貼り付け方どうしょうようか迷ったんだが無理やり張ってみたww

誤字脱字はチェックしてないんでかなりあるとは思うんだが、許してください。

ではよかったらちなみにこれ未完成なんですよww
気になる人は挙手ノシお願いします。

その人用にまた続きをあげます。

ではどうぞw 

mixiは10000文字(スペース込み)なんで途中切りです。

続きも10000文字なんで切りpart3であげきるかな?

これアメーバだとどうなんだろう?
よくわからんのでmixiのをそのまま使ってみましたww

よかったら感想聞かせてくださいw


 「もう飽きたよ」
そう呟くと少年は机に倒れるように伏せた。
外では先ほどまで体育の授業であったみたいだ。生徒たちが楽しそうに校舎に入ってくる声がする。
その声からは、今日これから何をするなどさまざまな話が聞こえる。
「…もういいよ…」
誰にも聞こえないような声ではき捨てるように言った。
「おい、何さっきからぶつぶつ言ってんだよ和」
そういうと後ろから思いっきり叩かれ、顔が机とさらに密着する。
「この後部活見学行くだろ?もちろん野球部だろ?」
「…いや」
「へ?」
「野球はしないよ」
「おいおいどうしたんだよ、お前受験終わってから少し暗いぞ?」
「放っておいてくれ…ごめんな」
「へいへい…」
そういうと彼は呆れたように去っていった。
「…帰るか…」
彼は真新しい黒のかばんを持つとすっと立ち上がり教室を後にする。
「はぁ~」
外は春日和。すべてがきらきら輝いている。
草木からは生命の力強さを感じるし、風からも歌声のようなものを感じる。
「もう…やめてくれよ」
家から高校までは、徒歩で15分くらいのところにある住宅街にある。
玄関の表札には「清水」と書かれている。
鍵はいつもポケットの中に入っている。
「…カチャ」
玄関を開けると生活感漂う匂いがする。
「ただいま」
そういうと靴を脱ぎ真っ直ぐ二階の自分の部屋に向かう。
階段をのぼる途中で下から、おかえりという声が聞こえたが返事は適当にして部屋のドアを閉める。
部屋に入るなりベッドに鞄と制服を投げるように置くと机のほうに向かう。
机には、小学校から野球をしてきた自分の写真が飾られていた。
すぐに顔そむけるとパソコンのスイッチを押す。
外は夕方から夜になろうとしていた。
遠くからは部活で汗を流している音が聞こえる。
僕の最近の日課はパソコンを使っていろんな人のブログをチェックすることである。
別に人の日記を読んだところで、コメントしようとかではない。
ただの暇つぶしである。
そんなことをしていると、遠くから玄関が開く音がする。
そいつはいつも楽しそうに笑っていて、僕に頻繁に話しかけてくる。
そいつは何が楽しいのか僕は分からない。
ただそいつはいつも僕の近くにいる。
コンコン。
僕の部屋のドアを丁寧に、それでいてわくわくを押さえられないような感じでノックしてきた。
「ただいま和。今日もパソコン?」
そういうとそいつは僕のベッドに座る。
これが彼女の定位置だ。
「まぁ…ね、しず姉こそ何しにきたの?」
彼女は清水 静。
性格やら何から何まで僕と正反対な僕の実の姉である。
「和とお話したくて来たんだけど?」
そういうと制服の上着を脱ぎだす。
「とりあえず頼むから僕の部屋で着替えるのはやめてくれ」
はいはいといいながら上着をすっと脱ぐ。
「まったく僕の言うこと利く気ないね…」
半分呆れたようにはき捨てた。
「それで今日学校どうだった?」
「別に普通だけど…」
僕はパソコンの画面を見ながらいう。
「それが入学したてのいう学生の言うことか…。部活見学は行ったの?」
「…行ってない」
僕は短くそう言うと、ガラッと部屋の空気が重たくなった。
「そう…」
そう言うと姉は逃げるように部屋から出て行った。
姉はドアをしめる瞬間、どこか寂しそうな弟の姿が見えた。


