ドル円は202234日時点で114.64円だったが、FRBが利上げを開始したことで3月28日には125.11円まで円安が進行した。

その後もFRBは大幅な利上げをし続けたことで6月1日時点で128.63円だったが、1021日には151.96円まで一気に円安が進行した。

https://jp.investing.com/currencies/usd-jpy-chart

 

FRBは2022年の6月から11月までの会合で0.75%の利上げを4回連続で行い、半年で3%も一気に金利が上昇しているが、その後も利上げ幅を縮小しながらも金利上昇は続いていた。

これによって日米金利差が急拡大し、円キャリートレードが盛んになった。

 

円キャリートレードが大人気になったことでドル円の上昇は止まらなくなり、その規模は20兆ドル(3000兆円)程度にまで膨らんだと言われている。

最近は円キャリートレードの巻き戻しがかなり進んだと一部で言われているが、実際にはそれはFXの円売りポジションの解消のことを言っているらしく、円キャリートレードの巻き戻しが本格化しているわけではないはず。

 

(・追記 本当に円キャリートレードの巻き戻しがかなり進んだのであれば、アメリカの株式と債券が大きく売られ、ドルを売って円を買い、日本の銀行に資金を返済する動きが出ているはずだが、恐らくそのようにはなっていない。現時点で日本の政策金利は0.25%であり、アメリカは5.5%もあるのだから、日米金利差はまだ5%以上も開いている。これが来月からどんどん縮小していくため、円キャリートレードの巻き戻しは来月以後、本格的に始まるはず。 2024/08/12)

 

今後、FRBは利下げをするのではないかと言われており、202412月にFF金利は4.6%、2025年12月に3.6~3.9%、2026年12月に2.9~3.1%になることが予想されている。

(現在のFF金利は5.5%) 

【遂に利下げか!】 住宅ローン商業用不動産への大きな金利影響 - Youtube

 

しかし、一部では8月と9月に0.75%の利下げをするべきだという意見もあり、実際に利下げが開始されてから2024年末までにどの程度金利が下がっているのかはよく分からない。

まず75bpの緊急米利下げ、9月に同幅で追加利下げを-シーゲル教授 - Bloomberg

 

ドル円については日米の金融政策だけが要因で動くわけではないため、何らかの理由で円キャリートレードの巻き戻しが本格化したり、イレギュラーな出来事が起きたりすれば、それも円高方向に動かすことになる。

ドル円のチャートを見ると、先月と今月の動きは言われているほど急激な円高方向への動きだったとは思えず、むしろこれまでの円安方向への動きの方が余程急激だったように思える。

直近の動きは141円台まで円高方向に動いたが、「内田発言」によって一気に147円台まで円安になっている。

これは少なくとも9月に日銀が利上げすることはないことを織り込む動きだったのだろう。

しかし、この発言によって円キャリートレードが再開したとも言われているため、もしそれが事実なのであれば、致命的な過ちを犯した可能性がある。

 

JBPressの記事では

円キャリートレードは20兆ドルの巨額にのぼり、日銀が利上げを進めた場合、予期せぬリスクをもたらす恐れがあると警告していた。政府の円弱是正圧力に屈した形の植田日銀はその衝撃を想定していなかったのだろうか。

と書かれているが、日銀が超低金利政策を続けていたことで円が主要な資金調達通貨となり、エブリシングバブルになっていたのだから、いつまでも金利のない世界を続けてバブルを拡大し続ける方が破滅するのではないかと思える。

「日本の銀行は3月時点で外国人借り手に約1兆ドルを円で貸し付けており、21年から21%増加している」と言われているが、このままバブル継続をするのであれば、日本で金融危機が起きてもおかしくないのかもしれない。

 

 

