最近のドル円はFRBの利下げを織り込む形で円買いに動いているのかと思っていたが、実際には日銀の利上げを期待しての円買いになっていたらしい。
「日本銀行による今週のタカ派的な決定への期待によって最近の円高がもたらされている。もし日銀が期待を裏切れば、この上昇の大半はすぐに反転するだろう」と一部で言われているが、日銀が今回の会合で利上げを見送り、年内の追加利上げにも慎重姿勢を示せば、当然一気に円安が進行し、やはり日銀は円安を容認しているという姿勢を明確にしたことになる。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-07-29/SHD63XT0G1KW00
個人的には日銀は国債買い入れ減額の規模を市場予想通りにし、利上げはしばらくやらないのだと思っていたが、一部では今回の会合で利上げするだろうという予想も出ている。
日銀総裁自身もこのように発言している。
植田和男総裁は、同時決定も「十分あり得る」と発言している。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-07-23/SH1Z8YT1UM0W00
確かに「為替が金融政策の目標ではない」ということになっているが、「それは金融政策が為替に影響を与えないことを意味しない」と言われているように、実際には為替と金融政策は密接な関係にあり、中央銀行が自らの政策決定で為替がどう動くのかを全く意識していないはずはない。
https://toyokeizai.net/articles/-/784228?page=2
そのため、日銀は自国通貨の暴落を望んでいないのであれば、利上げを見送ることでどこまで続くか分からない円安になってしまうのを阻止する動きに出てもおかしくない。
日銀内でも過度な円安によって物価が望まない形で上昇し、国内消費が低迷しているという考えが一部で出ているらしい。
金融政策によってある程度の円高になってもインフレターゲット2%が維持されるという考えがそろそろ出てきているのかもしれない。
実際、円高になったからといって、また値下げ競争になるような状況ではないようにも思える。
そもそもインフレターゲットというのは、FRBのように、「インフレ率が高くなりすぎることを防止し、目標値まで下げるよう誘導する」金融政策であり、日本の場合はその逆のことをしているため、インフレになり過ぎてしまった場合は政策の失敗になる。
既に2年以上2%を超えている状況が続いており、6月にはコアインフレ率が2.6%に達している。
日本がデフレから脱却しているようであれば2013年から続いている異次元緩和は正常化するべき段階に入っている。
実際、今の日本は量的・質的金融緩和、ETF購入、マイナス金利、イールドカーブ・コントロールのうち、「量的・質的金融緩和」以外は全て終了させている。
今月の会合では量的・質的金融緩和に当たる「長期国債を大量に購入してマネタリーベースを年間で60兆~70兆円ペースで増やす」政策を終了させ、国債買い入れ額を大幅に減額することになっている。
https://mainichi.jp/articles/20240312/k00/00m/020/129000c
https://ja.wikipedia.org/wiki/インフレターゲット
日銀はデフレ脱却を目的に異次元緩和を始めたはずであり、通貨安誘導政策をしていたわけではないはず。(ETFの大量購入がデフレ脱却とどう関係があるのかについてはよく分からない)
しかし、実態としては異次元緩和が始まると円安は進行し、2012年には1ドル76円だったが、2024年には161円まで円は暴落した。(実際には異次元緩和が始まる2013年4月より少し前からなぜかドル円は上昇しているため、インサイダー取引があったのだろう)
円の暴落と同時に日経平均株価は暴騰し、2012年に8500円ぐらいだったが、2024年には42426円になった。
円安になるとごく一部の企業業績は改善し、海外からの資金流入も増え、日経平均株価は上昇しやすくなる。(最近の暴騰は「貯蓄から投資へ」によって証券会社が巨額資金を確保したことが主因なのだろう)
そして日銀自身がETFを大量購入していたことで巨額の含み益になっている。
しかしその含み益の数字は全てが実現できるわけではなく、このまま保有していれば何らかの重大な問題が発生してかなり減ってしまうことも考えられるし、処分するにしても個人投資家のように全て利益確定することが容易にできるわけでもない。