それからまもなくして和は引きこもった。




「はぁ~…」
和が引きこもってから一年の月日が過ぎていった。私の頭の中は弟のことでいっぱいだ。
あれから弟は学校に行くと吐き気や頭痛を訴えて通学できなくなり、病院に行っても体自体には問題がなく、いたって健康体であるという一点張りで、進行がなく精神的なものと判断された。
親はしばらくすればと、期待したがそれもかなわず、今ではほとんど放置状態。
話しかけても、我ここにあらずって感じで正直こっちが参ってきた。
「何か…何か方法はないのかな…?」
ぎゅっと手を握って私は少しだけ目をつむった。




それから私は夢を見た。
そこは私の家であった。
玄関を入るとそこからは生活感漂う場所。
階段をのぼっていくとキイキイ音がする。
そして階段をのぼった先の一番奥の部屋。
いつもイキイキしている私の弟が待つ部屋。
部屋をノックするとそこには服をベッドの上に脱ぎ散らかしている弟の姿。
「静姉どうしたの?」
懐かしいその声。
「お話しにきたんだよ和」
そう言って私は弟のベッドに座ろうとする。
座った瞬間ググっと後ろからすごい力がきた。
私の体はぐんぐんベッドの下へと吸いこまれていく。
視界が完全に暗闇に吸い込まれる。
最後に懐かしい弟の顔が見えた。


「し…し…か…静!!」
かば!!っと勢いよく私は机から顔を上げた。
目の前には同じクラスの子が私を見ていた。
「え?」
「もう授業始ま…どうしたの静?!泣いてるの??」
私の目から涙が出ていた。
「あ…あれ…?ハハハ…ごめんちょっと寝ぼけてたよ!!」
私はなるべく明るく振舞った。
「そ…そう、そろそろ先生来るから席戻るね!」
そう言って友達は私から離れていく。
少しわざとらしかったかなと思ったけど、私は次の授業の教科書を机の上に出す。
そしていつもと変わらない授業が始まる。
この日の先生の授業の声は、私の耳をすり抜けて行く。
私の頭の中には、さっき見た弟の懐かしい顔だけが浮かんだ。
目から涙が出そうになったが、ぐっと我慢した。


「ただいまぁ~…」
そこには夢で見た場所と似て非なるものであった。
私は階段をのぼり鞄を自分の部屋に置くと、すぐ弟の和の部屋へと向かった。
コンコン。
虚しくなるような音が、この空間に響く。
部屋からは一応人の気配はする。
私は大切なものを扱うかのように、ドアをゆっくり開ける。
「…和、ただいま…」
和は部屋にいた。
一年前とは違い、背は十センチほど伸び、短かった髪も無造作に伸ばしている。
部屋もカーテンを閉め机のパソコンとずっと睨めっこしている。
「…」
もう見慣れているはずなのに、見るたびに胸が痛い。
「き、今日も一日中パソコンいじってたの?」
私はなるべく明るく振舞う。
「毎日パソコンだと飽きない?たまには外に出て気分転換でもしない?」
「…」
弟はひたすら無言であった。
しかしパソコンをいじる作業は止まらない。
「何をそんな毎日いじってるの?お、お姉ちゃんに教えてくれないかな~」
…カチカチ…カチカチカチ…
それでも弟はそれにすがるようにいじり続ける。
「お姉ちゃんまた来るね…」
私はそう一言言い残すと弟の部屋を後にした。