【参考】2024年21日の記事

FRBが利上げを開始したのは20223
それまでのゼロ金利政策を解除して金融引き締めへと転換します。
金融引き締めによって景気を冷やすことでインフレを抑えこむねらいでした。
しかし、その後もインフレに収束の兆しは見えず、20226月の消費者物価指数は前の年の同じ月と比べて9.1%の上昇と、およそ40年ぶりの記録的な水準となりました。
このためFRB20226月から11月の会合まで4回連続で0.75%という大幅な利上げに踏み切りました
その後発表された消費者物価指数は上昇率が前の月を下回る傾向が続いたことなどから、FRB202212月と、2023131日と21日に開いた会合で、相次いで利上げ幅を縮小します。
しかし、これまでの急速な利上げの影響を受けて20233月から5月にかけては「シリコンバレーバンク」や「ファースト・リパブリック・バンク」など3つの銀行が経営破綻しました。
銀行が保有していた債券の価格が大きく下落したため売却を迫られて多額の損失を抱え経営への懸念が高まったことが要因でした。
こうした中でもFRBはインフレ抑制を優先にする姿勢を示し、20233月と5月にそれぞれ0.25%の利上げを決定
20223月以降、利上げは10回連続となりました。
6月の会合では急速な利上げなどそれまでの金融政策の影響を評価するためなどとして利上げを見送りました。
利上げの見送りは20223月以降初めてでした。
一方、20237月の会合では、インフレの要因である人手不足が続いていることなどから0.25%の利上げを決定。
政策金利は5.25%から5.5%の幅と、2001年以来22年ぶりの高い水準となりました。
FRBの利上げはこれで20223月以降、あわせて11回に及びました。
その後、20239月から12月の会合では物価の上昇が落ち着き、インフレの要因となっていた人手不足に改善の兆しが見られることなどから3会合連続で利上げを見送っており、市場では利上げ局面は終了したとの見方が強まっていました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240201/k10014342571000.html

 

【参考】

海外の金融当局が利下げを実施した場合、海外資産で運用利回りを上げることが難しくなることから、円キャリー取引を行っている投資家は、運用していた海外資産を売却して得た外貨を円に替えて返済することになります。これは円高要因となります。

円キャリー取引は、日本の超低金利により内外の金利差が拡大したことから、海外のヘッジファンドを中心に近年盛んに行われるようになりました。その後は、海外で利下げがあるたび円キャリー取引解消のための「巻き戻し」と呼ばれる円買いで急激な円高が何度か起きています。また、近年では円キャリー取引を行う投資家の動向が為替相場の方向性を予測する上でも注目されるようになっています。

円キャリー取引 - SMBC日興証券

 

【参考】

世界情勢が緊迫すると、多くの投資家はリスクを低減するために持ち高を手仕舞います。

「キャリートレード」も例外ではなく、“投資していた株や債券などを売る→代金として受け取った高金利通貨を売る→円を買う→日本の金融機関に資金を返済する”という動きが活発になるのです。
円安でも「円は安全通貨」世界が認める歴史的背景 アメリカドル・スイスフランに並ぶ納得の理由 - 東洋経済

 

【参考】20248月8日の記事

国際決済銀行(BIS)データでは、日本の銀行は3月時点で外国人借り手に約1兆ドルを円で貸し付けており、21年から21%増加しているという(米紙ウォールストリート・ジャーナル)。

米投資週刊誌バロンズは「円キャリートレードの巻き戻しが市場にもたらす究極のリスクはその規模である。グローバルな取引であるため、その規模を知る術はない」という。

ドイツ銀行のアナリストは昨年11月、円キャリートレードは20兆ドルの巨額にのぼり、日銀が利上げを進めた場合、予期せぬリスクをもたらす恐れがあると警告していた。政府の円弱是正圧力に屈した形の植田日銀はその衝撃を想定していなかったのだろうか。

乱高下する株式市場、ウォール街「最後の弱気派」の予言は的中するか - JBPress

 

