小倉船(演:月亭文都)。小倉船とは関門海峡の渡し船。川の渡しではなく海峡の渡しは潮流が時刻によって複雑で慎重な操船が必要になる。話は小倉から下関へ向かう船中で起こる。
まず、乗船客の中に、唐物屋の男がいて、長崎からガラス製の潜水具を運んでいた。潜水具はフラスコといってガラス製の容器だ。化学の実験用のフラスコの20倍位の大きさなのだろう。これが伏線になっている。
それと船中で賭け事をしている風景が語られる。その中の一人がトイレをすませようと船尾部にある排泄物海中投棄型のトイレでしゃがんだ時に、うっかり腰巻の巾着を海中に落としてしまう。本人申告では金額は50両。男は大坂の大店の使用人で、九州の顧客から集金して本店に戻るところだった。
途方に暮れた男は海に飛び込んで死のうとするが、周りの先客から止められる。保険金にも入っていないのに飛び込んでもしょうがない。そこに現れたのが、フラスコを輸送中の男で、ちょうどいい実験台があらわれたと、フラスコによる潜水調査の試用を勧める。
男はさっそく海の中にガラス瓶のまま沈んでいくと、果たして財布が見つかったのだが、ガラス瓶のなかからでは手が出せない。あれこれももがいているうちにフラスコにひびが入ってしまい水中に沈没してしまう。
ところが話は異世界で続くわけだ。海中に沈んだ男が目を覚ますと、近くに立派な門があって、竜宮城の入り口になっていた。これは乙姫さまがいるに違いないと思い、偽浦島太郎となって騙そうとするが、本物の浦島太郎にみつかり、竜宮警察から追われる身になる。
そして、海中でのチェースが始まり、噺家は与えられた時間の中で納まるように各種のオチの中から適当なものを選んで調整するわけだ。
日常と非日常、海中チェース、人間フラスコなどの新製品と民話の融合など、型破りの落語だ。














