※一部追記しました。

 

日銀が預金準備率を引き上げることで、約470兆円の超過準備額を減らすのではないかという記事がある。

日銀が利上げする度に日銀は民間銀行に支払う付利の負担が大きくなるが、預金準備率を引き上げれば利上げしてもその負担を減らせるらしい。

1年前の時点では政策金利が0.6%で日銀は赤字になり、2.8%で債務超過になると言われているが、政策金利を中立金利とされる1.02.5%まで引き上げても日銀の財務に問題が出ないようにしていく可能性がある。

https://www.nri.com/jp/media/column/kiuchi/20240118.html

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD225US0S4A021C2000000/

また、「大規模な付利により銀行の財務が改善することで貸し出し態度が緩み、利上げによる金融政策効果が低下する」とも言われており、利上げしても景気を刺激し、さらにインフレになってしまうという懸念もどうやらあるらしい。

それでは政策金利を調整することで物価をコントロールできなくなるため、やはり民間銀行が莫大な付利を得るというのは問題があるのだろう。

預金準備率は国会で決めることではなく、日銀が必要に応じて変更できるため、利上げを進めていく過程で日銀の財務に問題が生じないように預金準備率を引き上げていく可能性は十分考えられる。

しかし、それによって民間銀行の収益が減るため、「日銀が預金準備率の見直しに動くようなことがあれば、金融機関からの猛反発が予想される」と東洋経済の記事には書かれている。

預金準備率を引き上げると「棚ぼた利益」を得ていた民間銀行がその分だけ損をするのかというと、単純にそのように言えることではないのかもしれない。

それは、利上げによって付利だけが高くなるのではなく、国債の金利も高くなるため、民間銀行は国債を買えばいいということにもなる。

預金準備率が上がると民間銀行は金利が得られない日銀当座預金に資金をこれまでよりも多く入れなければならないため、超過準備額は減ることになるが、202411月時点で超過準備額が約470兆円もあるのだから、それによって「国債等で運用していれば得られたであろう収益の機会損失が発生する」とは言えないのではないかと思う。

現時点で莫大な余剰資金が中央銀行の当座預金に入っているが、超過分が約470兆円もあるのだから、預金準備率の引き上げによって日銀に預け入れなければならない法定準備預金額が増えても、銀行に余裕がなくなるということはないはず。

これまでに有効に使われてこなかった余計な日銀当座預金の超過準備額 約470兆円が減ることになるが、当然、全てなくなるわけではない。

政策金利と付利は同じ水準になるため、現時点では付利は0.25%だが、政策金利を1%まで引き上げるのであれば不利も1%になる。

しかし、新発10年債の利率がそれよりもずっと高い水準になるのであれば、民間銀行が国債を買う動機になり、日銀の国債買い入れ減額計画も滞りなく進むことになるのだろう。

今の政策金利は0.25%であるため不利も0.25%だが、今の10年債利回りは1.2%程度であるため、政策金利を1%まで引き上げるのであれば、10年債利回りは今よりずっと高くなっているのだろう。

そうなれば、民間銀行は資金を超過準備に入れず、国債の方に資金を回すはず。

しかし、新発債の金利が高くなりすぎると政府の利払いの負担が増えるため、国債の金利が上がれば上がるほど良いというわけで もない。

 

・追記(2025/01/14)

超過準備額についてはっきりしない点があったためCopilotに質問してみたところ、「日銀当座預金にある超過準備額は、民間銀行が国債などを購入する際に自由に使うことはできません」という答えが返ってきた。法定準備額は強制であるため、民間銀行は預貯金の一部を日銀当座預金に積み立てしなければならないが、超過準備額は強制ではないのだから、民間銀行はそれを引き出して国債等の購入に使えるのかと思ったが、AIによれば使うことはできないという。(日銀当座預金を減らすには) しかし、googleAIに同じ質問をしてみると、「民間銀行が預けている超過準備額は、融資や投資に回すことで、実体経済の活性化に役立てることができます」と答えるため、どちらが正しいのか分からない。三井住友DSアセットマネジメントの解説を読むと、超過準備額から融資や投資に回すことができるようなことが書いてある。

 

【参考】

 自分 が送信しました:

日銀当座預金に入っている超過準備額は470兆円もあるが、それは民間の銀行が国債などを購入する際に自由に使うことができるのかを知りたい。

 Copilot が送信しました:

