【提言】
次世代の住環境を守る「建物検査士」の社会的役割と必要性 —— NPO法人日本住宅性能検査協会、20年の真実と知見を礎として ——
日本の住宅市場は今、かつてない転換期を迎えています。新築神話の時代から、既存の建物を適切に維持管理し、長く大切に使い続ける「ストック型社会」への移行が国家的な急務とされる中、建物の確かな品質と安全性を担保する社会的仕組みが不可欠となっています。本提言は、国民の住生活の安定と向上を目的として当法人が創設した「建物検査士」の社会的役割と、その絶対的な必要性について論じるものです。
当法人、NPO法人日本住宅性能検査協会は、過去20年間にわたり、完全に独立した第三者の厳しい眼で数多くの建物検査と向き合い続けてまいりました。この20年という歳月は、決して平坦な道のりではありませんでした。数々の痛ましい欠陥住宅問題、法令の隙間を突くような不適切な施工、賃貸住宅や分譲マンションにおける深刻な契約トラブル、そしてそれに翻弄される消費者の悲痛な声。私たちは常にそうした現場の最前線に立ち、技術的・法的な両面から問題解決と被害救済に奔走してまいりました。
当法人が有する膨大な数の検査実績は、単なるデータの蓄積ではありません。それは住まい手の涙と不安、そして「安全な住まい」への切実な願いの結晶です。法令改正の変遷や、時代の変化とともに複雑化する建築トラブルの歴史を肌で知るこの「20年の重み」。現場の真実と紛争の現実を知り尽くしているからこそ、我々は事後救済の限界を痛感し、新たな防波堤となる予防的専門家、「建物検査士」の創設を決断いたしました。
「建物検査士」の最大の社会的役割は、専門知識を持たない一般消費者と、情報優位に立つ建築業者や不動産業者との間に横たわる「情報の非対称性」を解消することにあります。 住まいは人生最大の資産であるにもかかわらず、その深部の品質を消費者が自ら見極めることは極めて困難です。建物検査士は、利害関係のない客観的かつ科学的な視点から、建物の劣化状況、隠れた瑕疵(欠陥)の有無、将来的に必要となる改修箇所を的確に診断します。これにより、不動産取引の透明性が飛躍的に高まり、購入後や入居後に発生する予期せぬトラブルや莫大な修繕費用の発生を未然に防ぐ「予防法務・予防建築」の要としての機能を果たします。
現在、日本全国で空き家の増加が深刻な社会問題となっており、既存建物の有効活用や再生(リノベーション)が強く推し進められています。しかし、「見えない欠陥」に対する消費者の根強い不安や、複雑化する不動産契約の裏に潜むリスクへの懸念が、中古住宅市場の健全な流通を阻害する大きな障壁となっています。また、頻発する大規模自然災害から命と財産を守り、さらには次世代に向けた環境性能の向上やエネルギー効率の最適化を見据えるためには、既存建物の現状を正確に把握し、適切な維持管理を行うことが不可欠です。 このような時代背景において、高度な建築知識、関連法規への深い理解、そして何より高い「職業倫理観」を併せ持つ建物検査士の存在は、もはや業界のオプションではなく、社会的に必須のインフラストラクチャーです。
NPO法人日本住宅性能検査協会が世に送り出す「建物検査士」は、決して机上の空論から生まれた資格ではありません。20年にわたる泥臭い現場での検査実績、幾多の紛争解決から得た教訓、そして「消費者の安心と権利を守り抜く」という揺るぎない信念という、圧倒的な重みの上に構築された超実践的な専門資格です。
国民誰もが心から安心して住宅を取引し、安全に住み続けられる社会の実現。そして、日本の良質な建築ストックを社会的資産として次世代へと継承していくために。我々は、建物検査士がこれからの日本の不動産・建築業界における確固たる「スタンダード」として広く認知され、活用されることをここに強く提言いたします。





