電車を降りたら駅の構内は人がいっぱいで

30分くらい電車に乗っただけなのに

あののどかな風景が一変した。

スーツケースを引いてる観光客や会社員らしき人、

若い人達もたくさんいたから、学校を休んだくらいで心配なんてしなくていいみたいだ


「大丈夫?ひろむちゃん」


ポケットの中にいる俺の頭をポンポンして、ちょっと安心した

久しぶりに大泣きしてしまって、気恥ずかしいけど

理人の顔もスッキリしてるからよかった

前から人前でなかなか涙なんて見せれない性格で

誰かのために泣くなんて信じられなかったけど、

なんか、自分の真ん中辺りが溶けていくのがわかる。

理人の周りに対する思いやりの気持ちが少しだけ理解できる気がした


駅を出たら、やっぱり、スゴい人混み、、


「バスに乗って海に行こうか」


海⁈


「見たかったんだ、嬉しい♡」


ハイテンションな俺に笑いながら指先で

頭を撫でられた、

何だか、あったかい気持ちになるから不思議だ


バスに乗るにも沢山の人が並んでて、前にいる高齢の女性が不安そうに時刻表をみていた


「お困りですか?」


理人が声をかけた


「老眼鏡を忘れて時刻表が見えなくて…」


女性は安心した様子で指さした


「あー、俺、視力は自信あるんで大丈夫ですよ、

A町通り行きですね。あと、10分で来ますよ」


「ありがとう。助かったわ、お友達と待ち合わせしてたから困ってたの」


「良かったです、楽しんで来て下さいね」


きっと、特別なことをした訳じゃなくて

多分、理人には日常なんだろうな、

ただ、困った人がいたからって、笑うんだろうな

やっぱ、あったかいよ…


バスに乗ったら、女子高校生達が

コソコソ話していた


「ねー、マジでカッコいいよねー♪」


理人をチラチラ見てるし、やっぱり、モテるよな、

背も高いし、性格もいいし。

なんか、俺、落ち込んでる?


バスから海が見えてきた、

遠くには船が見えるし、ヤバいくらい広くて大きい…

「海、キレイだね」


「だな…」


目の前に広がる海の青さに

上手く言葉にできなかった



バスを降りたら、大きな公園に真っ白な建物が

不思議と調和していた、

あれが、理人が目指してる全国大会の場所なんだ


「風が気持ちいいね」


「うん、あのベンチに座ろうか」


海が近くに見えるベンチに座って

しばらく2人で海を見つめていた


「ひろむちゃん、俺さ、

ダンス部のサポートを受けようと思うんだ、

やっぱり、この場所に皆んなと一緒に来たいって

思った」



「うん、応援するね」


「ありがとう、絶対にひろむちゃんも連れてくるから」


ダメだ、また、涙が溢れそうになった