日銀当座預金にある超過準備額は、民間銀行が国債などを購入する際に自由に使うことはできません。超過準備額は、民間銀行が日銀に預けている資金のうち、法定準備額を超える部分を指します。この超過準備額には現在0.1%の利息が付いており、日銀から民間銀行に利子が支払われています

民間銀行が国債を購入する際には、通常、自己資金や市場からの調達資金を使用します。日銀当座預金の超過準備額は、主に金融政策の一環として日銀が管理しているものであり、直接的に国債購入に充てることはできません

他に気になる点や質問があれば、どうぞお知らせください。

 

【参考】

 AI による概要

民間銀行が預けている超過準備額は、融資や投資に回すことで、実体経済の活性化に役立てることができます。

民間銀行 超過準備額 使う - Google 検索

 

【参考】

民間の金融機関が中央銀行に預けている当座預金の金利をマイナスにすること。「準備預金制度」に基づき、金融機関は他行との取引の決済をスムーズにするため、中央銀行の当座預金口座に一定の準備預金を預け入れることが決められています。この準備預金の最低金額を超えて中央銀行に預けている預金を超過準備と呼び、超過準備に付く金利をマイナスにする政策です。マイナス金利だと、通常なら支払われる利息をいわば手数料として逆に徴収されることになります。金融機関は中央銀行の口座に資金を置いておくと損をするため、融資や投資に回そうとする動機が働き、実体経済にプラスに作用するとみられているほか、外国為替市場では金利収益の面から運用上の魅力が薄れ、通貨安効果が期待できるとされています。

わかりやすい用語集 解説:マイナス金利(政策)(まいなすきんり(せいさく)) | 三井住友DSアセットマネジメント

 

 

 

【参考】202515日の記事

日本銀行は2024121819日に開いた金融政策決定会合で、政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.25%で据え置くことを決定した。次の利上げ時期はいつなのか。そのタイミングをめぐってさまざまな臆測が飛び交う中、一部金融関係者の間で、ある話題に注目が集まりつつある。

日銀による「預金準備率引き上げ」の可能性だ。

日本では準備預金制度の下、金融機関が顧客から受け入れている「預金等の一定比率以上の金額」を日銀に預け入れることを義務づけている。この比率が「預金準備率」だ。

預金準備率の水準は預金区分やその残高によって異なるが、現状は各預金区分残高の0.051.3%程度となっている。この準備率を基に、日銀の当座預金に預け入れなければならない最低金額を「法定準備預金額」(または所要準備額)といい、これを超えて日銀に預け入れている金額を「超過準備額」という。

超過準備には政策金利と同じ水準の金利が付く。つまり現在は0.25%の利息が付利される202411月時点で、金融機関全体の超過準備額は約470兆円。現状のままでも金融機関は毎年約1.2兆円もの金利収益を得ることでき、仮に0.25%の追加利上げが実施されれば、さらに1.2兆円の金利収益が上乗せされることになる。

裏を返せば、追加利上げを実施するたびに、莫大な利払い負担が日銀に発生することになる。日銀の財務に与える影響も懸念される。

こうした背景のもと、政策金利が一定水準まで上がったタイミングで、日銀は預金準備率を引き上げ、付利の対象となる超過準備額の抑制を図るのではないかとの見方が浮上している

実は、預金準備率の引き上げは海外に先例がある。20244月、スイスの中央銀行であるスイス国立銀行は同年71日から預金準備率を2.5%から4%に引き上げると発表した。発表文には「法定準備預金額には利息が付かないため、SNB(スイス国立銀行)の利息コストが削減される」と記されている。

日本を含む多くの先進国で量的緩和政策が実施されたことで、今でも中央銀行の当座預金には、金融機関の莫大な余剰資金が置かれている。利上げ局面では、各国中銀が超過準備額に付利する金利を引き上げることで短期金利の上昇を図ることになるが、それによって中銀自身の利払い負担が膨らんでしまう。

そうした中、スイス中銀は預金準備率を引き上げて金利が付かない法定準備預金額の部分を拡大させることで、利払い負担の軽減を図ったわけだ。

ユーロ圏でも、経済学者や欧州議会議員らが20241月に欧州中央銀行(ECB)理事会に対し、預金準備率の引き上げを求める公開書簡を提出している。預金準備率の定めがないイギリスでも、中銀の利払い負担軽減を目的に法定準備預金額(最低準備預金制度)の導入を提案するレポートを、予算責任庁が2021年に出している。

