今年のアメリカはまたインフレが再燃するリスクがあるが、FRBは利下げについて慎重姿勢を崩さないのか、それとも新政権からの圧力もあって大幅に利下げするのか、どちらになるのかが分からない。
FRBは1970年代に高いインフレに襲われたことを受けて急激な利上げをすることになったが、その後、利下げを急いだことによってインフレが再燃し、結局、政策金利を20%まで引き上げたことがあった。
パウエルFRBはその時の失敗を恐れ、現時点では利下げに慎重になっているらしい。
【参考】2025年1月17日の動画(一部抜粋)
1970年代、アメリカ経済はインフレの嵐に見舞われました。1974年にはインフレ率が12%を超え、連邦準備制度は金利を急激に13.3%まで引き上げる対応を迫られたのです。しかし、その後の判断ミスが、新たな混乱を呼び込むこととなりました。時期尚早の利下げにより、インフレは再び勢いを増し、1980年には15%近くにまで達しました。最終的にFRBは、金利を20%にまで引き上げるという、かつてない厳しい措置を取らざるを得なかったのです。この政策の衝撃で、企業は倒産、失業率は急上昇し、経済は深刻な痛みを伴いました。今日の状況は、1970年代と不気味なほど似ています。物価上昇が一時的に落ち着いて見えても、依然としてその勢いは粘着性を保っています。そしてFRBがもし、利下げを急ぎすぎるなら、1970年代の悪夢が再び現実となるリスクが高いのです。
トランプ氏は、高金利が経済の回復を阻害しているとし、即時の利下げを強く要求してきました。その発言はしばしば攻撃的で、FRBの独立性に対する直接的な挑戦とも取れるものでした。一方で、パウエル議長は政治的な圧力に屈することなく、慎重な金融政策を主張しています。彼は過度な利下げがインフレを再燃させるリスクがあると警鐘を鳴らし続けています。
https://www.youtube.com/watch?v=F8U13YgBnYk
【参考】2024年5月1日の記事
https://moneyworld.jp/news/05_00126875_news
【参考】
政策金利の推移
https://zai.diamond.jp/articles/-/401200
アメリカではFRBが政策金利を1%下げたにもかかわらず30年住宅ローン金利(固定)が7%台に上昇している。
これは好ましいことではないのだから、このまま高い金利を維持するのかが分からない。
高金利が続けば商業用不動産の借り換えにも支障をきたすと言われており、クレジットカードや自動車ローンの支払いにも負担が掛かるため、何らかのショックが起きればこれまでと同様にFRBは金利を下げざるを得ないように思える。
以下の動画によれば、2021年以降、アメリカのクレジットカードの延滞率は高所得層でも上昇しているらしい。
このような事態を受けてクレジットカード会社は審査を厳しくしていくことが予想され、実際にそうなることで消費が低迷していくことにも繋がるのだろう。
【参考】2025年1月16日 の記事
[15日 ロイター] - 米抵当銀行協会(MBA)が15日発表した今月10日までの週間住宅ローン平均約定金利は、主力の30年固定金利が前週より10ベーシスポイント(bp)上昇して7.09%と、約8カ月ぶりの高水準になった。上昇したのは5週連続。
住宅価格の上昇と、限られた供給に直面している住宅購入希望者をさらに圧迫していることを示した。米連邦準備理事会(FRB)の政策金利は昨年9月に利下げを始める前より1%ポイント低くなったが、逆に住宅ローン金利は約1%ポイント上昇している。
2017年に成立した大型減税の延長などの経済政策を掲げたトランプ米次期大統領が来週就任する。昨年の財政赤字は1兆8000億ドルを超えており、新型コロナウイルス流行中の時期を除くと過去最高となった。
FRBは2%のインフレ目標の達成に向けた進展が停滞することへの懸念や、関税引き上げ、移民の制限といったトランプ次期政権の政策が経済にどのような影響を与えるかが不透明な中で、今年の利下げペースを鈍化させることを示唆している。
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/HQ6TZJXHSZP75HOK2MYNH44CWI-2025-01-15/
【参考】2025年1月9日 の動画
https://youtu.be/xqS-QJktTYc?si=_E5Lzp76SbEN_tb5&t=613
【参考】2024年4月23日の記事
https://www.a-tm.co.jp/top/housingloan/rate/expected-rates-for-december-2022/
かつてのリーマンショックの原因となった債務担保証券に似たCRE・CLOというパッケージ化された証券にまた重大リスクがあるのではないかと指摘されている。
今後、米国債の大量発行による長期金利の急騰リスクがあり、それにより商業用不動産の所有者は借り換えができず、次々とデフォルトしていくと言われている。
FRBは9月から3会合連続で利下げを行い、現時点でFF金利は1%下がったにもかかわらず長期金利は1%上昇しており、これは1984年以来の出来事だという。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/85690?page=2
