(1) 事案の概要
買主Xらは、平成6年10月に売主業者Yから新築マンションを買受け、平成7年6月に引渡しを受けた。Xは重要事項説明書及び売買契約書に「自動火災報知設備有り」と記載されており当然設置されているものと認識していたが、平成16年に防火管理者講習受講後、当該マンションの消防設備を確認したところ、自動火災報知設備が設置されてないことが判明した。
事実関係を調査したところ、Yは平成7年4月にA市消防署長に対して、当該設備を設置しないことについて消防法設備等特例適用の申請を提出して許可を受けていることが確認された。X′(管理組合)は、Yに対して、当該設備が設置されていない理由及び特例適用申請を出していたことをXらに知らせなかった理由を求める文書を送るなどしたが、満足な回答が得られず、Yの対応が不誠実であったことから、
(ア)売買契約書記載のとおり自動火災報知設備の設置、
(イ)記載が間違っていた事実を看過した杜撰な管理の謝罪、
(ウ)契約履行の催告に対する不誠実な態度の謝罪と慰謝料の支払等を要求した。
これに対してYは、記載ミスに気付かず引渡しを行ったことに対するお詫びとして、124万円(全27世帯に煙感知式火災報知器を5個ずつ10年間設置する費用)を負担したいと申し出たが、X′は納得出来ないと主張したため紛争となった。
(2) 事案の経過
委員3名により4回の調整を行った。調整の過程でX′は、Yが企業である以上ミスは認められず、その後の対応にも問題があると主張し、今回の請求金額494万余円は元々の請求額850万円から半額程度まで譲歩しているものであることを強調した。
これに対してYは、重要事項説明上の記入ミスがあったこと及び消防法上の特例許可を取ったことを伝えなかったことの非は認めたが、10年も経ってからの請求であり、情状による負担軽減を要求した。
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