4月か5月、髪が伸びて来たので、床屋に行かなきゃなあ、と思っていたが、戦争で核爆弾を使う使うと週刊誌が大騒ぎしていた頃で、おれはそういう言説を真剣に考える方なので、ああ、地球最後の日も近いのか、それなら最後に身だしなみなんて整えたところでしゃーねえわな、と捨て鉢な気持ちになって面倒臭くなり、床屋へ行く気が失せてしまった(何で読んだ文章だったか失念してしまったが、戦争体験者によると、戦争で生き延びるのはどんな状況でも身だしなみをきちんとしているお洒落な人たちらしい)。そうこうするうち、幸い核爆弾はまだ爆発せず、一方、髪の毛の方はどうにもならない程伸びて来て、さすがに床屋に行かざるを得なくなった。それで車で三十分程かかる市街地のいつもの床屋へ行ったら、なんと、予約制になってしまっていたのである。完全予約制ではなく、予約優先ではあったが、入り難かった。おれはローマがもしおれ一人の頭で出来ていたら、ローマ中の床屋が破滅するというくらい、髪の毛の伸びが遅い。床屋にとってとてもじゃないが上客とは言えないのだ。予約なしでふらりと入れるような顔馴染みとは言えなかった。さらに、おれは電話というものが大の苦手なのだ。最近の若者も苦手らしいが、おれはメールの方が楽だとか、そんなことよりももっと昔から、電話で話すのが嫌いであり、いわば筋金入りのテレフォニジニー(とでも言うのか)である。そこで仕方がないから、以前行っていた格安チェーン店の床屋へ行ったのだが、いや、まあ、トラ刈りでこそなかったものの、酷い出来上がりで、嫌になってしまった。そもそもサイドと後ろを刈るだけで、上と前は触りもしないってんだから話にならない。1950円という値段でもあり、上と前髪もやってくれとも言い難かった。おれは今年に入って急にゴソッと髪の毛が火星か何処かにテレポーテーションしてしまったので、この間鏡を見てびっくり仰天したが、頭頂部が見事にハゲあがっていた。父親の背中ならぬ、頭を見て育ったからガキの頃から覚悟は出来ていたが、ハゲ方までは計算に入っていなかったのである。フランシスコ・ザビエルとかサッカーのアルシンドとかフットボールアワーの岩尾望とか、他人事だと思っていた。てっぺんハゲなんていちばんやってはいけないハゲ方ではないか。それ程のハゲ方だから、従って格安の床屋は激安といえども、そういう配慮をしてくれたのだろうか、とも考えた。しかし、そんなデリケートな配慮をするとしたら、他の部分があまりにも雑すぎるのであり、つまり、そんな微妙な配慮なんかではあり得ないのである。横と後ろだけ短くして、オールバック風にドライヤーを当てやがったもんだから、家に帰って洗面所の鏡で見てみると、まるで昔のマッドサイエンティストである。ハイパーアクティブのトーマス・ドルビーだ。


   全然話は違うが、宇宙飛行士は虫歯があるとまずいという話がある。船外活動をする時、宇宙服を着る。この宇宙服というのがおよそ0.3気圧に減圧されている。そこで古い虫歯の治療跡に現在進行中の虫歯があったりして、その箇所に空洞があると気圧の関係でその空洞が膨張し、歯の神経を圧迫して激痛が走るらしい。最悪の場合、歯が爆発するという。嘘か誠か、宇宙飛行士はそうならないために、ペンチで自分の歯を抜く訓練をしているというのだが、本当だろうか? いずれスペースコロニーが建設されて、そこに住むことになったとして、コロニー内は1気圧に保たれているのだろうが、減圧スペースに入らねばならない場面というのもあるかも知れない。その度に虫歯に激痛が走るなんてことになったら大変だな。しかし、空洞と言うなら人間の身体なんて空洞だらけの筈だが(胃袋とか)、虫歯の空洞だけは危険というのであれば、それも不思議に思う。胃袋を吐き出して前足を使って器用に自分で掃除するカエルがいるが、宇宙空間に行ったらどうなるんだろう。


  

   全然話は違うが、トミー・フラナガ ン『オーヴァーシーズ』は良い。マストアルバムと言われているらしいから、今さらおれ如きがどうこう言う話でもないんだけど、のっけから音の密度というか、レベルの違いを感じる。「ヴェルダンディ」とか「ダラーナ」とかいいなあ。やっぱり北欧ってあこがれてしまうなあ。日本語のC調とは真逆のアルバムだけど、C調というのは音楽家や音楽的感性の人たちにイメージを与えるらしい(植木等も)。突き抜けようとするようなイメージなのだろう。



(2日)統一教会っていうと、80年代、90年代にハデにぶち上げた合同結婚式が印象に残っていて、小生はちょうどアドレッセンスの真っ只中に当たったので、そのためなのか、事実あまり報道されなかったのか、どちらかわからないが、霊感商法の方はあまり印象に残っていない。時過ぎてすっかり過去の話と思っていたら、今回、国家公安委員長に防衛大臣といつの間にか権力の中枢部に食い込んでいた。驚きだ。癒着の構造が不透明さを含めて、いま一歩よくわからないが、票田のうまみだけなのかな?  ビジネスライクな心理構造だけではあるまい。やはり復讐ということですよね。