話の始まりは小学生の頃にさか登ります。
いつもなぜか同じクラスになってた男の子が2人居た。
性格はまるで正反対の二人、毎回同じクラスになるっていうのに特別仲良くなる訳でもなく、
直はいわゆるガキ大将、
そして健の方は毎回学級委員長になる程の人気者。
休み時間になると直は校舎の裏や木の陰で同級生と殴り合いをし、健は教室で気の合う仲間と一緒に過ごしていた。
今回はそのガキ大将の直の話。
直は学年一の悪党!喧嘩も強いがホント
「あんた、デビルじゃないの?」
と思うくらいのいじめっ子。
男女関係なくいじめて面白がって、時々彼のお母さんは学校に呼び出されてたのを私は知っている。
ー何故かと言うと、こうも何回も同じクラスになると仲良くなるのはPTAで毎回会う母親同士。
直のお母さんは自営業をしていてうちの母はいつの間にか常連さんになっていたのだ。
うちの母は私にそっと直が問題を起こしお母さんが学校に呼ばれて悩ませてることを教えてくれた。そして直が喧嘩をしてる現場を見たら止めてあげて欲しいと頼んだ。
正直私は、
ーとんでもない!あんなデビルを止めようだなんて思うのが無理。
と思っていた。 冷血で図体のでかいあの直を止められるのは先生くらいだ。
実は私も一度からかわれたことがあったのだ。
特別何もしてもいないのに、直は最悪にも隣の席になったことが一度だけあった。
「デビルの隣」を怖がるクラスメイトがその時はよくわからなかったけれど、後でわかった。
私はあまり本を読まない人間だったのだが、ふとしたことから手にした分厚い物語を図書館から借りて来たばかりだった。
その本をポンと机の上につい置いてしまった。
直はその私の本を手に取るとパラパラとめくり読んでる。
ーあ、直も本読むんだ。
と感心するのもつかの間、いきなり大声で本の一部を朗読し始めた。
「愛は心の叫びである、私は人を愛しているxxx」
ー何でそのフレーズなんかなぁ?
直は笑われるのを予想して読んでいた。
そして私にこう言った。
「お前がどんな本を読んでるのか知りたかったけど、お前愛が何なのかわかんのかよ?バーカ!」
せっかく人が本を読もうと借りてみただけなのに・・・
ーあいつはやっぱりデビルだ。
私はそう思った。
それ以来、席が変わるまでその本の事で笑われ続けた私。本を読んでるといきなり耳元で大声で叫ばれたり、机に落書きされ、消しゴムのカスも捨てられたりした。
イラっとしたけど、それでも私は席が変わるまで我慢し続けた。
あいつが筆箱を忘れたら鉛筆と消しゴムを貸してあげたし、その消しゴムを割られても文句も言わなかった。
そうしてやっと席が変わり平和になった。
その後直の隣に座ったのは私の幼馴染の勇樹だった。
するとある日、勇樹は私にそっと打ち明けた。
「さち?良い事教えてあげる。お前直に少しいじめられてたよな?けど、直が言ってたよ、
ーもしかしたら俺はさちの事好きかもって。-
思わず私は
ーゲっ!!-
「やだよ、そんな冗談」と私は顔をゆがませて言ったが、勇樹は真面目な顔して、
「これ本当なんだぜ、直が俺に言ってくれたんだ。で、お前はどうなの??」
と顔を覗く。
ー・・・。冗談じゃない。
でもそんなことを聞くと人に好とも言われたことがない私は直をつい目で追ってしまうようになった。直の私に対するいじめは席が変わったと同時にピタリと止んだのは確かだったから。
そして中学生にあがり、他の小学校からの子も同じクラスになった。直は隣のクラスで同じにはならなかった。
相変わらず直は制服違反、髪の毛違反、たばこを吸うし、先生にも不良先輩にもすぐに目をつけられた。
そして直に彼女が出来たと言うこともすぐに学年じゅうに広がり正直、少しどんな子が彼女か気になった。
少し驚いた。噂で聞いた彼女は超~ぶりぶり系の子だったから。
彼女が出来たから少しは喧嘩治まるかな?と思いきや、全然変わらなかったし、その逆だった。
ー私が心配する必要はない。彼女がいるんだし。
そう思い気にしないようにした。そしてそのまま2学年に上がり、直とはさらにクラスが遠くなった。噂では直は彼女と仲のよいカップルだと聞いて安心してた。
ある日、学校帰り、ある先輩に呼ばれ振り向いた。山先輩だった。その先輩はいかにも「不良です」と言ってるような制服を着てた。
ー何で私が呼び止められないといけないの??
とさっぱりわからなかったけど、山先輩はにっこりしながら
「今度の金曜にサッカーの試合があるんだけど、マネージャーが俺達いなくて、頼んでもいいかな?」
と言われびっくりした。
「何で私が??」
ととっさに失礼なことかな?と思たけどつい聞いてしまった。
すると先輩は
「弟がマネージャーさせるならさちがいいはずだ、と言ってたから」と。
ーへ?弟??