金利上昇局面で各国中銀の利払い負担が課題となる姿が浮かび上がる。

諸外国が利下げに転じる一方で、利上げを模索し続ける日銀にとっては、今後の利払い負担が大きな懸念となりうる。

日銀は202412月末に発表した「日銀レビュー」の中で、日銀自身の財務と先行きの試算結果を示している。そこでは「市場金利が織り込む金利見通しを前提とした場合には、財務面での負の影響は限定的」とした一方で、「より厳しい仮定を置いた場合には、一定の財務リスクがある」と分析している。

日銀の財務悪化に警鐘を鳴らす日本総合研究所主席研究員の河村小百合氏は、「(預金準備率の引き上げは)諸外国ですでに議論されているトピック。財務悪化局面に突入する日銀が実施することは当然ありうる話」だと強調する。

みずほリサーチ&テクノロジーズ上席主任エコノミストの井上淳氏も、「金融政策正常化の過程で超過準備が減少するまでの過渡期的な政策として(預金準備率の引き上げは)ありうるのではないか」と指摘する。

海外有識者の中には「大規模な付利により銀行の財務が改善することで貸し出し態度が緩み、利上げによる金融政策効果が低下する」との指摘もある。より効果的な金融政策運営を行うためにも、預金準備率の水準をどう設定するのかは日銀にとって重要な課題といえる。

とはいえ、日本の準備預金制度は法律で定められたものであり、預金準備率の変更に当たっては慎重な議論が求められる。準備預金制度は1957年に導入され、1991年以来、預金準備率は変更されていない。

法律では「通貨の調節を図るため必要があると認める場合には」日銀が預金準備率を変更できるとしている。しかし、預金準備率の上限は20%と定められており、「金融機関の預け金の保有に伴う負担を考慮しなければならない」とも記されている。金融機関の収益との兼ね合いを意識する必要があるわけだ。

預金準備率を引き上げた場合、銀行は金利の付かない資金を日銀当座預金により多く置くよう「強制」されることになる。そのため国債等で運用していれば得られたであろう収益の機会損失が発生することになる。

しかし、「海外では金融機関への『棚ぼた利益』への不満から預金準備率の引き上げが要求されている」と日本総研の河村氏が指摘するとおり、むしろ金融機関が「儲けすぎている」状況に鑑みて預金準備率の引き上げが正当化されるとの見方もある。確かに、0.25%の利上げのたびに金融機関が得られる年間1.2兆円もの金利収益は、日銀に預けておくだけのノーリスクでもあることから「棚ぼた利益」といえる。

実際、日銀の当座預金(超過準備)から得られる「預け金利息」が収益を牽引している銀行は多い。政策金利が上がるにつれてその効果は高まるため、業界関係者の中には「国民の間で銀行批判が起こるのではないか」と心配する声すらある。

銀行の中には利上げによる業績影響を試算し、公表しているケースもあるが、その多くは預け金利息の増加を加味したものとなっている。そのため預金準備率が引き上げられた場合には、収益の下振れ要因になりかねない。

実際、スイス中銀が預金準備率を引き上げた際には、同国銀行最大手UBSの株価が1.5%以上も下落した。日本でも、日銀が預金準備率の見直しに動くようなことがあれば、金融機関からの猛反発が予想される。河村氏は「銀行に配慮したうえで、都銀や地銀等で差をつけながら預金準備率を変更する形もありうる」とも話す。

国民感情を踏まえつつ、金融政策の有効性を高めるためにも、預金準備率の引き上げは日銀にとって現実味のある政策といえる。政策金利の動向に注目が集まる一方で、預金準備率の行方も新たな焦点となりそうだ。

https://toyokeizai.net/articles/-/849037

 

 

 

※新発債の利率と債券市場(流通市場)で普段から取引されている利回りは異なっており、利率は償還まで変わらないが、利回りは途中売却した場合の利益・損失が含まれる。

 

【参考】

いわゆる国債の「金利」のうち、「表面利率」「利率」「クーポンレート」と「利回り」は区別する必要があります。

「表面利率」は「利率」または「クーポンレート」とも呼ばれ、利付債について半年毎に支払われる利子の大きさを表すものです。具体的には、固定利付債は額面金額に対する1年分の利子がパーセント表示で示されており、例えば額面金額100万円につき1年間に2万円(半年毎に1万円ずつ)の利子が支払われる場合、表面利率(利率、クーポンレート)は2%となります。国債の表面利率は、その国債が発行された時の市場の実勢により決定され、償還まで変わりません。