保有し続ける場合は毎年1兆円以上の分配金が入ってくるが、これも企業業績が悪化するのであれば減っていく。
中央銀行が大量に自国株式を保有することは株式市場に有利になるような金融政策をし続けることになり、これは正常とは言えないように思える。
日銀がこれまでにやってきたことと、株価と為替の動きを見れば、日銀は金融政策によって通貨安誘導と株高誘導をしていたことになる。
7月に日銀が利上げをしなくても、9月にFRBが利下げするのと同時に日銀が利上げをすれば「効果的」という記事もある。
しかし、そもそも日銀が年内に追加利上げすることは想定済みであるため、サプライズ性があるわけではないようにも思え、7月や9月ぐらいに利上げするのだとしても一部で言われているように、「日銀が何を言っても不十分で遅過ぎる可能性が高く、キャリートレードの需要は円ショートを促す」という反応になることも、もしかしたらあるのかもしれない。
しかし、最新の調査では「日銀が7月末の金融政策決定会合で利上げを見送るとの予想は74%だった」という情報もあり、利上げした場合にサプライズ性があるのかないのかよく分からない。
FRBが9月以降に利下げすることも想定済みではあるが、日銀の利上げとFRBの利下げでどの程度まで日米金利差が縮小するのかが重要であり、日銀の方はそれほど大幅な利上げはできないため、アメリカ経済がリセッションに陥り、FRBが大幅に利下げし続けることにでもならない限り、まだまだ円キャリートレードが続く可能性がある。
常識的に考えれば、日米金利差が縮小していくことは事実なのだし、アメリカ経済が政府や主要メディアが伝えているほどに好調であるとは思えないため、FRBは予想通りに利下げするはずであり、円キャリートレードの巻き戻しはそれなりの規模で起きるはずだが、最近は常識が通じない相場になっているため、過度の楽観的な投資姿勢によってバブルがどんどん膨らんでいくことも十分考えられる。
【参考】2024年7月26日の記事
マネックスグループの松本大会長は26日の決算会見で、最近の外国為替市場での急激なドル安・円高について、日米金利差の縮小を意識した動きであるとの認識を示した。松本氏は日本銀行の金融政策について「日銀は金利を上げるだろう。きょう出た東京のCPIも強い」などと述べた。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-07-26/SH7Z7RT0G1KX00
【参考】2024年7月29日の記事
もともと日銀は経済・物価見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇すれば金融緩和度合いを調整していくとしている。関係者によると、今会合で議論する新たな経済・物価情勢の展望(展望リポート)では、見通し期間の最終年度に当たる2026年度の物価が2%付近になるとの見方が維持される公算が大きい。追加利上げの条件は整いつつある。
植田和男総裁は6月会合後の記者会見で、7月会合で利上げする可能性について「その時までに出てくる経済・物価情勢に関するデータないし情報次第で、短期金利を引き上げて金融緩和度合いを調整することは当然あり得る」と発言した。今会合で利上げが見送られても、タイミングが近づいていることが示唆される可能性がある。
みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケットエコノミストは、足元の円相場が円高方向に振れていることを踏まえ、日銀が利上げをしても為替レートとは無関係と説明できるため、利上げの絶好のタイミングだと指摘。今会合について「利上げがあるとみている。大きな円安トレンドからの転換点になる可能性はある」とみている。
一方、日銀が重視する基調的な物価上昇率が2%を下回っているとみられる中、利上げを急ぐ必要性も乏しい。次の利上げは現在0.1%程度の政策金利を0.25%程度に引き上げる小幅なものにとどまるとみられるが、短期プライムレート引き上げで変動型住宅ローン金利などに影響する可能性がある。賃金と物価の好循環の実現に不可欠な個人消費の持ち直しを確認してからでも、利上げは遅くないとの判断もあり得る。
