頻尿と骨盤の痛み
モリ―は50代前半の白人の女の方でした。症状は多い時では五分おきに来る尿意、と一日中続く骨盤と下腹の痛み。
モリ―はとても優しくてホームレスの方にご飯を届けてあげたりしたこともあったといいました。モリ―は元看護士さんでしたが、今現在は身体の調子が悪く、痛みと頻尿のせいで働けないので毎日生活保護の支給で日々賄っていると言いました。毎日の買い物も “FOOD STAMP”という政府からの食糧費補助金を使うので買いたいものも買えずにぎりぎりで食べていっていると言いました。モリ―には高校生の息子さんが一緒に住んでいて食べ盛りの息子におなか一杯食べさせてあげられなくて申し訳ないと思うとよく話していました。
モリ―にはたくさんの過去がありました。幼少期からの性的虐待。10歳くらいのころからで母親のボーイフレンドでした。大人になって早くに結婚、娘さんと息子さんができました。結婚当初は温かい家庭を築くために頑張ったというモリ―でしたが旦那さんのアルコールの摂取量が多くなるにつれてだんだん喧嘩が増えていったといいます。子供が小学生に入るころから旦那さんからの暴力が始まり酔うたびに殴られていたといいます。離婚したかったけれど旦那さんにすべてを握られていたと言いました。看護士として働いたお金の振込先は旦那さんの口座になっており自分が使いたいお金は旦那さんにお願いしないといけなかったといいます。耐えられなくなったモリ―は2年前に正式に離婚申請をしました。その時旦那さんはすべて金銭になりそうなものを持って出ていったそうです。まだ離婚することは承認しておらず、もしほかの男をこの家に入れたら命の保証はないと言って別れたそうです。
娘さんは独立して家を出ていましたが息子さんはまだ高校生だったためモリ―と一緒に住むことになりました。娘さんとは現在疎遠になっていると。その理由が娘さんの旦那さんがモリ―に性的関係を迫ってきたからだそうです。そのときモリ―は娘さんの二歳の孫の面倒を見に家に頻繁に出入りしていたといいます。娘さんはモリ―がベビーシッター中に夫を誘惑したのであろうと憤り連絡を絶ったといいます。二歳の孫とも会えなくなったといいました。モリ―は泣いていました。
モリ―にはたくさんの過去がありこれらすべてが現在の頻尿と骨盤の痛みに関係していました。精神的な痛みは不思議な通路を通って体に現れます。特に骨盤のいたみは様々な精神的な病に関係しています。"A Headache in the Pelvis: A New Understanding and Treatment for Chronic Pelvic Pain Syndromes" という有名な本がありますが本当に勉強になるものでした。
モリ―には5回ほど治療に訪れた後に精神的なトラウマの治療とDV (家庭内暴力)やパートナーからの性的暴力から被害を受けた方のためのサポートグループを進めました。モリ―の膀胱や骨盤底の筋力など測定した結果すべての筋肉が固く、反応が敏感に泣ていることが分かりました。感情の浮き沈みによって膀胱にシグナルが送られると言えばわかりやすいでしょうか。膀胱は本来尿の量による中からの圧力で尿意を起こすのが平常の働きですが、自律神経が整っていなかったり、Anxiety (不安症害)があるとそのメカニズムがくるってきます。
ヨガやピラテスを使って治療し、だんだんと症状は軽くなっていきました。
でも、ある日、モリ―が治療の予約日に来ませんでした。その次の治療日にも現れず、電話しても返事がきませんでした。私は怖くなりました。なぜならその前の治療の日にモリ―は旦那さんがアパートの中を金属バットで物を壊してぐちゃぐちゃにして帰っていったと言っていたからです。警察に通報して"restraining order" 接近禁止命令を申請したと言っていました。あの日からモリ―と連絡がつきません。あれから何度か電話しましたがやはりつながらず今に至っています。モリ―は今一体どこにいるのか元気にしてるのか、時たま見せてくれたあの笑顔が忘れられず、もっと何かできたのではと思う日々です。