【参考】20231214日の記事

日本の異常低金利と量的緩和が世界のエブリシングバブルを支えている。そしてドル/円の上昇はエブリシングバブルの象徴である。円売りのゲームに参加しているのは日本の個人投資家だけではない。日銀が異常低金利を続ける中、円は調達通貨となり、20兆ドルのキャリートレードが行われているという。

経済学者のルートヴィヒ・フォン・ミーゼスは、「中央銀行の刺激策で上昇したものは、インフレや弱気相場にかかわらず、必ず下落する。それは時間の問題であり、どれだけ(下落が)深刻なのかという問題である」と語った。

「信用拡大でもたらされた好景気は、結局のところ崩壊するのを避ける手段がない。残された選択肢は、さらなる信用拡大を自ら断念した結果、すぐに訪れる危機か、ツケを積み上げた結果、いずれ訪れる通貨制度を巻き込んだ大惨事かだけである

https://media.rakuten-sec.net/articles/-/43587

 

【参考】202489日の記事

日銀の内田真一副総裁は7日、内外の「金融資本市場が不安定な状況」に言及し、「当面、 金融緩和をしっかりと続ける必要がある」と発言した。このシグナルは、世界的な株安の不安への対応を意識した面もあると思われるが、リスクオンを後押しと市場は受け止めた。ヘッジファンドや他の「ファストマネー」が、円を資金調達手段とする新たなキャリートレードに押し寄せたとブルームバーグは伝えた。円は2%急落した。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-08-08/SHVFAYT1UM0W00

 

【参考】2024810日の記事

日銀出身で楽天証券経済研究所の愛宕伸康チーフエコノミストによれば、市場混乱に対する日銀の対応が、日銀の課題をさらに難しくさせてしまった可能性がある。政策の判断材料として内田副総裁が市場環境に言及したことにより、これまでのデータに基づく日銀のコミュニケーション手法から逸脱してしまったという。

愛宕氏は、「金融政策の言語はスピーチではなく、まずはデータということ。それを日銀ははき違えていると思う」と語った。

内田氏の発言は、日銀の政策の優先順位を曖昧にしてしまう結果を招いた。

黒田東彦前総裁の下で審議委員を務め、大規模金融緩和に一貫して異を唱えた野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、市場の混乱について、「むしろもっと早く正常化していれば、こんなことにはならなかった」と指摘。利上げが遅れたから、「円安・株高が行き過ぎたのではないか」との見立てだ。

「異次元緩和が長く続いたため、いろいろな金融市場のポジションがたまっている」とし、「行き過ぎが大きければ大きいほど、暴力的に調整は起こりやすい」と語った。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-08-10/SHZ75QT0AFB400

 

【参考】2024811日の記事

リーガル・アンド・ジェネラル・インベストメント・マネジメントのストラテジスト、ベン・ベネット氏は今回の暴落を経ても日本株にはまだ多くの買いポジションがたまっているとみており、弱気スタンスを変えるつもりはない。

ベネット氏は「たった数日間激しい相場展開になっただけで、ポジションがニュートラルになるとは考えにくい」とし、「それどころか、下がった局面でさらに買い増しているのではないか」と述べた。

もっとも、オプション市場では日経平均コール(買う権利)の建玉の伸びがプット(売る権利)を上回り、プットの売買代金をコールの代金で割ったプット・コールレシオは8月に入り6年半ぶりの低水準を付けた。これらはいずれも、今後相場が上昇すると読む強気派の多さを表している。

CLSA証券ストラテジストのニコラス・スミス氏は、市場の一部にある日銀の金融引き締め姿勢が株安要因との懸念は「杞憂(きゆう)だ」と一蹴。低金利が円安を生み、消費者の生活防衛につながっていたため、「日銀は正しいことをした」とみる。利上げは日本経済が何十年も続いたデフレのトンネルから抜けようとしている自信の表れで、「歓迎すべきことだ」という。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-08-11/SHXTSDT0G1KW00