退去立会いは賃貸人の義務です。 |  NPO法人日本住宅性能検査協会 建築・不動産ADR総合研究所(AAI)

 NPO法人日本住宅性能検査協会 建築・不動産ADR総合研究所(AAI)

内閣府認証
NPO法人日本住宅性能検査協会
「建築・不動産ADR総合研究所」(AAI)は建築・不動産を巡る紛争の予防および解決を目的とする第三者機関。有識者による7つの専門研究会、弁護士や一級建築士等による第三者委員会で構成。公正・公平な評価及び提言を行ないます

退去時の室内点検時に、立会いを行うのは、家主(あるいは家主の代理人)と借主との間で、借主の責任範囲を確定させるためです。



つまり、家主が、「この部分は、入居当時にはなかった傷なので、借主であるあなたがつけた傷ですね?」と借主に確認し、借主が「確かにそうです」と承諾してもらう必要があるということです。




又、よくあるのですが、退去時の室内点検の際、入居者の過失もないのに、修繕費用の負担を強い調子で求められ、確認の書類に署名捺印する入居者がいます。



日本は契約社会です。署名捺印するというのは、契約したということになります。



契約というものは、いったん契約すると、一方が勝手に取り消しすることはできないというのが原則です。取り消しすることができるのは、未成年が重要な契約を親権者に内緒で行った場合や、 脅迫を受けて契約した場合、酔っ払ってまともな状況ではなかったような場合、

クーリングオフ制度が認められている契約で所定の期間内の場合などに限られます。


退去時の修繕負担についての確認書類などへの署名捺印も、ひとつの契約であり、上記の問題がなければ、有効となってしまうのです。


従って、「強い調子で言われたので、一応、確認の書類に署名捺印した」というのが、

「脅迫」と認定されない程度のレベルでの「強い調子」である場合、契約をした以上、

原則としては、その契約に従わざるを得なくなります。


しかし、2001年4月以降、消費者契約法により、 「消費者の利益を一方的に害する条項は無効である」という規定が生まれていますので、 確認書の内容が、消費者契約法違反であると認定されれば、消費者契約法違反となり無効であると主張することができます。

従って、退去時に、家主の立会いを求めるのは、当然の権利ですし、家主にとっては義務なのです。いずれにしても、借主としては、家主に対して、「退去時に必ず立会い確認をしてほしい」という連絡をしておく必要があります。 「どうせ無理だろう」ということで、家主に連絡しないというのではなく、必ず、連絡しておくべきです。というのは、あとあと、敷金返還が正当に行われず、少額訴訟に発展したような場合、 「借主が立会い確認を求めたにもかかわらず家主が拒否した」という事実が残っていれば、 家主にとっては不利な、借主にとっては有利な証拠が残ることになり、借主の心証がよくなるからです。
家主が、自分の費用ですべて修繕するつもりであれば、わざわざ立会い確認をして、 借主の責任を確定させる必要はありませんが、借主(他人)の費用で修繕させようとするなら、当然のことながら、借主の責任であるという証明(挙証責任)を行わなければならないのです。