【生涯学習論 6.社会教育行政の任務と役割】




社会教育法に定められた社会教育施設

・日本における生涯学習の施策が、
学校改革の視点を欠いたまま展開されている。

・日本の生涯学習事業は、
少なくとも今のところまでは、
実質的に社会教育とほとんど重なり合っていて、
地域住民に対する行政サービスとしての生涯学習機会の提供とは、
実は社会教育機会の提供に他ならないと言える。

・社会教育行政の基礎をなしている社会教育法によって、
法的に定められた<社会教育施設>と<社会教育専門職員>について確認をしておかなければならない。

・社会教育法には、
「図書館及び博物館は、
社会教育のための機関とする」(第9条)
との規定がある。

・法に定められた社会教育施設としての公民館・図書館・博物館、
および専門職員としての社会教育主事・司書・学芸員の相互の役割負担が不分明になってしまったのである。

生涯学習機会の提供

・市民にとっての<生涯学習の機会>には具体的にどのようなものが考えられるか、
そのうち<教育行政>の役割として期待されるものにはどのようなものがあるか。

①    生涯学習に関わる団体の育成。
社会教育団体。

②    生涯学習にかかわるイベント・集会の開催もしくは公園等。
 青年学級・公開講座。

③    生涯学習施設の設置・運営。
公民館・図書館・博物館。

④    生涯学習指導者・助言者の配置・研修など。
社会教育主事(補)・司書(補)・学芸員(補)。

生涯学習と社会教育

・司書の資格を得るための講習科目の「社会教育」が、
1997年度から、
必修の『生涯学習概論』に置き換えられたのはその典型的な例である。

・「第12条(社会教育)」
として
「個人の要望や社会の要請にこたえ、
社会において行われる教育は、
国及び地方公共団体によって奨励されなければならない」
との規定がある。


教育の統合と管理教育

・現在に至るまでなお、
文部科学省の考える社会教育行政は社会教育団体やスポーツ・体育関係の団体の育成であり、
学級。講座・講演会などの主催・後援であり、
スポーツ・文化関連のイベントの開催である。


民間の事業と教育行政

・各種の自由で主体的な教育学習活動を背後から奨励し、
援助するものに限定しようとしたのが社会教育法の精神であったと言って良い。

・行政の行う競技の<社会教育事業>と、
民間事業者の行うさまざまな事業、
とりわけ教育産業が営利事業として行う活動活動や多種多様で不定期な市民の自主的活動とが、
勇気的な関係を失ってしまったということでもあった。

・公金の支出については受益者が多いほど<成功>であり、
なるべく公費負担は少なくして効果をあげようというような考え方に寄ってしまうと、
社会教育行政といわゆる教育産業とは役割分担が不可能になってしまう。

・むしろ民間事業者にはできない、
採算の取れない事業にこそ力を注いでいくことが望まれる。

・人口の少ない地方での学習機会の提供や、
少数者を対象とする事業の積極的な展開などの面での役割が今後ますます重要になろう。