質問
契約時に合鍵一本渡されましたが、合鍵作製は拒否されてしまいました。
合鍵作成は許可がいるものなのでしょうか?
回答
まず、部屋の鍵の性質から考えてみましょう。
部屋の鍵というのは、入居者が安全に生活できるように、
家主が、民法上の「使用収益させる義務」の一環として用意したものです。
借主には、部屋の鍵を、「善良なる管理者の注意義務」をもって使用・保管する義務があります。
そして、「善良なる管理者の注意義務」の観点から考えれば、
借主がむやみに合鍵を作製することは許されないと言うべきでしょう。
つまり、借主は、カギについては、使用・保管することが許されているだけで、
家主に無断でカギを交換したり、複製を作ることは許されないのです。
家主としては、家主の知らないところで、合鍵が作製されていれば、
入居者以外が合鍵を入手する可能性があり、入居者に対する安全配慮義務も
果たせなくなる可能性があります。
別の角度からこの問題を考えてみましょう。
部屋の鍵は、室内で利用するのではなく、室外で利用するわけですが、
室外はすべて共用部分ですので、借主には、単に、利用する権利しか与えられていません。
ちなみに、これは、分譲マンションであっても同じことで、たとえば、
分譲マンションの区分所有者であっても、玄関ドアの外側の色を勝手に変更することは
許されないのです。
つまり、部屋の鍵は、共有部分に属するものと言えますので、
借主が勝手に複製を作ることは許されないのです。
ここまでは一般論です。
しかし、万一、ご相談者がお住まいの物件がファミリータイプの物件であるのであれば、
上記の原則を修正する権利が出てくる可能性が大きいでしょう。
というのは、ファミリータイプの物件の場合、その物件に住む家族のそれぞれが合鍵を持たないと、
実生活上の支障が生じる恐れが大きく、一つの鍵しか持てないとすれば、
家主の「使用収益させる義務」を全うすることができないからです。
ファミリータイプの物件であるにもかかわらず、家主が鍵の複製を拒否する場合には、
借主は、家主に事情説明し、合鍵作成の覚書などで、「やむを得ず鍵の複製を作るが、
退去時にはすべての複製鍵を家主に提供する」ことを約束してから、
合鍵作成を行ったほうがよいでしょう。
したがって、単身者用の物件とファミリー用の物件では、合鍵作成についての考え方は
まったく異なるということになります。
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