日銀出身で岡三証券・チーフエコノミストの中山興氏は、今会合での追加利上げについて「日銀にとって難しい判断だ」と指摘する。「急ぐ必要がない中で利上げした場合は、正常化への強い意志を明確に示すことになる」という。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-07-28/SH7SH4T0G1KW00
【参考】2024年7月26日の記事
四半世紀にわたって日本の通貨を売買しているATFXグローバル・マーケッツのニック・トウィデール氏は「クレイジーな円高だ」と述べ、「日銀が政策引き締めの役割を果たさずパーティーを台無しにする可能性がある」と指摘。そうなれば、円安要因となるキャリートレードが「大々的に復活するかもしれない」と語った。
ナショナルオーストラリア銀行のロドリゴ・カトリル氏は、日銀が「完全な仕事をしない」場合、円相場は対ドルで158円台まで下落する可能性があると言う。
日銀が今週、金融引き締めを実施したとしても、日本の超低金利を生かして調達した円をより利回りの高い他通貨に投じるキャリートレードを継続する理由はある。日銀が利上げしても、円のインプライド利回りは、もう一つのキャリートレード資金調達通貨であるスイス・フランより約90bp低い水準にとどまるからだ。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-07-26/SH7FSYT0AFB400
【参考】2024年7月24日の記事
国債買い入れの減額計画との同時決定が利上げのハードルを上げているとの見方も少なくない。減額計画の決定が利上げの可能性を低下させたと思うかとの問いには、「はい」と「いいえ」が41%で並んだ。植田和男総裁は、同時決定も「十分あり得る」と発言している。
今後1-2年程度の国債買い入れの減額計画について、植田総裁は6月会合後の記者会見で、「 減額する以上、相応の規模となる」と明言。日銀は減額計画の策定に資するため、債券市場参加者からも意見を聴取し、議事要旨も公表している。 減額の幅とペースに関するエコノミストの中心的な予想は、減額計画の決定直後に現在、月間6兆円の買い入れ額を5兆円に減額し、その後は四半期ごとに購入を縮小して2年後に月間3兆円まで圧縮するというものだ。複数の関係者によると、2年後に月間3兆円程度に縮小されるとの見方が市場の一つの目安になっていることを、日銀も認識しているという。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-07-23/SH1Z8YT1UM0W00
【参考】2024年7月26日の記事
2%目標実現の確度が高まれば緩和度を小さくする方向で調整するとして、高圧経済戦略は採らないという宣言だ。 事実、3月の政策正常化を決めた声明文や4月会合の声明文で見られた「当面、緩和的な金融環境が継続する」という表現は、6月には声明文からも記者会見発言からも審議委員の意見を取りまとめた「主な意見」からもなくなっている。
市場には「日銀は利上げに慎重で緩和的な金融環境が続く」という見方が浸透している。
確かに、個人消費は弱めであり、需給ギャップもようやくゼロに戻ったという点を捉えれば利上げが必然とはいえない。また、7月会合はQT(国債買い入れ減額)のプランを発表するため、利上げはその市場の反応を消化してからという点も理解できる。さらに、9月のFRBが利下げするなら同時に日銀が利上げを行うほうが効果的という判断もあるだろう。
一方で、円安に伴い輸入物価の上昇は続き、エネルギー価格も高止まりしている。また、食料品など今後も値上げラッシュが続き、企業の価格設定は強気化している。インフレの上振れリスクがあるならばリスクマネジメントの観点から7月の0.25%への利上げは十分に正当化できる環境にあると考える。
市場は「7月利上げなし」がコンセンサスになっているが、利上げ確率を過小評価しないほうがよいと筆者は考える。
仮に7月に利上げがなくても「インフレの上振れリスクがあるなかでリスクマネジメントの観点から利上げは正当化できる」といった9月利上げを示唆する踏み込んだメッセージで高圧経済の考え方から完全脱却したことを印象付けようとするのではないか。
逆に万が一「当面、緩和的な金融環境が継続する」といった表現が復活すれば、さらなる円安の引き金を引くことになるだろう。
https://toyokeizai.net/articles/-/784228?page=4
【参考】2024年7月29日の記事
