サンタ・クララの銀行本部前は(午後)数台のカメラが設置されていたものの、落ち着いていました。外見からだけではわからないコロナの後遺症のように、経済もしばらくは倦怠感が離れず、行きすぎた部分が痛みを伴って整理されていくということでしょう。Air Turblenceは続きます。

アメリカは感謝祭休暇です。

多くの人が激しい嵐をしばし忘れて、一族郎党ターキーをエンジョイしていることと思います。

ガイトナーNY連銀総裁がオバマ政権の財務長官に任命されました。「がっかりだった」と思われているポールソンからバトンを受け取るわけですが、大変な仕事だと思います。ガイトナー氏ですが、「プラグマティスト」といい意味で表現されています。連銀総裁とは異なる「立ち位置」です。今のような混乱している事態を収めるためには、経済理論を議論するよりも、人情を理解した上で何が機能して、何が機能しないのか、を実務的に判断して遂行できる人が必要なのかもしれません。有事向き人材という感じでしょうか?NY連銀の総裁になったときに、毎朝職員からマクロ経済のレクチャーを受けていたというから、その人柄がしのばれます。

話はとびますが、司馬遼太郎の「関が原」を読んでいます。登場人物はおしなべて「プラグマティスト」としてあがかれていますね。「武士道」的なものが広まったのは徳川幕府の安定が続いた後だと。戦国時代に武士の誇りを語っていたら、すぐにおいてきぼりです。

それだけではどうかと思いますが、ある種のプラグマティズムはこれからますます必要になる気がしています。いい表現で言えば「フレキシビリティ」。ビジネスモデルというは儲けるシステムですが、その寿命がますます短くなりそうです。マーケットにあわせて迅速にビジネスモデルを構築して、マーケットにあわせて「プラグマティック」にビジネスモデルを変化する。これは難しい。大企業にはつらい時代が到来しそうです。



企業の流動性危機が次々と報じられています。今日のニューヨーク株式マーケットではシティバンクの株価が売られて、身売り話まで出ています。本当半年前までは想像すらできない状況になっています。デトロイトの自動車会社の幹部はワシントンでコーポレートジェットについて叱られるし、ガソリンはガロン2ドルを切りましたし、大変化です。

私も起業直後で、この経済環境には不安が高まるのですが、「持てるものの不幸=持たないものの優位性」について考えています。巨額の金融資産も報酬もない、「持たない」人たちにとっては大きなチャンスがめぐってきます。おしなべて既存ビジネスの規模が大きい会社は軌道修正が必要になっており、将来についての布石を打つ余裕がなくなっています。これまで、入り込む余地がなかったマーケットでも「隙だらけ」になります。

今回の金融危機とマーケットの大調整の後には「焼け野原」がいたるところにできるのではないでしょうか。適当に陣地を確保して、工夫して商売を始めれば、伸びる余地あり、だと思っています。「持てるもの」たちと一緒に「形のない不安」におびえる必要はないのです。持たないものの優位性を生かして、明日への布石を打ちましょう!

大きなポジションをエンジョイしてきた人たちの泥沼は当面続きそうです。


2008年は大変な年になりました。

サブプライムに始まり、シティバンクやメリルリンチ他の銀行が巨額な損失を計上したと思ったら、9月にはリーマンブラザーズが倒産してしまいました。その後も、金融マーケットは大荒れ、と思っているうちにオバマ氏が大統領選で勝利しました。米国はディープなリセッションに入りそうです。

2008年は、私個人にとっても大きな転機の年となりました!20年以上勤務した日本の不動産会社をこの5月末で退職して、マンハッタンで不動産アドバイザーとして独立したのです。駐在員の立場からアメリカの企業オーナーになりました。経済の混乱は覚悟していたものの、これまでとは、正直思いませんでした。

私は1994年以来、途中10ヶ月ほど日本に戻りましたが、14年間近くアメリカに住んでいます。最初の2年はボストン、それからマンハッタン、現在はマンハッタンの対岸のニュージャージーです。100年に1回の危機ですから、当然今回の経済、金融市場の混乱は私が過去に経験したものとは比較にならない深刻さです。資金が循環しないので、あらゆるディールが成立しづらくなり、巨額な報酬のもとがなくなってしまいました。更に、大手金融機関の幹部はボーナス返上も求められています。これまでの高給取りには厳しい局面です。リッチビジネスマン相手の商売は急速にスローダウンしています。昨年まで強気のバーゲンセールを展開していたデパートも、今年は早めのディスカウントで在庫調整を急いでいます。マンハッタンの高級デパートのサックスではすでに40%オフセールを展開しています。これからホリデーシーズンで掻き入れ時ですが、ホテル料金はおさえめ、飛行機もすいています。高級レストランのディナーも空席が目立つようになりました。金融機関だけでなく、
基幹産業とも言えるデトロイトの自動車会社も青息吐息です。

「アメリカは今後凋落の一途」という議論が日本の経済雑誌にて繰り返して語られています。過去8年間、様々な過ちをおかしてきたアメリカが、リーダー選びで、アメリカらしく、大きな賭けに出ました。オバマ新大統領の下で、やはりアメリカは復活するのか、それとも、今回のダメージは致命的なのか、私の生活もかかっております!

米国にとっても、私にとっても、2009年は新たなスタートの年となります。これを機に、アメリカの経済、不動産、金融、街、毎日の生活で感じたこと、このブログを通じてお伝えすることとしました。アメリカ以外の国で感じたこと、経験したことも時にはお伝えします。ちなみに、「つぶやき」は、愛読させていただいているマネックス証券の松本大社長のブログ(松本大のつぶやき)からいただきました。

よろしくお願いします。

2008年11月
大竹 正史