バサッ…
私は自分の部屋に着くなりベッドに思いっきりダイブする。
「今日も何言ってもダメか…本当にどうしたらいいの?」
実は前に強引にパソコンから引き離したことがあったのだが、その後弟は暴れ出し手がつけられなかった。
強引な策はダメ…かといってこのまま和が喋りだすのを気長に待つのも得策か?
しかしここの所、ずっとああやってパソコンで何かを作成している変化が見えてきた。
最初の頃は、ただパソコンを眺めているだけだったのに…。
いっそ家のブレーカーを落としてみるか?
うまいこと自然現象に見せかけてやれば、本人も作業をやめざるを得ないし…。
いやそれでは、また暴れ出すのがオチか…。それならいっそ家燃やして強制外出…。
「ん~…」
自分がどんどん変わっていく気がする。
昔はこんな乱暴なことはしなかっただろうに。
「私…もうこんな世界はいやだ」


私は急に携帯を鞄から取り出すと、電話帳から「長谷川」という名前に電話をかけた。
長谷川というのは、小学校からの幼馴染で、静と同じ学校に所属している。
コールが三回も鳴らないうちに相手は電話に出る。
「…はい」
「長谷川?今大丈夫?ちょっと頼みがあるんだけど今から逢えないかな?」
「いいよ…え~っとまだ学校にいるんだけど、どこで逢う?」
「じゃ駅前のカフェで!」
「了解…今やってる用事終わったらすぐ行く」
「ありがとう長谷川」
そう小さくつぶやくと私はまだ使ってないノートを片手に急いで部屋を後にした。
カチカチカチカチカチカチ…
廊下に出ると微かに聞こえるキーボードをたたく音。
「…お姉ちゃんは弟のためならなんだってやるよ」
その言葉を誓いのように言うと、勢いよく玄関を飛び出していった。


チリーン。
軽い鈴の音が私の耳を刺激する。
待ち合わせしていると言うと奥の席へと案内された。
気を利かせて、奥のほうにしてくれたのか人は少ない。
私はアイスコーヒーを頼んだ。
ミルクとガムシロップもお願いした。
5分もしないうちに、また鈴の音が鳴る。
学校の制服のままの長谷川は、黒い髪を揺らしながら私を探す。
「いきなりごめんね、長谷川」
「気にしないでいいよ静、めずらしく静からの誘いでうれしいよ」
長谷川は店員さんに、ホットコーヒーを頼むと私に向かって歩き出す。
「それでいきなりどうしたの?まぁ大体予想はついてるけど…弟さんのことでしょ?」
「うん…もう私待つのをやめるわ」
「いいの?今までなるべく刺激しないで、弟さん自ら立ち直させるって方針だったんでしょ?」
「最近ちょっと様子がおかしくてね、ただ引きこもってるだけならいいんだけど」
そこで長谷川が頼んだコーヒーが運ばれてくる。
長谷川はそれをブラックで一口飲むと、すこしだけ悲しいような嬉しいような顔をして私を見つめる。
「…変化っていうのは本当に突然だね」
「…。それでさっそくなんだけど長谷川にやってもらいたいことがあるの」
「…なんなりと」





