(1) 事案の概要
Xは、平成4年、Yと、一括借上げ賃料保証の予約を内容とする業務委託協定を締結し、当該協定にそって、Xがマンションを建築して、平成5年、Yを賃借人とすると次の内容の賃貸借契約を締結した。(ア)Yは第三者に転貸する、(イ)平成5年から20年間、(ウ)賃料月額927万円、(エ)2年毎賃料5%増額。なお、経済状況の著しい変動が生じた場合には、上記以上の増額をすることができると約定された。平成7年及び平成9年には、自動増額特約に基づき、各5%増額された。
Yは、平成11年と平成13年に、賃料減額の意思表示を行い、その後、借地借家法32条1項の規定に基づき、平成11年及び平成13年以降の減額後の賃料額の確認と、過払賃料等の返還を求め提訴した。これに対し、Xも、増額後の賃料額の確認を求め反訴した。
原審は、本件は共同事業契約の性質を有するものであって、借地借家法は全面的には適用されず、本件不減額の特約は本件契約の本質的部分であって減額請求できないとした。しかし、経済事情が著しく変動したので、賃料自動増額特約は適用されないとしたため、Yはこれを不服として上告した。
(2) 判決の要旨
(ア)本件契約は、建物の賃貸借契約であることが明らかであるから、借地借家法32条の規定が適用されるべきものである。
なお、本件業務委託協定及びこれに基づき締結された本件契約中の賃料自動増額特約に係る約定の存在は、契約締結当初の賃料額を決定する際の重要な要素となった事情と解されるから、賃料減額請求の当否及び相当賃料額の判断において十分に考慮されるべきである。
(イ)本件契約への借地借家法32条1項の規定の運用を極めて制限的に解し、賃料減額請求権の行使を認めることはできないとした原審の判断には、判決の結論に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるので、Yの賃料減額請求の当否等について更に審理を尽くさせるため、上記部分につき、本件を原審に差戻すこととする。
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