~ うつ病絶好調 ~

パニック障害の診断を無事にもらった私は、職場に出勤した。同僚や上司にも報告した。するとやはり『あの人、うつ病…』というムードが職場内を包み込んだ。世間様から見ればちょっと高級な外車屋さんにうつ病とは困ったもんだ…。という感じである。まぁ自分で勝手に思い込んでいただけかもしれないが…。それまで私のストレス源の70%を占めるそりが合わない上司も、やや神妙な顔ですこし優しげである。それから1~2週間は普通に仕事をした。パニック障害らしき症状も

特にはない。…などと思っていたいつも通りに仕事をしているその時だった。

“来た…。”あの身体異常である。あの日ほど酷くはないものの、やはり手足は痺れ自力で立っているのも難しい状況だ。顔面蒼白の落ち武者に戻ってしまった私は早退した。やがてそんな日が2回、3回と増えてきた。「今日は休みます。」と、電話をする回数も徐々に増え、やがて私からの欠勤定時連絡は職場の電話を鳴らさなくなった。無断欠勤である。無断欠勤の回数も徐々に増えていった。朝、出勤の時間に携帯が鳴っている…。私はもちろん気付いている。留守電のメッセージに「社会人なんだから連絡ぐらいしろ」と入っている。また翌朝携帯が鳴る。また翌朝…。

私はもはや携帯にも触れなくなっていた。サイレントモードにして何日も携帯を放置した。今でこそ「社会人なんだから無断欠勤してはならない」ということはわかる。当たり前のことである。小学生ですら学校を休む時は連絡をする。…そんな当たり前のことができないのである。「いくら体調が悪くたって、なぜ職場に電話の一本も出来ないのか?」そう言われても“できない”のである。こればっかりは“できないからできなかった”と言うしかない。

体の症状はというとだいたいの人が「うつ病ってこんな感じ」と思う症状が、ことごとく我が身を襲っていた。不眠…3日くらい余裕で眠れない。頭痛…常に重く鈍く。食欲不振…もはや食事不要。だるさ…よく鉛のようなといったアレ。こんな感じである。無断欠勤の落ち武者は部屋の掃除すらままならず、ワンルームのアパートに積もったごみに埋もれて、まるでナメクジのように暮らしていた。こんな時、一人暮らしじゃなかったらどうなんだろう…。パニック障害から順調にうつ病絶頂期に突入した私は職場からの勧めもあり休職することにした。

 

~ 楽しい?休職生活 ~

パニック障害からあっという間に休職という状況になった。うつ病にはまず第一に療養が重要だという。なるほど、これは本当だ。ジェイゾロフトとか抗うつ薬なども処方通りちゃんと飲むべきだ。1ヶ月ほど経つと体調はかなり改善してきている。ナメクジになってもタバコを買いに行くことと病院に通うことは怠らなかった賜物である。暇なのでゴミだらけだった我が家も清潔に片付いている。ただまだ本調子ではない。なんというか、体はダルいし、すべてが億劫だ。仕事など社会人としての自分を実行しようと考えると面倒臭くて仕方ない。そんなこんなで2ヶ月くらい経った。その間の割と印象深かったことは大好きなシリーズであるメタルギアソリッドの新作が発売され、私はとうとうPS4を買った。これは非常に面白く、私は不眠気味なのも利用し馬車馬の如くゲームをしまくった。ナメクジは少しずつ回復し遊んで過ごしたのである。ちなみに生活費などは傷病手当金という制度でなんとかなった。くだらないと思って払い続けていた税金だが、いざ公的サービスを利用すると考えさせられる。

そんな日々の中私の病状回復に決定的に効果のあった出来事が発生する。

 

~ 着信 ~

ありえない人物からの着信が滅多に見ない携帯に表示されている。“元カノ”である。この元カノを真希(仮名)とする。5年くらいずっと付き合っていたが、昨年末くらいにフラれてしまった真希である。最初は久しぶり…などと話していたが、私は現在の自分の病状を彼女に打ち明けた。すると真希は『絶対にダメになっている時期だと思って電話した。』という。そのまま電話を終えると私たちは再開し喧嘩別れしたことなどなかったかのように元通りになった。

 

先に言っておくと、これを書いている今現在は私はシングルである。つまり、またしてもフラれてしまったのだ。我ながら大馬鹿な男であると思うが、ぜんぜん引きづってはいない。なんでかって、いいことも悪いことも私たちの間にはたくさんあった。それだけの事である。

 

さて話を戻す。

やはり、人は“ひとりじゃない”と全然違う。ナメクジ絶頂の頃はそんなこと1ミリも思えなかった。ただ、どんな状態になっても人は“ひとりではない”今ならこれだけは言える。(まぁ結局今もシングルなんだが…笑)真希とヨリを戻した私はふたりで出かけるために色んな場所に出かけたし、体調の悪さなども遠慮なく相談できた。“外に出る”“人と会話する”この2点は、私の病状回復に劇的に良い効果をもたらしたのである。

だが予想外の展開にも陥った。抗うつ薬の副作用である。

 

~ 意外な副作用(18禁w) ~

まだウブな中学生でもなく、クリスチャンのような戒律もない男女に自然発生するものとは何か?そう、夜の営みである。ここに意外な抗うつ薬の副作用があった。私はうつ病初期のころから、精神科で処方される薬にあまり副作用を感じないほうだった。飲んでみても「だから何?」といった感じである。飲み忘れたり、仕事が忙しく病院に行きそびれたりすると目眩が激しく起こる。離脱症状というやつである。薬を飲んでいるのに、飲み忘れたら“作用”が発生するのが私の“副作用”といえよう。こんな感じで日々忙しくゲームばかりしていた私が自然発生した夜の営みと対峙した時、抗うつ薬の副作用を思い知ることになる。

膣内射精障害…つまりイケないのである。この頃の私はそこらのカウンセラーよりうつ病に詳しくなってしまった為、抗うつ薬によりそのようなことが起こりうることは知っていた。なるほど20代男子というクジャクで言えば羽全開の時期にしては、性欲なないかもしれない。しかし、実際に行為と直面してみると、なんと気まずいものか。どのような試みをしてもフィニッシュは訪れず、無駄に変形した“愚息”が馬鹿馬鹿しい。彼女はある意味気を使ってはくれている様子である。しかし、それでも愛する真希との行事であり解決しなくてはならない。そう考えた私は“夜の営みのハウツー本(カップルとか夫婦向けの真面目な部門でのHな本)”を買い、研究し実践してみた。結果、“フィニッシュ”にこだわらなくとも良いモノだという結論に達したことだけ記しておこう。ちなみに今現在は、抗うつ薬の種類が変わったためか、決して活用する場面のない性欲が人並みにある。