サブリース問題 借地借家法32条、「賃料増減額請求権」は強行法規なのか(7) |  NPO法人日本住宅性能検査協会 建築・不動産ADR総合研究所(AAI)

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サブリース問題 借地借家法32条、

「賃料増減額請求権」は強行法規なのか(7)

 

 

 例えば、定期借家権で契約をする。今の時代ですから増額するというのはあまり考えにくいので、例えば、5年間で定期借家契約をした。賃料は5年間一切増減変更をしないものとし、借地借家法32条は適用しないと契約書に書くと、実際にこれは減額できないというかたちになります。

 

 ですから、少し公租公課が下がったとか、地価が下がったといっても増減額請求をしても特約があるからという理由で排斥をされることもあります。鑑定した結果どうだこうだではなくて、特約に従って排斥できることになります。賃料増減額請求権が定期借家権に排除されているというのが、いわゆる不動産の証券化に定期借家権が有用であると言われている理由です。

 

 ビルを証券化するとか、そのために外資系がビルを購入するということがよく行われています。彼らがやるのは、昔のように、例えば不動産の価格を「この土地が坪当たりいくら」というかたちで評価をやるわけではありません。今はいわゆる積算方式で不動産価格を出していません。ビルの売却ですが、ほとんどがレントロールを出させて賃料を見る。この賃料でどれぐらいの収益があるかという収益還元でビル価格を決めて売買交渉をやっているわけです。

 

 賃料がいくらかということと同時に最近外資系のほうも日本の借地借家法の勉強がだいぶ進んできていまして、この賃料は外資系がビルを買った場合に、賃料の減額請求を将来起すのか起さないのかということを必ず聞かれます。

 

 テクニカルデューデリを頼まれたときに、本来的に言うとレントロールを出してやっていればいいはずなのですが、「減額請求をするのかしないのか答えてくれ」というかたちで私どもに依頼がきます。これがくるものですから、前提としてこれをやらざるを得ないということがあります。

 

 今、外資系なんかが気にしているのは、日本のオーナーがこれを持ち続けている間はこの賃料を維持し続けるだろうけれども、オーナーが変わったらその段階で減額請求が来るのではないか。減額請求をやるのかやらないのか、減額請求をされた場合、もし訴訟になったら減額幅はどれぐらいになるのかを見積もってくれという依頼がきます。これによって実際上は賃料が決まる。

 

 もう少し言うと、実は、賃料は何で決まっているかというと、テナントの質で決まっていると思います。私もビルの売却をやってみて初めて分かったのですが、われわれは一部上場企業ですからこれは大丈夫だと思って喜んで貸しているのですが、外資系から見ていると一部上場企業でも評価が随分違うのが分かりました。

 

 私なんかが一部上場であり優良会社だと思っていたら、「倒産の危険が何パーセントあるので、利回りの関係の中で価格をこれだけ引かせてくれ」と言われてびっくりしたことがあります。いまやそういう時代なのだろうと思いますが、賃料がいくらか、減額請求がくるか、賃料が滞りなく入るかという辺りがビルを査定していくときに、今大きな基準になっています。

 

 悪いほうの例はあまりお名前も申し上げられませんが、逆にこのテナントは評価がすごく高いのだと思って驚いたのは、いいほうだから言ってもいいと思うのですが、NTTでした。NTTが入っていると無条件にビルが高いというのは「なるほど」と思ったのですが、要は賃料に関するリスクでどれぐらいの収益が上がるか、収益の確実性でビルを決めていくわけです。

 

 そうなってきた場合に、賃料の減額請求が通るかどうかというのは一つの問題になってくるわけです。そうなってくると、定期借家権でこの賃料は増減変更しないと定期借家契約書に入っていると、増減変更請求権が働かないものですから、あとはテナントの信用で倒産リスクさえなければ収益が完全に確定するかたちになります。例えば、ネットで何パーセントにするかということでビルの売却代金を決めるという実務になってくるわけです。これはさておいて、そういうかたちで賃料増減額請求が働いているということです。

 

続く:NO.1~NO.7)

<ビル経営管理士講演から>

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