そして次の日の同じ時刻。
「よし、今なら弟しかいないから大丈夫」
「お邪魔しま~す」
長谷川は誰にも聞こえないような声でそう言うと靴を脱いで私の部屋へと向かう。
階段をのぼるとき、なるべく足音を立てないようにのぼる。
階段をのぼって一番最初の部屋のドアをあけて入る。
「本当にいいの?弟のパソコンをハックするなんて」
「もちろん…それで作戦は昨日言った通りなんだけど」
作戦はこう。部屋にこもっている弟が部屋を離れる(トイレ)のときに、すばやく部屋に入り弟のパソコンをハックするという、なんともシンプルな作戦とも言えないようなものである。
「作戦ねぇ…」
「な、何よぉ~」
「いや別に…」
長谷川はじろりと静をに睨むように見た。
「そ…それよりもハック大丈夫なの?弟のトイレを私が足止めするっていっても、そんなには時間稼ぎできないよ?」
「そこは安心して。これをインストールするだけだから」
そう言って長谷川は重たそうなリュックの中から一枚のディスクを取り出す。
「私機械はまったくダメだから、小学生でもわかるように説明してくれない?インストールってそもそも何?」
両手をひらひらさせながら静は聞いた。
長谷川はうぅとうなだれて、一息つくと、
「つまりこれを弟さんのパソコンに入れることで、弟さんのやってることを弟さんにばれいで、遠い場所からでも監視できる…こういえば分かる?」
「う~ん…とりあえずオッケー」
「それはなにより。それよりいつ仕掛けるの?」
「弟はみんなが寝始めると行くから、後五時間くらいかな?」
「…こんな時間でなくともよかったんじゃないか?」
長谷川は腕時計を見る。
時刻は十九時を少し回ったところである。
「だってしょうがないじゃない。親が帰ってきてからだといろいろ面倒だし、弟に感づかれたら終わりよ?」
「それはそうだけど…」
「なら大人しく私の部屋で待機してなさい…今何か飲み物持ってくるね」
そういって静は部屋をでて階段を降りていく。
「一応僕も男なんだけどなぁ…」
幼馴染という関係は、世間ではいいなとよく言われるが、実際そんなにいいものではない。
学校では羨ましいとは言われるが正直そういう奴らのほうが羨ましい。
片思いとはつらいな。
部屋を見回す。あまり飾り気はないが、清潔が漂い性格がよく出ている、ロードバイクのヘルメットなどもきれいに置いてある。あの人の匂いがふわりと漂う。少しドキっと胸が鳴る。
弟が引きこもるまでは何回か入る機会はあったが、一年ぶりだ。
立ち上がりベッドの脇の写真立てを手に取る。
それは、弟が中学生で僕たちが高校一年生のときの写真だった。
たしかこれは静の誕生日会をしたんだっけな。
そこに写っている静と弟の和は満面の笑みを浮かべていた。
そこには僕も写っていた。
今よりは幼い感じではあるがたいした変化はない。
「…。」
僕は写真立てを静かに元あった場所に戻した。
そしてふとベッドに目がいく。
「…ちょっとだけなら」
触れるか触れないかの距離まで顔を近づける。
そのとき階段をのぼる足音を聞いてハッとした。
「おまたせ、麦茶だけどいいよね?…どうかした?」
「べ、別にどうもしないよ!」
僕は内心ドキドキで平然を装う。
「?」
静は少し考えたがすぐやめて、おぼんごと下に置き、ベッドの上に腰を下ろした。
「ねぇ、長谷川」
「ん?」
僕は麦茶を飲みながら返事をした。
「私はいいお姉ちゃんなのかな」
「わからないよ…だって僕は一人っ子で兄弟いないし」
「そっか…」
そういうと静はそのままベッドに倒れた。
「でも…静は静で、和のお姉さんは静だけだよ」
「…。」
「世界は変わっていくものばかりだけど、兄弟っていうのは、いつまでも永遠に変わらないよ」
「…。」
「それよりも弟さんが今何をしてるのか、今日はなんか一乱ありそうだよ」

それから静は親が帰ってくるまで、ピクリとも動かないで眠りに落ちた。



「そっちはどうだった?」
「うん…親ももう寝て、後は和が部屋をでるだけ」
「そっか。こっちは、もう準備できてるよ」
そういって長谷川はディスクをちらりと私に見せる。
「そっちは任せたわよ、信じてるから」
「そんなに期待されるとさすがにプレッシャー感じるな…最後にもう一度作戦を確認するよ? ターゲットが部屋を出た瞬間、静が接触。注意がそっちにいってるうちに僕が部屋に侵入。うまくいけば二分かからないで作業は終了。作業が終わり次第、僕は静の部屋に帰還。これでいいね?なるべく長く足止めしてね?」
「そこはなんとかする。もしもだけど…この作戦が失敗した場合は?」
ゴクリと唾液を飲む。
「…最悪泥棒とか叫んでくれ。僕は全力で逃げる。できればこれはやってほしくない」
「捕まってインタビュー受けたら、あの子はいつかやると思ってましたって言うから安心して♪」
「…どうぞご自由に」
と僕は面倒くさそうに言った。


