どうも割と有名な話らしいが、鎌倉時代の歌人、藤原定家は当時の京都でオーロラを目撃しているのだそうだ。1204年の2月に二日間見ているという。低緯度オーロラと考えられる赤いオーロラで、定家はその日記『明月記』に「赤気」と記述している。光の根元は白く、白い筋やら赤い筋やらがいくつかあり、火事のように光っており、非常に怖い。怪異中の怪異、というようなことを書いているようだ。定家という人は夜空を見上げるのが好きだったようで、超新星爆発まで何度か観測しているらしい。研究者の間では国際的に有名な話のようだ。それにしても定家が鎌倉時代、スーパーノヴァを見ていたというのは面白い。そして星空というのは不思議なものである。135億年前の宇宙の姿が部分的にではあれ映像的に「残って」いるんだから。夜空のどこかを探せば800年前の定家の姿もあるんじゃないかと思いたくなる。
『ペンローズの〈量子脳〉理論』を読んだ。マクロな宇宙は物理学的に見るとアインシュタインの相対論が正しい。一方、ミクロな世界を物理学的に記述しようとすると量子力学が正しい。しかし、この両者を統一する理論がない。ロジャー・ペンローズは数理物理学者の立場からミクロとマクロを統一する量子重力理論を考えている学者だが、この著作では人間の意識の問題を考え、意識はマイクロチューブルに於ける波動関数の収縮だと主張する。マイクロチューブル〈微小管〉とは大脳のニューロン〈神経細胞〉の軸索内に見られるたんぱく質である(尤も腎臓にもあるらしいが)※。収縮〈リダクション〉というのは量子力学の用語であり、量子力学的に例えば電子を観察すると、あちらには70%、こちらには30%、という具合に確率的にしか電子の位置座標を言い当てることができない。収縮とは、それが100%の確率になることで、つまりその瞬間マクロの現象になる(ただしマクロな量子力学的現象も知られていて、超電導などはその例である)。ペンローズはわれわれの大脳の中には量子力学的現象が起きていて、とりもなおさず、その量子力学的現象が意識なのだと考えているようだ。反論の多い説で、途中まで読んで吃驚りしたが、(その業績と天才に十二分に敬意を払いつつも)当の翻訳者のひとりである茂木健一郎氏がこの説に否定的だ。ぼくはバカだからか、この理論、面白かった。状況証拠的にかも知れないが、大脳に量子力学的現象があるということがいずれ証明される日が来るような気がする。もちろん素人考えだけど。
(23日)※シナプスとニューロンを取り違えたので訂正しました。その他加筆訂正。