一方、「利回り」は、1年あたりの運用益をパーセント表示で示したものです。この運用益の中には、(1)1年分の利子収入(「表面利率」で表されるもの)と、(2)償還額面(又は売却価格)と購入価格の差額(1年あたりに換算したもの)が含まれています。(1)の利子収入(「表面利率」)は発行時から償還時まで変わることはありませんが、(2)の購入価格は時価ですから、国債相場の状況や購入される金融機関によって変わってきます。したがって、購入価格次第で、国債の「利回り」は変わってくることになります。

https://www.mof.go.jp/faq/jgbs/04ea.htm

 

 

 

※大規模な量的緩和政策によって黒田日銀はマネタリーベースを大きく増やしていたことがあったが、それは「じゃぶじゃぶ」にしていたのではなく、「日銀は、銀行から国債を買って、銀行が日銀に持っている当座預金を増やすが、日銀当座預金は、民間経済主体が決済や送金に用いることはできないので、マネーではない 」という話が真実であり、マネーストックを増やしていたわけではなかった。(しかしコロナショック時だけは国が借金を増やしてカネをばら撒いたため例外的に急激に増えたことがあった。)

マネーストックがあまり増えていないのであれば、世の中に出回っているカネの量は増えていない。

日銀の異次元緩和は「失敗だったことが明らかになった」と言われており、植田日銀は金融正常化を進めていくようだが、それによって「金融市場が不安定化」するのを恐れるあまり、過度のインフレになっていてもなかなか利上げをする気になれないというジレンマに陥っているらしい。

https://www.asahi.com/articles/AST1823STT18ULFA01WM.html

 

【参考】20241226日の記事

日銀の国債買い入れによる量的緩和策に関して一般には、次のように理解されていた。つまり、「日銀が国債を買うとき、日銀券を増発する。日銀券はマネーであるから、それが増発されることによって物価が上がる」

しかし、この考えは間違いだ。日銀は、銀行から国債を買って、銀行が日銀に持っている当座預金を増やすが、日銀当座預金は、民間経済主体が決済や送金に用いることはできないので、マネーではない。統計では、マネーのもとである「マネタリーベース」に分類されていて、「マネーストック」ではない。

そして、いくらマネタリーベースが増えたところで、物価を引き上げることはできない。

民間の銀行が日銀当座預金を引き出して企業への貸出金にすれば、企業が銀行に保有する預金が増える。そして、これはマネーであり(というより、マネーストックの大部分は日銀券ではなく、金融機関の預金である)、マネーは増え、また投資や消費が増えて物価が上がる。

ところが、経済成長率が高まらなかったので、企業の資金需要が増加せず、従って、銀行から企業への貸出金は増加しなかった。つまり、マネーストックは増加しなかった。マネーストックが変化しなければ、物価をはじめとする経済変数に影響は及ばない。

結局のところ、経済成長率が高まらなかったために、日銀による国債購入は物価を上昇させなかったのだ。

データを見ると、異次元金融緩和の導入によってマネタリーベースが激増したが、マネーストックにはほとんど何の影響も及ばなかった。

https://diamond.jp/articles/-/356654

 

【参考】2024110日の記事

11年に及んだ日本銀行による「異次元」の金融緩和をどう評価するのか。日銀による過去の金融緩和策の検証「多角的レビュー」を講評した有識者の一人で、マクロ経済学者の吉川洋・東京大学名誉教授は「根こそぎ間違っている」と断じ、三つの問題点を指摘した。さらに物価高が続いても利上げを急がない今の日本銀行の姿勢にも、国民との「ずれ」が生じていると主張する。 

――日銀の大規模緩和をどう評価しますか。  

私は初めから反対だったし、10年以上が経って失敗だったことが明らかになったと考えている。日銀による検証(多角的レビュー)でも、物価2%目標は達成されなかったと認めている。しかし一定の効果があったとして、副作用を考慮してもネット(差し引き)ではプラスだとしている。その結論には、全く同意できない」  

――どこが間違っていたのでしょうか。  

「何から何まで、根こそぎ間違っているっていうのが私の立場だ。問題は大きく三つある。第一に、(物価が下がり続ける)デフレが一番の問題であるという2013年の出発点の認識だ」

https://www.asahi.com/articles/AST1823STT18ULFA01WM.html

 