それから六分後、作戦は始まった。
「出てきたわ…」
自分の部屋の入り口から耳をすませて静は言った。
「なるべく長くだよ?近づいて危なくなったら電話でコールして」
「了解。そっちこそ作業が終わったらコールしてよね?」
お互い確認をとると、静はそっとドアを開ける。
「…和!今日もパソコン?…」
静が接触を開始した。
階段を下り終わる足音を聞いてから長谷川は静の部屋を後にした。
和の部屋に入ると、ほこりくさい匂いがした。
「うぅ…ちょっとは掃除してほしいなぁ」
そう言いながらパソコンに向かう。
パソコンの前に着く。
(カバーがかかってるけどなぜ?)
デスクトップタイプのパソコンであるが、みたところ別に変わったところはないけど。
「…。」
(パソコンの電源を落としてある?なぜ?普通すぐ使うならスリープかそのままではないか?まだ温かいからさっきまでは使ってたんだよね?)
「…今は考えてもしょうがないか」
そう言って電源をつける。
ウォォォンと勢いよくファンが回る音がした。
その間に持ってきたバッグの中からパソコンを取り出し、コードを繋ぐ。
そこでカバーの下にあるカメラに気がついた。
これはネットで会話などをする際に使うカメラである。どこにでも売っているようなものである。
「…。」




「ねぇねぇ、パソコンでいつも何をしてるの?お姉ちゃんにも教えてほしいなぁ~。」
静はひたすら話しかけたが、和はそれを完全に無視。
今は台所まで来て、何か食べ物でも探しているのだろうか。
「お腹減ったの?お姉ちゃんがなんか作ってあげようか?こう見えても結構お姉ちゃん料理うまいんだよ!」
和はだまってグラスに水を汲む。
パリーン!
家中にガラスが割れる音が響く。
「…。」
和は割れたグラスをじっと見つめている。
「あ…あぁ~割っちゃったね!ガラス踏まないようにね!今お姉ちゃんが片付けてあげる!」
そう言って私はガムテープをとり片付けをする。
「…。」
和は今度、おもむろに左手を握り締めた。
「どうしたの和?割ったことがばれるのがいや?ならお姉ちゃんがいっしょに謝ってあげるから大丈夫だよ!…和?」
和の左手から血が流れている。
「え?やっぱり怪我してたの?早く手当てしないと…」
よく見るとそれはガラスの怪我ではなく、彼の爪が力いっぱい突き刺さっている。
「和!」
静は急いで彼の手をとってやめさせた。
「なんでこんな…」
静の手にも、彼の血が流れていく。
しかし、これだけの傷なのに彼はまったく反応がなく、平然と立っている。
「和…痛くないの?」
そう聞くが反応はない。
「…もうそろそろ…」
「え?」
(和が喋った?)
「もうそろそろ、僕は」
そう独り言のようにつぶやくと彼は階段のほうに歩き出す。
(あ、やばいまだ長谷川が!)



…カチカチ…
パソコンが起動すると、さっそくログインのためのパスワードを入力しないと見れないようになっていた。
そこで長谷川が持ってきたパソコンが、何か解析を始める。
「これくらいのパスなら僕でもいけるはず…」
ピピという音がすると和のパソコンの画面が変わる。
「よし!後はディスクを入れて…ん?」
下からガラスが割れる音がした。
「静…」




