【あとがき 利用者が「使える図書館」を作る】


「一生に一度は行きたい図書館」といった記事をよく目にする。

ただ一方で、
こんなことも思うのである。

どんなに「すごい図書館」だろうと、
電車や飛行機で何時間もかかるような場所だったら、
自分にとってはないのと一緒じゃないか。

図書館というのは使いまわしてナンボである。

通勤や通学のついでに立ち寄って本をめくったり、
何十年も通い続けたりすることができなければ、
意味がない。

「一生にしか行かない図書館」など放っておいて、
もっと近くの図書館に目を向けた方がいいのでは?

わが街の図書館を自分の生活に
「どう役立てるか」を考え、
どんな風に使えば図書館の潜在能力を引き出せるのか、
試行錯誤していくべきなのではないか?

本書の出発点はこのような疑問からだった。

まだ十分な数とは言えない者の、
日本はすでに三二〇〇以上の公共図書館がある。

都市部ならだいたいおおきい図書館があるし、
リクエストすれば他館から本を取り寄せることもできる。

近隣自治体の図書館や地域の大学図書館が使えるケースもある。

ある程度、
環境は整っているのである。

活かせるかどうかは、
私たち利用者にかかっている。

利用者が、
「何かヒントになる本はないか?」
「あの仕事につかえる資料はないか?」

という意識をもって図書館に足を運べば、
元の図書館のいいところにも悪いところにも気がつくことができるだろう。

「ただ本を借りるだけでは満足しない利用者」
が増えてくれば、
「貸出以外の情報サービス」
も進化していくはずである。

図書館サービスは利用者の姿を反映する。

レファランスサービスが、
いまだほとんど誰も知らないことから、
利用者がいなければ空回りするだけである。

利用者も、
「タダで本が借りられる」
と喜んでいるようでは、
図書館もまた
「ただ本を貸すだけ」
というレベルにとどまってしまう。

図書館の情報サービスがもっと使いやすくて役に立つものになってほしいなら、
利用者が変わらなければならない。

一人ひとりの利用者が、
本気で
「自分の人生に役に立つ情報」
を求めて図書館に足を運ぶようになれば、
提供する側のサービスも高度化し、
図書館が利用しやすくなるー
そんな「いい環境」が起きるだろう。

この本によって、
そんな「シビアな利用者」が少しでも増えることを願っている。

本書の執筆は、
「僕でも図書館を使いこなせるようになる本を書いて」
という編集者のひとことでスタートした。

エージェントからは、
「図書館すきによる図書館好きのための本になってはならない」
というアドバイスのおかげで、
幅広い層に届く本になったと思う。

なにより、
読者の皆さま、
最後までお付き合いいただき、
ありがとうございました。