FRBの方針としては商業用不動産問題よりもインフレ抑制の方を重視しているらしく、この問題は今後、大なり小なり金融市場に影響を及ぼすことになるようだ。
https://www.youtube.com/watch?v=xU-zSJ3i1Kk
【参考】2024年12月25日の記事
12月16日付ブルームバーグは「オフィスの価値低迷は米国の銀行業界に波及しており、中小の金融機関で悪影響が顕在化している」と報じている。
「泣き面に蜂」ではないが、オフィスビルに加えて集合住宅も苦境に陥っている。
米国の集合住宅市場は2010年代以降、急拡大し、今や建設中の住宅物件の6割を占めるようになった。米国の集合住宅の多くは賃貸で、ノンバンクやREIT(不動産投資信託)が投資用に保有しており、日本のように居住者が一室を購入するケースはまれだ。
「集合住宅への投資は30%のリターンが保証されている」との期待からマネーが殺到し、市場は過熱状態となっていたが、金利上昇後、価格は急落した。
FRBによれば、昨年第4四半期の価格はピーク時の2022年第2四半期に比べて2割下落したが、足元の価格は市況の悪化を十分に反映していないと言われている。
格付け会社フィッチは「集合住宅向け融資は昨年末時点で6130億ドルに達した」と分析している。関係者からは「集合住宅向け融資はオフィス向け融資以上に危険だ」との声も聞こえてくる。 商業用不動産の不振は金融市場にも悪影響を及ぼしつつある。
問題視されているのは、CRE・CLOと呼ばれる商業用不動産ローンのプールを裏付けとして発行される証券だ。普通の不動産ローン担保証券(MBS)に組み入れるにはリスクが高すぎると判断された債権を束ねたものである。
ハイリスク・ハイリターン金融商品に属し、リターンは期待できるものの、市場環境が悪化すればその影響を最も大きく受ける。
オフィスや集合住宅分野のCRE・CLOのディストレス(行き詰まった状態)率は今年に入って上昇しており、15%前後と高率だ。
気になるのは、CRE・CLOがリーマンショックの大本の原因となったCRE・CDO(債務担保証券)に由来していることだ。投資家保護を強化した上で2019年末に発行が開始されたが、これまで逆風にさらされたことはない。来年以降、米国の金融市場の撹乱(かくらん)要素となる可能性は排除できないと思う。
「歴史は繰り返す」というつもりはない。ただ、米国の金融市場に蓄積されているひずみが重大な危機に発展するリスクへの警戒を怠るべきではないだろう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/85690?page=3
もし本当にトランプ政権が公約通りに中国に対して60%の関税を課し、同盟国に10%の関税を課すのであれば、インフレが悪化するだけでなく、サプライチェーンの混乱は恐らく避けられないのだろう。
特に中国がアメリカに対抗措置を取ることで中国からの重要な輸入品が入ってこなくなる可能性がある。
そうなれば短期的には別の国や国内から同じような物を調達できず、深刻な物不足に陥るのかもしれない。
現時点では高い関税について「交渉上の策略」だという見方が大勢を占めているようだが、本当に有言実行となれば大変なことになるのだろう。
(カナダとメキシコに対しては25%の追加関税を掛けると主張しているが、実際にどうなるのかは分からない。)
【参考】2024年11月22日の記事
「中国、米国へ輸出やめるってよ」なのか「米国、中国から輸入やめるってよ」なのか不明だが、トランプ次期大統領は中国に60%ともいわれる関税をかけるらしい。米国の輸入の15%ほどを中国が占めている。だから通常に考えれば米国民の負担が増加する。それが実現するかは不明だ。
一方で面白いと筆者が思ったのは、日本のサプライチェーン関係者の中には「これから出張で中国に行く」という人までいた点だ。理由は「米国向けの仕事が減るだろうから、きっと安く仕事を引き受けてくれるに違いない」という。さすが商売人。これまたメディアで語られる「トランプ大統領と、影響を受けて困っている大衆」という構図とは違う光景がある。
トランプ次期大統領は一言でいうと「米国ファーストで、米国内の雇用創出」を意図している。ただし、ある人が言っていたのだが、「トランプ氏の米大統領就任をきっかけに米国内で工場を新設しようかとフィージビリティースタディーをしたが、結局、米国では人手不足により十分な人材が集まらないと判断した」とのことだった。もしかすると他の日本メーカーも米国進出を諦めたかもしれない。
先ほど紹介した通り、関税は異常な率に設定される可能性がある。しかし、サプライチェーン関係者はそれが本当に実現するとは限らない、と考えている。
そもそもトランプ次期大統領の目標は国内産業の保護だったはずだ。それでも中国などからの輸入品に莫大な関税をかけるのであれば、米国内の輸入企業は壊滅的な状況になる可能性が高い。もっと言うと、米国内のメーカーでも中国からの調達品抜きで製品を造れるところはほぼない(直接調達しているか、間接かはともかくとして)。しかも関税のアップはさらなるインフレをもたらす。
