以前から気になっていた、日銀の国債買い入れの原資ってなんだろうとまとめました。

最も単純なモデルから、段階を追って細かく説明していきます。

「アベクロ」さんと、「コクミン」さんの二人が登場する昔話風にまとめてみました。

 

■最も単純なモデル

○税金の仕組みと、日銀の仕組み

コクミンさんは真面目な方で、趣味は貯金。物欲がなくせっせと働いてお金を貯める一方、いつも老後を心配している、心配症でもあります。

アベクロさんは、お金などの貴重品を預かる金庫業と、周りの敵からコクミンさんとアベクロさん自身を守る防御柵付きの家作りを営んでいます。防御柵はハイテクで、家には電気、水道、コンピュータなどの様々な機能が含まれています。家づくりの費用はコクミンさんがアベクロさんに毎年手渡すのことが、二人の間の固い約束になっています。

また、心配症のコクミンさんは、泥棒が怖いので、貯めたお金をアベクロさんが持つ非常に頑丈なニチギン社製の金庫に預けています。

 

○国債発行

アベクロさんは、ある日、もっと快適な家と、安全な防御柵を作りたいと考えました。

建設費用を試算した所、コクミンさんから毎年もらっているお金では足りないことがわかりました。

そこで、借用書を作ってコクミンさんからお金を借りることにしました。借用書には1%くらいの利息がつきます。

貯金の好きなコクミンさんは、アベクロさんの言うとおり、借用書と引き換えにお金を貸すことにしました。

アベクロさんは先祖代々しっかりした方なので、必ず借金は返してくれるはずという信頼関係も、コクミンさんを後押ししました。

アベクロさんはコクミンさんから毎年もらっているお金に加えて、コクミンさんから借りたお金もつぎ込んで立派な家と防御柵づくりを続けています。

コクミンさんはせっせせっせと働き、アベクロさんに毎年支払うと約束しているお金を渡し、更に、借用書と引き換えに追加のお金もアベクロさんに預けました。

アベクロさんはドンドン借用書を擦り立派な家と防御柵を作り、コクミンさんのもとには大量の借用書が溜まっていきます。

家と防御柵はコクミンさんが求める以上のToo muchなものが出来上がって行くのを見て、コクミンさんは一抹の不安を感じるようになりました。

 

○低欲望社会

アベクロさんはふと考えました。

このまま借用書を擦り続けて、コクミンさんからお金を借り続けると、コクミンさんに借金を返すのが苦しくなりそうだ、と。

借金を返すには、家造り、防御柵づくりの支出を抑えるのが有効なのはわかっていますが、自分ができれば贅沢で快適な生活を送りたいのと、周りの敵が怖いので、それをやめることはできません。

そうすると、自分の収入、すなわち毎年コクミンさんからもらっているお金をつり上げないといけないことになります。

しかし、コクミンさんに値上げを伝えると、自分が責められたり、余計な支出をやめるように言われる可能性もあります。

では、どうやってコクミンさんからお金をもっと取ればよいのか。。。

そこでひらめきました。

「そうだ、コクミンさんに遊んでもらおう、贅沢をしてもらおう」と。

実は、コクミンさんが遊んでくれると、コクミンさんが使ったお金の一部が、アベクロさんに流れる仕組みになっています。

しかし、真面目で物欲がなく、老後を心配しているコクミンさんは、アベクロさんがいくら発破をかけても、遊んでくれません。

 

○黒田バズーカ

悩みに悩んだアベクロさん、ついに、コクミンさんに対して勝手な妄想をするようになりました。

「もしかして、コクミンさんに欲がないのは、手元に借用書がドンドン溜まっていくのが不安なのではないか。それなら、金庫に入っているコクミンさんから預かっているお金と、コクミンさんが手元に持っている借用書を交換してみたらどうかな。手元に現金があれば、きっと安心して遊んでくれるようなるに違いない。」

アベクロさんは、コクミンさんから預かっているお金が入っている金庫を開けて、現金を取り出し、コクミンさんに「借用書と現金を交換しよう」と持ち出しました。

アベクロさんのあまりの剣幕に押されたコクミンさんは、それを了承するしかなく、手元にあった借用書をアベクロさんに渡し、手元にはアベクロさんが金庫からもってきた現金がたくさん舞い込んできました。アベクロさんは、自分で発行した借用書を勇んで持って帰りました。コクミンさんは手元に入ってきた現金がもともと自分がアベクロさんに預けたお金とはつゆ知らず、あっけにとられていました。

