民館に勤務する者としてではなく、
むしろ公民館の規定に先立って規定されていること、
図書館も博文館も、
地方自治体に対して義務設置を求める規定ではないのに対して、
社会教育主事は
「都道府県及び市町村の教育委員会の事務局に、
社会教育主事を置く」(第9条の2)として義務配置が求められていることには注意が必要である。

結局、
法律の解釈次第では、
社会教育法は図書館法や博文館法の上位に位置しており、
公民館は図書館や博物館よりは基礎的で重要な施設であり、
社会教育主事は図書館や博物館を<含む>社会教育事業の全体を総括し、
企画立案する専門職員であるということになりかねないのである。


図書館と公民館

・社会教育主事は自治体に必置の専門職員である。

・公民館は地域に密着した社会教育施設である。

・図書館のない市町村は少なくないが、
公民館を持たない自治体は例外的であり、
しかも一つの自治体に相当数に上る公民館が設置されているのが普通である。

・生涯学習推進の事業を展開するためには、
 公民館と社会教育主事とを核にして考えることが現実的であろう。

・公民館は<学習のための資料>を伴わない空っぽの施設である。

・社会教育主事は、
「社会教育を行うものに専門的技術的な助言と指導を与える」
ことがその任務であるが、
資格要件の内容から見ても図書館の司書や博物館の学芸員に、
「専門的技術的な助言と指導を与える」
ことができるとは思えない。

・社会教育主事職と公民館という施設とが必ずしも連携されているわけでもない。

・地域に根差し、
地域住民とりひとりの学習需要に応えることできる施設として、
豊富な資料を備え、
資料の収集と提供とに関する専門家である司書が配備されている公共図書館に勝るものはあるまい。


図書館と博物館

・図書館と公民館との役割分担が不分明であるのに対して、
図書館と博物館との違いは比較的に明らかである。

・どちらも<学習のための資料>を備え、
市民に利用してもらうことを旨とするサービス施設であるが、
図書館が資料を手に取ってみる・読む>ことを主たるサービス内容とする施設であるの対し、
博物館は<展示・展覧>を主とする施設である。

・図書館は日常型の社会教育施設であり、
博物館はどちらかと言えば日常型の施設である。

・図書館は地域住民のあらゆる情報ニーズに対応すべき、
個人利用を原則とする施設であるが、
博物館はむしろ専門的な専門機関としての機能をも併せ持っており、
社会教育施設としては、
<集客>に力点が置かれることが多い施設である言える。

・違いは当然、
主として収集する漁の性格の差異に由来しているのであるが、
図書館(と公民館)が、
市民の日常的な利用にサービスすべき、
社会教育を主目的とする機関であるのに対して、
博物館は<市民サービス>と<学術研究>戸を同時に行う機関であることが最大の相違点であると言えよう。

・博物館の専門職員である学芸員は、
社会教育専門職員としての資格を問われる以前に、
当該博物館の専門領域に関する研究者(主題専門家)でなければならないし、
その専門領域を超えて<市民のあらゆる学習ニーズ応える>ことはできないのである。

・図書館と博物館との相違は大学教育における一般教育と専門教育との差と言って良いかもしれない。

・博物館は生涯学習事業の展開に際して、
地域住民へのサービス拠点とするには無理がある。

・重要な学習機会を提供するものではあるが、
公共図書館とは明らかに異なる役割を果たすべきものなのである。