今回紹介する記事は
2021年7月15日付けの
     
「朝日新聞」の記事です。
      
【任命拒否する政権 学術会議の法解釈 説明ないまま変更 不誠実さは地続き 外された「6」は 忖度のシグナル 痕跡残したい】


というタイトルで、
東京大教授加藤陽子氏が、
日本学術会議会員に任命されながら、
菅義偉によって任命を拒否された問題に関して、
紹介しております。

いつもどおり、
「4つ」の視点でこの記事を見ていきます。
 
(4つの視点についてはこちらをご覧ください)

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始めに読んでほしいブログについて


(1)内容の要約

 菅義偉が6人の二名を拒否したと報道されたのは、
2020年10月だった。

自身の任命が拒否されたことを知ったのは、
9月29日の午後5時ごろである。

学術会議事務局ら電話があり、
任命されなかったと伝えられた。

『寝耳に水』という言葉が実感として浮かんだ。

私のほかにも任命されなかった推薦者が誰かいる、
とも言われている。

私はこの件が始まって以降、
記録として残すために日記をつけている。

日記には、
学術会議以外の情報も書いている。

社会の雰囲気や同時代的な偶然性を含めて、
記録するためである。

この問題に関して会見に出ていないのは、
研究者としての就職を控えた人たちを大学で多く指導しているので、
未来に何か負の影響が及んではいけないと懸念したのが要因である。

 政府とのやり取りが先月末で一区切りを迎えたため、
この段階でインタビューに応じた。

私たち6人は、
任命が拒否された理由や経緯がわかる文書を開示するよう、
政府に請求していた。

たとえ真っ黒に黒塗りにされていようと、
何かしらの情報は加持されるものと思っていたが、
政府の回答は、
『文書が存在するかどうかも答えない』
という非常に不誠実なものだった。

 6月に出された不開示決定は、
納得できなかった。

内閣官房は、
該当する文書は存在しないと通知してきた。

内閣府の回答はさらにひどく、
文書が存在するかどうかを明らかにしない『存否応答拒否』だった。

文書が隠滅された可能性もあると思う。

 インタビューに応じたもう一つのきっかけは、
報道機関などによる調査が進んで、
学術会議の自律性が安倍晋三の時代から何年もかけて、
掘り崩されてきた過程が明らかにされたことである。

 任命拒否が判明した直後の2020年10月、
菅義偉の決定には法的に問題があるとするメッセージを公表した。

 学術会議は、
会議の推薦に基づいて首班が会員を任命すると定めている。

この任命権については、
1983年に中曽根康弘が答弁しており、
あくまで形式的な任命権であって、
会議の推薦が尊重される、
との法解釈が確定していた。

 しかし、
菅義偉による拒否は、
新しい法解釈に立っている。

つまり、
政府の解釈が変更されているのである。

解釈変更が必要になった場合には、
政府は国会で説明する義務があるはずである。

けれど、
菅義偉は説明していない。

 決定の背景を説明できる決裁文書はあるのか、
とも問うたのは、
日本近代史を研究するものとして、
行政側が作成した文書を長らく見てきた。

だから、
何か初めてのことをするときには、
文書記録を作成する傾向が官僚にはある、
と知っていたのである。


 ただ近年、
官僚が官邸からの要求に押され、
適切に文書を作成できない事態が生まれていると感じていた。

安倍晋三時代からである。

集団的自衛権に関する憲法解釈を閣議決定変えたり、
検察庁幹部の諦念年長に関する法解釈を政府見解を出すだけで変えたり…。

法ができないと定めていることに対して、
法を変えずに実行しようとする人々が、
どういう行動様式を取るのか。

確認したい気持ちが今回あった。

 任命拒否について、
菅義偉は十分な説明をしていない。

日本が立憲的な法治国家である以上、
行政府の行為は、
国民や立法府からの批判的検討を受ける必要がある。

行政活動には法的な権限がある以上、
その権限を行使することに正当性があるのか。

自らが任命拒否した行為について、
国会で正面から答弁することが、
説明である。

 『人事の問題なのでお答えを控える』
と言うとき、
菅義偉は、
『なぜ外されたのか分かるよね?』
と目配せをしているのだと思う。

自民党を批判したからだろうとか、
政府批判に関わったからだろうとか。

国民が忖度することを期待しているから、
説明しないのだろう。

忖度を駆動させない対策が必要である。

日本の歴史を振り返れば、
政権や指導者が国民に十分な説明をしなくなりやすいのは、
対外関係が緊張し、
安全保障問題が深刻化したときだった。

しかし歴史は、
そうした傾向が国民に不利益をもたらしたことも教える。

戦前の日本は、
1931年満州事変を機に国際連盟を脱退し、
常任理事国であるという巨大なメリットをみすみす手放してしまった。

もし脱退の必要性を国民に説明していたら、
国益に資するのかという幅広い検討機会が生み出され、
脱退しない展開もあり得たはずである。

 菅義偉が自分を外した理由は、
歴史記録を長年眺めてきた者の直感だが、
安保法制に反対したり、
『立憲デモクラシーの会』に参加したりしたことを含めて、
政府批判の訴えをしたからだろう。