・・・私は少し考えた。先輩の弟が私を知ってる、一体誰??と考えながら先輩の胸元の名前を見ると「山岡」と言う苗字に目がいった。
「山岡?・・・山岡・・・直?!」
と聞くと先輩は又優しく笑って頷いてくれた。
ーえ~?!-
直の兄??? しかも何?! 直がそんなことをお兄さんに進めるなんて・・・
正直驚いた。
山先輩は金曜日まで考えておいてと言って去って行った。
ー直、あんた又何か意地悪をしようとしてる?!
と疑って仕方なかった。
翌日から山先輩は友人と校門前に立って私が返事をするのを待っててくれた。
ー直、一体どういうつもりだ?-
金曜の昼に山先輩は2年生に使いを出し、私を呼び出した。
返事は「できません」と断った。
だって直が又いたずらで言ったのならOKしたら尚更あいつの思うツボになる。それが嫌だった。
結局山先輩は残念がったけど男らしく理解してくれて行ってしまった。
その後は山先輩と廊下でアウト笑顔で手を振ってくれたりするようになった。周りの不良女子たちの目はもちろん、後輩にもにらまれるようになった私。
「あんたなんか、山先輩に相手にされてないよ、ばーか!」とか、「何?勘違い女」とか。
すれ違う度、色々と言われた。・・・けど無視。
直になら言われても少しくらいわかるけど、何で女子に文句を言われないといけないかなぁ・・・それに腹が少し立った。
そんな時、クラス会があり、市内の野球場の裏手の方で集まった。クラス会は6時から2時間の予定だったけど、どこから情報が漏れたのか父兄の巡回が回って来たのですぐに解散する羽目になった。
でもどんくさい私は逃げ遅れ、「逃げろ!」と言う同級生の不良グループの声に慌てて、こけてしまった。
するとその時直が目の前に自転車で現れ、「後ろに乗れ!」と言い、私は言われるまま急いで直の自転車の後ろに乗って逃げた。
自転車に乗ってる間、少しだけドキドキした。
いじめられたことがあるのに、何だ?このドキドキは・・・。
それに助けてもらった。直は腹の底からデビルだと思ってたのに、もしかしたら違うのかも・・・と思うと、少し偏見を持って直を見てた自分に恥ずかしくなった。
「ありがと、直」と言い自転車から降りると直は何も言わず、振り向きもせず去って行ってしまった。
その後のある日山先輩が家の近所に来ていたらしくばったりうちの兄に会い、家に連れて来てた。
先輩はいつものように笑顔。
ー何でこの2人は知り合いなんだ?後輩ではあるけれど、3つも違うはずなのに・・・な
そう思ってる私に笑顔でいる山先輩、兄は
「さち、お前の先輩だろ?知ってるんじゃないか?」
「そりゃぁ、知ってるよ。弟が同級生だし・・・」
山先輩は照れるようにして私に向かって、
「今度、デートしない?」
と。
ーえええ?!-
「さち~、やるなぁお前」とニタニタ顔の兄。
でもふと私は、
「何で私??」
と口に出して聞いていた。
「仲良くなりたいから」
とポツリ言う先輩。
ーあの、そういいますけど、私あなたの弟にいじめられたことあるんですが! と言いたかったけどやめた。
だって、先輩のその照れた顔を見るとあのデビルの直とグルになってからかってるようには思えなかったからだ。
少し考えてると、兄が
「さち、山はこー見えてもいいやつだぞ」 と言う。
ーそんなこと言われても・・・その場は、
「いつかわからないけど、うん。そのうちいつかできたらいいですね」
とだけ言って帰ってもらった。
ー信じられない。あの山先輩にデートに誘われた。 あのデビルの兄さんによ?!
数日後先輩から電話があり、改めてデートのに誘われた。
直がその翌日あたりからやけにニヤニヤ顔でいるのには気づいてた。
「何なのだ?あいつめ・・・」
と睨み返すがそれでも天狗にになったように反り返ったようにして鼻をツンとさせてる。もしかして山先輩からデートの事を聞いたのか?と急に恥ずかしくなった。
デートは先輩が迎えに来てくれてたけど、一緒には歩けるはずもなく、50m離れてのデートになった。
途中途中先輩は友人に会っては立ち話をし、結局思うような理想のデートなんて出来なかった。
翌日にはどこからかデートがばれたのか、山先輩のファンの後輩の子達からの嫌がらせが一層増した気がした。
ー山先輩は知ってるのだろうか?直ももち、知ってるんだろうなぁ。
そんなことを思いながら少し苦労した2学年。先輩はあっさり卒業して男子校へ。
ー私は一体何なのだろう?先輩とはデートしたけれど、たった一度だけ。彼女でもない、ファンと言う訳でもない。先輩からの連絡はそれから一度もなかったし。
少し気になって直にお願いして手紙を渡してもらった。
きっと直のことだから必ず読むだろうな、と思いながらも、ちゃんと渡してくれることを祈って渡した。
直とは3学年時に同じクラスになってしまった。
それでも先輩から一度電話があり、学校の事を話ただけ。
後輩から、
「山先輩には彼女がいた」と言うことを聞き、私は結局ただ暇つぶしに相手をされてただけなんだ、と知った。
きっと、直はすべて知ってたんだ、それでニヤニヤしてたんだ、と。
あのデビルの兄だから仕方ないと思って怒ることはなかった。
ガキ大将にしてやられた気分だった。
けど、時々見せてくれた優しさには感謝してる。