松田優作主演のテレビドラマ、「探偵物語」は、ぼくの半生でも、かなりの決定的な影響をもたらした。小学生だったから、例の炎が額の高さにまで上がるライターとか、無意味に近いような有名な死に際とか、友人と真似して遊んでいたが、後年思い出しても、現実と虚構の風物が一致する、映画が映画でいられた、最後のわずかな期間に活躍した俳優という気がする。ハードボイルドを自然に演じ、時代的にハードボイルドというものを演じることができた最後の役者さんだった。まるで作品そのままに、ほとんどハードボイルドといっしょに殉死してしまったというのが、伝説の由因であろう。ぼくがゴヤの描く地獄に落ちそうになったら、工藤優作はぼくを殺してくれるだろうか?