 

○株価上昇

低欲望のコクミンさんは、手元に現金があっても、特に欲しいものがないので、途方にくれていました。

借用書であれば、毎年少しずつ利息がもらえたのに、利息がつかない現金をたくさん手元に持っているのも、面白くありません。

そこで、他にお金を増やす方法がないかと考え、とりあえず、隣のショーケンさんの家に行って、カブを買うことにしました。このカブはとても腐りにくいもので、持っているとたまに配当金というお金が手に入ったり、時には高く売れることもあり、安く買える時もあり、貯金が趣味のコクミンさんにとっては現金を手元に持っているよりは良いように見えました。

ショーケンさんの売っているカブの値段は、以前は安かったのですが、コクミンさんが手元に溢れかえった大量の現金でカブを一斉に買ったために、ドンドン値上がっていきました。

 

○少子高齢化

コクミンさんはせっせと働きづづけていますが、歳のせいか、最近ちょっと疲れを感じることがあります。

少しずつお金を稼ぐ力が弱まってきている中で、アベクロさんに毎年約束のお金を渡すのが年々負担になってきています。

しかし、アベクロさんはそんなコクミンさんの変化には気づいて気づかないふりか、本当に気がついていないのか、未だに約束通りコクミンさんから約束のお金を毎年取りつづけています。

アベクロさんは、家造り防御柵づくりに余念がなく、規模を縮小する気配もありません。

 

○今後はどうなるか

この流れは、仕組み的には、コクミンさんがアベクロさんに預けていたはずの金庫の中のお金が、すべて借用書に置き換わるまで続けることができます。

しかし、コクミンさんが、ある時、老後が心配なのでお金を沢山使いたくなった、金庫の中のお金を下ろしたいとアベクロさんに言ったらら、どうなるでしょうか。

金庫の中にあったはずのコクミンさんのお金の大半は、アベクロさんの借用書に置き換わっているため、お金を下ろすことができなくなります。アベクロさんは強権的に、コクミンさんに対してお金を下ろす制限をかけるしかなくなります。

コクミンさんは、自分がもっているカブを売って現金を作るかもしれません。大量に買っていたカブを今度は売り出すので、カブの値段はドンドン下がっていきます。

また、借用書に対する信用も落ちます。もともとアベクロさんが信頼できるから引き受けていたのに、このようなことになると借用書が不渡りになるのではないか、と心配します。

アベクロさんは実はコクミンさん以外にも借用書を渡してお金を借りていたとしたら、その影響は甚大です。借用書の価値はドンドン落ちますから、結局は、コクミンさんの持っていたお金がドンドン消えてなくなることになります。

アベクロさんは、いざとなったら自分たちの作った家と防御柵をお金に変えればいいんだよと言っています。ですが、コクミンさんとアベクロさんしか主に使っていない電気や水道を、買ってくれるのは誰でしょうか。コクミンさんしかいません。そもそも、その家と防御柵はコクミンさんからの借金で作ったものです。友達にお金を貸して、友達がそのお金で友達の趣味満載の家を建てた後に「ごめん、借金返せない。その代わりにこの家と借用書を交換してくれないかな」と言われているのと同じことになります。さて、それが叶ったとすると、アベクロさんはどこで暮らすつもりなのでしょうか。また、コクミンさんが、その家が借用書と交換する価値が無いと考えたら、その差額は誰が埋めるのでしょうか。

ひょっとしたら、他の誰かが高値で買ってくれるかもしれません、建設に投資した金額と同等以上の価値を家と防御柵に見出し、そのお金を借用書と交換し、金庫の中に現金として戻してくれるならば、コクミンさんは一旦は許すでしょうが、アベクロさんはその家と防御柵を使う権利を失いますから、当然追い出されます。それを買い取った方がとても親切な方であればよいのですが、普通に考えると、家賃としてコクミンさんから非常に高いお金をとるのは当然でしょうから、コクミンさんは生活がまた苦しくなります。