中国は当然ながら報復措置に出るだろう。例えば「特定材料について米国への輸出を禁じる」といった措置だ。実際に中国政府は米国次期政権の出方を様子見しているだろう。そして実際に中国が輸出禁止措置をとると、米国企業は立ち行かなくなる。中国以外に高い関税をかけられた国も、追随して報復措置をとる可能性がある。
「それらの国をなだめる」という雰囲気を醸成して、トランプ次期政権は高関税の政策をやめるかもしれない。という読みもあって、サプライチェーン関係者は次期政権が高関税を特定国に課す可能性を否定はしていないが、その可能性はさほど高いわけでもないだろう、と思っている。また、例えば中国からの完成品には関税をかけても、電気自動車で使用する部品には関税をかけないなどの「ザル関税」になるのではないかと見る向きは多い。
読者の属する企業でも、大幅なサプライチェーンの組み換えは準備していない、というのが実際のところではないだろうか。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01268/00118/
【参考】2024年12月13日 の記事
米国の首都ワシントンの有力シンクタンクが、ドナルド・トランプ次期大統領が主張するメキシコとカナダからの輸入品に対する25%の追加関税の実現可能性や、経済への影響に関する論考を相次いで発表している。
ブルッキングス研究所は12月11日に発表した論考で、追加関税を賦課するとの発表はトランプ氏の交渉上の策略にすぎないとする意見もあるとしつつも、「それを当然と考えるべきではなく、少なくとも短期的にはリスクは高い」との考えを示した。また、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の特恵税率の利用を目的に、3カ国にまたがって自動車産業が集積していることから、実際に関税が課された場合は同産業への影響が大きいと指摘し、「USMCAを利用して生産される自動車は、生産過程で平均8回は国境を超えるため、その度に関税が課されることになる」「大幅な生産コストの上昇、雇用への打撃、サプライチェーンの混乱、そして販売価格の上昇につながるだろう」と示唆した。
https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/12/760dc6a6b56b1884.html
「バンク・ターム・ファンディング・プログラム」(FRBによる銀行への緊急融資プログラム)の終了と延長によって市場にどのような影響があるのかは不明だが、今年は金融市場での様々な波乱要因が重なっている。
今のところ、そのプログラムは延長されると思わている。
しかし、The gold onlineの記事には「近いうちに、銀行は再び、資金繰りに窮する可能性があります。メイン・シナリオは『FRBによる救済』(=同プログラムの延長)ですが、救済のタイミングによっては、金融市場に短期的な動揺が走るでしょう。」とあり、プログラムの延長をするのだからとりあえず銀行の経営難は回避され、問題視されないだろう、ということになるとは限らないらしい。
https://gentosha-go.com/articles/-/65132
以下の動画では、2025年後半には巨大過ぎる債務やレバレッジによって経済が崩壊し、株価が80%、金や銀が40%程度下落することを警告している人物を紹介しているが、そうなることを回避するために中央銀行が金融政策によってバブル崩壊を先延ばしにしていても、結果としてはもっと悲惨なことになるのだろう。
それはタイミングが少しズレるだけであり、悪い結果を誤魔化すことにはならない。
そうしている間にさらに病巣が拡大し続け、さらなる悲惨な崩壊をもたらすことになる。
しかし、今のところウォール街では強気を維持したままとなっている。
https://www.youtube.com/watch?v=MAn33KmUaRg
以下の株探の記事でもヘッジファンドのレバレッジについて「過去最高レベルにある」と書かれているが、過大評価されている株式やAIバブル、CRE(リーマンショックの原因となった債務担保証券に似たパッケージ化された証券)などの要因によって想像を絶するようなバブル崩壊が始まるリスクがある。
【参考】2024年12月17日の記事
銀行システムに関しては全体として健全だと評価した半面、ヘッジファンドのレバレッジについては、利用可能な過去のデータと比較して過去最高レベルにあると分析している。更に金融システムに対する短期的なリスクについて、ニューヨーク連銀による専門家への調査結果を提示。米国政府の債務持続性を巡る懸念や、中東情勢、政策の不確実性、米国の景気後退を挙げる回答が上位を占めた。
IMFのGFSR、ECBやFRBのFRSが懸念している点には共通点がある。ボラティリティへの脆弱性、ヘッジファンドなどNBFI部門へのリスクの蓄積、株式に対する過大評価、 AI関連株を巡るバブルの可能性である。CRE市場動向も引き続きリスク要因としてみなされている。
https://kabutan.jp/news/marketnews/?b=n202412171085