 

 

以下のディスカッションの中で、バブルになってしまったら金利を上げても手遅れだという意見があるが、今起きているバブルの場合、日銀が0.15%利上げしただけで円キャリートレードの巻き戻しが起きて騒ぎになったり、FRBが思われていたほど利下げしないということになっただけで株式市場も外為市場もやや強めに反応したりしているのだから、金利は今のバブルに効果があるのだろう。個人的には以下の別の意見にあるように、金利を上げることでバブルをなるべく大きくせず、バブルが崩壊したら金利を下げることでショックを和らげるという考えがスタンダードだと思える。以前、「いざというときに利下げができるバッファーを整えたい」という思惑があるのではないかという話も見たが、やはり普通に考えればそれが正しいのだろう。

https://nikkan-spa.jp/2059038

しかし、当の本人(日銀)がバブルが崩壊することを非常に恐れており、今の日本では「政治的に不人気なバブルの最中に引き締めをしてバブルを止めても政治的なペナルティを受けない」という環境にもないように思えるため、12月に利上げを見送ったように、1月も利上げしない可能性が高い。利上げは、「将来の実物資産や株式投資の予想収益率などが下がってきますから,ある程度はバブルの加熱を抑制できるでのはないか」という話にもあるように、「バブルの山をある程度削ること」になるはずだが、今の日銀は恐らくバブル抑制とバブル崩壊を同義であるような捉え方をしているのだろう。(リーマンショックの時はバブルを潰すのを嫌がっていたことでどんどんバブルが膨らんでしまったと言われている。)

最近の中央銀行がやっていることを見ていると、明らかにリスク資産を大事にしており、自らが発行する通貨を軽んじているように思える。中央銀行というのは物価の安定が本来の仕事であるはずなのに、いくらインフレになってもあまり気にしていないような雰囲気もある。FRBの場合は確かに過度のインフレになっていた時期にかなり利上げをして対処していたが、日銀の場合は日本のインフレ率が2%台であり、上振れてはいないという認識になっているらしく、インフレ対策で利上げという考えにはなっていないのだろう。

また、プロの方がレバレッジを効かせて運用するからすぐバブルになると言われているが、最近の相場はむしろ個人の方がレバレッジを効かせて無理して取引している印象を受ける。10数年前と比べれば、明らかに個人投資家が増えているのだし、それによって株式売買額もかなり増加しているため、個人が与える相場への影響は一般的に思われているよりも大きいのだろう。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250110/k10014690041000.html

Kabutanの売買動向を見ても、個人の信用取引の額が大きく、今もまだ強気でバブルに乗っているらしい。

https://kabutan.jp/news/marketnews/?b=n202501101195

 

【参考】20099月のディスカッション(一部抜粋)

むしろ金利を高めに置いて,インフレ率はインフレ・ターゲットの幅の下限を目指すぐらいの締め方にして,ある程度バブルを冷やすのが望ましいと思います.金利を引き上げても完全にバブルを止めることはできないでしょうが,バブルの山をある程度削ることは可能だと思います.小幡先生の意見では金利引き上げはむしろバブルを加速するのではないかという話ですが,私は金融をある程度締めておけば,全体としてみれば将来の実物資産や株式投資の予想収益率などが下がってきますから,ある程度はバブルの加熱を抑制できるでのはないかと思います.逆にバブルの崩壊過程では金利を低めにしてインフレ・ターゲットの上限を目指すような金融政策をすれば,バブルの崩壊のペースを緩めることができます.そこでインフレ・ターゲットの上限と下限の間の金融政策運営の自由度を用いてセカンダリーな目標, つまりバブルをなるべく大きくしないし,つぶれたら被害をなるべく小さくするといった形の政策ができるのではないかと思います

また金融政策運営にインセンティブを導入することも考えられます.中央銀行の政策委員について,政治的に不人気なバブルの最中に引き締めをしてバブルを止めても政治的なペナルティを受けないような身分保障をすることはあり得る.例えば中央銀行のトップの給与を上げると同時に,上げた部分は全部退職金に積んでおいて,退職後10年間したところで運営に問題がなければ(事後的に見て正しい行動をしていれば)支払うなど,中央銀行の幹部の報酬もそういう形で,バブルを起こさないようにするインセンティブを与えることも考え得るのではないかと思います.

https://www.esri.cao.go.jp/jp/esri/prj/sbubble/history/history_04/analysis_04_01.pdf