(やばい!とりあえず長谷川に連絡しないと!)
彼女はポケットの中に忍ばせていた携帯から、こっそりショートダイヤルでコールする。
2コールした辺りで、電話を切る。
(やばい…こうなれば)
「か、和!怪我してるの消毒しないとバイキン入っちゃうよ!お姉ちゃんが手当てしてあげるからこっちおいで!」
と彼の手を思いっきり引っ張る。
「あ、あれ?」
彼はまるで動く石像のように、びくともしないで歩きだす。
(こんなに力強いの和って? でもこれそんな力強いとかそういうレベルではない気が…)
逆に彼女が引きずられていく。
彼はもう階段を上り始めてしまった。
(これは、やばいかな…)
彼の後を追うように、急いで階段を上る。
階段をのぼり終えると、そこは静寂に包まれている。
(間に合ったかな?)
和はまっすぐ自分の部屋のドアを開ける。
そこで和は固まった。
(ま、まさかまだ中に長谷川がいたのかな?!)
彼女は叫ぶ準備をしながら、和の部屋を覗く。
「…?」
そこには真っ暗な暗闇しかない。
(よかった、間に合ったのか…和は何を見てるんだろう?)
「…。」
彼は3秒ほど暗闇を見つめると部屋に入っていく。
そして何事もなかったように無言でドアを閉めた。


「なんだったんだろう?それよりも…」
彼女は急いで自分の部屋に戻ると、そこには長谷川が座って何やらパッとしない顔でいた。
「うまくいった?」
「あぁ、うまくはいったんだが。ちょっと気がかりがな…」
「気がかり?」
「あぁ。とりあえずここは場所が悪い、場所を変えよう」
「いいけどどこに?」
もう夜中だし、外をうろつくと補導される可能性もある。場所を変えるならそれほど場所は選べないけど…。
「それじゃ行くぞ」
「え?どこに行くの?」
彼はリュックを背負うとさらっと言った。
「僕の部屋に」






長谷川とはそれほど家は離れていない、歩いて5分ほどの距離である。
風はもう冬の寒い風ではなく、温かい春の風であった。
空を見上げれば透き通った夜空が見える。今日はなんだか、いつもより少し輝いて見える。
彼は無言で私の前を歩き続ける。さっき気がかりがあると言っていたから、多分そのこと考えているのかな?
そんなことを考えているうちに長谷川と書かれた表札が目の前に現れた。
彼は玄関でなくベランダのほうへと向かう。
「玄関からだと親起きちゃうからね」
そういって彼はベランダの手すりを乗り越え部屋に入る。鍵はどうやらあらかじめ開けておいたみたいだ。最初からこの予定なら言ってくれれば…。
「…。」
私は手すりに掴まり、辺りを一回見回した。
別に誰にも見られてないとは思うが、さすがに…。
「これを知っていればスカートで来なかったのにぃ…よっと」
靴をその場で脱ぐと、私は部屋に入る。
机の上だけ電気がついていた。部屋に入って一番最初に目がいったのはパソコンだ。
「へぇ、結構きれいに片付けているんじゃない。それにしても立派なパソコンだな…」
私は物珍しそうにパソコンを見る。
「あんまりそれには触らないでくれよ?静は壊しかねん」
「そ、そんなことないもん!」
はいはい、といいながら長谷川はリュックを机の上に置く。
長谷川はパソコンのスイッチを入れる。
「じゃさっそく見てみますか」
長谷川はアイコンをマウスでクリックすると何かを起動し始めた。
すると何かウィンドウが開かれる。
そこには何か黒い画面が開かれる。
「これ何?真っ黒にしか見えないんだけど」
「これは弟くんのパソコンの画面をそのまま映しているんだよ、真っ黒だからパソコン
のディスプレイはつけていないみたい…うーん」
「もう寝たのかな?」
すると長谷川は何やらまた違うツールを起動する。
すると何かキーンと耳障りな音がする。
「これ何?なんかすごい不愉快な音がするんだけど」
すると長谷川は音量を一番下まで下げて、こっちを向く。
「これは弟さんのスピーカーから流れている音だよ」
「え?これが…」
毎日なんか聞こえる音の正体はこれか。
「それにしても、この音…頭がおかしくなりそう」