マンション漏水問題について -事故発生箇所は専有部分か共用部分か-   |  NPO法人日本住宅性能検査協会 建築・不動産ADR総合研究所(AAI)

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 マンション漏水問題について

先日の台風によりマンション住戸内で漏水事故が多数発生しました。一般的にマンションで漏水事故が発生し階下に被害があった時、その事故の責任はだれにあるかを決めるには、

 事故原因は何か。
 事故発生箇所は専有部分か共用部分か。               等によって判断することになります。

事故発生原因が上階の居住者による使用上の不注意であれば、責任の所在は明らかです。洗濯機に取り付けていたホースが緩み、そこから床面に溢れて下階に流れたなどの事例が過去にあります。

 雨天の日が続いたときに漏水した場合は、外壁や屋上の防水性能、その他通気口からの侵水等を疑うことなりますが、晴天日が続いた場合に漏水が発生した場合は、上階からの使用上の不注意か、設備配管からの漏水を疑うことになります。

 台風が来た当日から2・3日の間に漏水が初めて発生したのであれば、外壁・屋上・配管・通気口などを点検する必要があります。この外壁・屋上は一般的に共用部分と言われている箇所にあたりますので、管理組合に必要な調査を依頼し、補修工事と損害の賠償を求めることになります。

このような漏水事故等に対する備えとして、損害保険に加入しておくと非常に安心です。共用部分の事故には、漏水担保特約付きの施設賠償責任保険が、専有部分には個人賠償責任保険が適当でしょう。多くのマンション管理組合では、このような保険に加入しておりますので一度確かめておくといいでしょう。個人賠償保険も火災保険や傷害保険などに付帯特約としてつけられているケースが多いです。

なお、建物・設備の構造に原因がある場合、瑕疵担保責任期間(通常は引き渡し後2年)やアフターサービス期間を過ぎても、排水管のこう配不足、排水管の容量(径)不足、接続不良等が原因の場合は、施工業者または分譲業者に対して不法行為または債務不履行として損害賠償を請求することも可能です。

 しかし原因が経年による自然損耗等の場合で、既にアフターサービス期間が過ぎてしまっている時は、発生箇所が専有部分か共用部分かによって、責任者が決定されることになります。

マンションの専有部分と共用部分の区分は、以下のとおりです。

共用部分とは、マンションなどの集合住宅において、区分所有者である居住者全員で共有している部分のことです。

共用部分と呼ばれる場所は、いわゆる専有部分に属さないもの、つまり、玄関ホール、廊下、階段、エレベーター機械室、屋上、給排水設備、消防設備、電気配線、エレベーターなど。

ふたつ目は、外壁などの構造上 共用に供される部分。つまり、独立区画の天井、壁、床などの部分。バルコニーは、専有部分と誤解する人が多いのですが、法律的には共用部分。共用部分の中の「専 用」として、特定の人に、利用する権利だけ、つまり専用使用権があるだけです。

だからリフォームで手をくわえると、共有財産権を侵すことになる。以上のふたつ が、法定共用部分と呼ばれる部分。

そうして三つ目が、管理規約により、共用部分とすることができる部分。つまり、集会室、管理人室、管理事務室、倉庫などのことです。

専有部分とは、集合住宅において、区分所有者本人にだけ所有権がある住戸部分のこと。この部分については、間取りを変更したり、賃貸や売却・譲渡したりすることも区分所有者の自由です。

但し、フローリングについては騒音などの問題があり規約により制約を加えていることが多いのでご注意願います。
 
なお、給排水管枝管(部屋内のもの)については、ここ20年前から最近の竣工したマンションでは、自室の床上コンクリートに設置されたものが多く、このタイプのものは、専有部分と解されておりますが、約30年前の公団型の団地にみられる床下コンクリートスラブと階下天井板との間の空間に設置された階上者専用の排水管の枝管は、「専有部分に属しない建物の付属物」にあたり、区分所有者全員の共用部分にあたるとし、同排水管からの漏水について、階上者の損害賠償責任を否定した最高裁の判決が平成12年3月に出されています。(森正行)