大衆的な影響力を警戒されたのだと推測する。

 任命拒否問題の本質は、
政府が法を改正せずに、
必要な説明をしないまま解釈変更を行った点にあり、
集団的自衛権の問題や、
検察庁幹部の定年延長問題とも地続きであること。

私が国民の前で説明することができる人間であったことが、
不都合だったのではないだろうか。

 菅義偉が任命拒否した人数が6人だったのは、
象徴的な数字として使われたのではないかと見ている。

前回2017年に105人の新会員が任命された際、
当時の学術会議学長は政府側から要求されて、
『事前調整』に応じている。

推薦者の名簿に本来の人数より6人多い111人の名前を書き、
見せたのである。

 しかし今回は、
山極寿一会長(当時)が事前調整に応じず、
初めから105人ピッタリの推薦名簿を出した。

対する政府側の反応は、
私たち6人を外す決定である。

『次回は二〇一七年の様に人多く書いて来いよ』
というシグナルなのだろう。

 任命拒否された6人のうち5人は、
連携会員や特任連携会員に任命されるという形で、
実質的会議の活動に参加している。

 現会長に活動を希望しないと自分が伝えたのは、
『実』を取るより『名』を取りたいと思ったからである。

 政府が問題のある行為をした事実、
批判されても決定を覆そうとしない態度を取っている事実に関して、
歴史に刻むことも大事だと私は考えた。

実質的に欠員が生じたままにしておくこと、
私が外されたという痕跡を名簿の上に残しておくことが、
名を取る道である。

 歴史に事実を刻み得たとしても、
政治がすぐに良くならないかもしれない。

しかし、
事実として、
出入国管理法の改正にしても、
東京都議選の結果にしても、
五輪の進め方にしても、
社会は政府や与党の望む通りには動いていない。

 6人が外されたこと、

6という数字には特別な意味が込められていたかもしれないこと。

皆で覚えておくことが、
もう一度6人を削ろうとする動きへのけん制になるだろう。

希望を見い出したいと思う。



(2)なぜこの記事を切り抜いたか    

内閣は法解釈を変更したのであれば、
国会で説明する義務があることについて、
紹介した記事のため。


(3)自分はどう思うか?
 
官邸官僚と呼ばれる警察庁出身杉田和博は、
事務方トップの内閣官房副長官歴代最長在職日数3205日を記録して、
2021年10月4日に退任した。

上皇生前退位、
新元号選定、
東京インパールシリアリンピック警備検討調整会議…。

実務面を取り仕切り、
内閣人事局長を兼務し、
霞が関で畏怖された。

日本学術会議の会員候補6人の任命拒否を主導したとされ、
奇しくも報道されて約一年後に去るということを予測できたものは少ない。

内閣官房「該当する文書は存在しないと通知」

内閣府「文書が存在するかどうかを明らかにしない『存否応答拒否』」

杉田和博の後任は、
内調として安倍晋三のオトモダチ強姦逮捕握り潰しを始め、
あらゆる不祥事を闇に葬ってきた北村滋…。


「人の話を聞く」と公言する岸田文雄。

森友問題で自殺した赤木俊夫さんの妻雅子さんの話を聞くだろうか。

広島県市民の被爆者たちの話を聞くだろうか。

学術問題任命拒否問題で任命されなかった6人の話を聞くだろうか。

「取り敢えず聞いてやった、
でも言うことを聞くなんて誰も言ってない。」

上述の内閣官房や内閣府の言動を見ると、
こういう展開を予想してしまう。

闇将軍気取りの「3A」(安倍晋三・麻生太郎・甘利明)の言うことは丁稚奉公の如く聞きそうだ。

内閣は法解釈が必要になった場合は、
国会で説明する義務がある。

三権分立におけるイロハのイである。

東日本大震災から約十年、
安倍晋三一味と菅義偉一味により、
この国は当たり前を当たり前にすることができなくなった。

困ったら衆議院を解散し、
選挙で勝てば自民党の極悪非道残酷無非はお咎めなし、
禊は済まされたと言い出す。

今月はその選挙が始まる。

当たり前を当たり前に取り戻すには、
2025年参議院選挙まで野党が三戦三勝しないと変わらないだろう。

それでも、
今回の衆議院選挙で、
一人でも多くまともな人間を国権の最高機関に送ることが求められる。


(4)今後、どうするか?

・加藤陽子氏に関する記事をスクラップする。

・内閣の法解釈は国会で説明する必要があることを忘れない。

・記録を残すことを続ける。


今回も自分の勉強がてら、
まとめてみました。

加藤陽子氏に関する記事は、
以前も紹介しました。

説明をしないことは、
碌でもないことが裏で起きることの証明であります。


皆さんも、
記録を取り続けましょう。

黒川弘務が賭けマージャンで辞める、
安倍晋三が二度目の職務放棄をする、
菅義偉が任命拒否問題報道から約一年で職務放棄する。

一寸先は闇、
人間社会のマニュアルです。

社会が政府や与党の望む通り動かないのは、
国民が当事者意識を持ち、
おかしいものにおかしいと言い出す時ということを忘れないで下さい。