X博士は緩歩動物のクマムシが何故、放射能に強いかを日夜研究していたが、ある日、ついに生物内にある放射線に耐久性を持つ物質を特定することに成功した。これは同時にあらゆる放射性物質を無害化することがわかったため、大量に化学合成し、汚染地帯に散布したところ、劇的にその地域の線量を下げることができた。博士は一躍名声を手に入れ、大儲けした。

数ヶ月後のことだった。人々はここ最近、もう何週間も雨が降っていないことを発見した。夏になると各地のダムは完全に干上がってしまい、田畑が地割れをした。店先からジュースやミネラル・ウォーターが消えてなくなり、給水車には長蛇の列ができた。誰かが、これは放射性元素無害化物質のせいではないかと言い始めた。あれを境に天候の異変が起きたのだ。噂と不安が全国に広まり、X博士は不承不承記者会見を開いた。だが博士は、冒頭ほんの二言三言喋っただけで机に顔を突っ伏して眠り込んでしまった。質問をしようとした記者も強い睡魔に襲われると、頭をがくりと垂れたちまち眠ってしまった。会見を家のテレビで見ていた視聴者もまだ夜も早いのに寝入ってしまった。これは何事かと急いで戒厳令を発令しようとした政府関係者も深い眠りに落ちた。こうして全世界が突然眠ってしまった。

人類はそれから一万三千年後に最初の雨が降りだすまで乾眠してしまったという。