(ロイター)東京、7月29日 – 日本銀行は、消費者行動の大きな変化を踏まえ、過去の政策を大幅に見直し、デフレとの長い戦いに勝利したと主張し、着実な金利引き上げの時代に向けた準備を進めていると、関係者やアナリストらが伝えている。
日銀の考え方に詳しい2人の関係筋は、今回の見直しは、現在のほぼゼロの金利が着実に上昇しても日本経済が影響を吸収できるという主張を日銀が行う上で役立つだろうと語った。
「重要なメッセージは、日本のデフレの基準が変わったということだ」と関係者の一人は語った。
「本質的には、日本は金利上昇の準備ができていると言っているのだ」
2013年に黒田総裁が実施した「バズーカ」型景気刺激策の下、日銀は大量の紙幣を刷って国民をデフレ思考から脱却させ、約2年で2%のインフレ目標を達成することを目指した。
数十年にわたりほぼ横ばいまたはマイナス成長を経験してきたコアインフレ率は、現在、日銀の目標である2%を2年以上上回り、6月には2.6%に達した。
企業が賃金上昇率ゼロで労働者を雇用できた時代は過ぎ去った。急速な高齢化による労働力不足の深刻化に直面し、日本企業は今年、過去30年間で最大の賃上げを実施した。
第一生命経済研究所の主任エコノミスト、新家芳樹氏は「企業にとって価格引き上げがかなり容易になった。この傾向が続くかどうかは消費の強さ次第だ」と語った。
この調査では、過去の景気刺激策の副作用にも光を当てている。日銀は、調査の一環として行われたいくつかの調査で、長期にわたる低金利が利ざやを圧迫し、過去25年間で金融機関の収益性が急激に低下したと指摘した。
【参考】2024年4月26日の記事
日銀は3月にマイナス金利政策の解除に踏み切ったものの、政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標は0〜0.1%程度と低いままだ。金利差が開いたままでは円安・ドル高がさらに加速する可能性もあり、それが日銀の政策決定に間接的に大きな影響を及ぼしうる。
BNPパリバ証券の河野龍太郎氏は9月ごろを次の利上げ時期とみているが、円安が続けば「完全雇用のもとで人件費の増加や輸入物価の上昇を転嫁する動きが加速する」として「6、7月にも利上げ前倒し」の可能性があると指摘する。野村総研の木内氏は早期利上げの場合「為替で動いたと市場に受け止められないよう、物価や賃金のデータを見て動く形を取るだろう」と指摘する。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB255FF0V20C24A4000000/
【参考】2024年7月29日の記事
QUICKが29日に公表した7月の債券月次調査で、日銀が7月末の金融政策決定会合で利上げを見送るとの予想は74%だった。国債買い入れの減額計画の公表と利上げを同時に実施するのが難しいとの見方に加え、足元で円安基調が一服していることも利上げ観測を後退させている。 調査は7月23〜25日に証券会社や生損保、銀行などの181人の債券市場関係者を対象に実施し、123人から回答を得た。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB292ZZ0Z20C24A7000000/
【参考】2024年5月28日の記事
日本の金利が上昇しても低迷する円相場の支えにはほとんどならないだろうと、トレーダーらはみている。外国為替取引の中で最もリターンの大きい取引の一つへの需要がなくならないためだ。
円は、いわゆるキャリートレードの一環として売られるマクロ資産の一つであり続けている。ほとんどゼロの金利で借りた円で高金利のドルを買い入れ、5%を超えるリターンを得るという戦略だ。
円安・ドル高によってキャリートレードの魅力は増しており、過去1年間のトータルリターンは18%に達している。
「人々はキャリーに夢中だ。 仮に6月に日銀が利上げをしたとしても、キャリー取引はなくならないため、市場は円ロングに非常に消極的だろう」と野村インターナショナルのG10スポットトレーディング責任者アントニー・フォスター氏(ロンドン在勤)は述べた。
同社によれば、日銀は6月に政策金利を小幅に引き上げた後、年内にさらに利上げする。
円相場は1ドル=157円付近となっている。スワップ市場ではすでに、今年中に日銀がさらに27ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利上げをすると織り込んでおり、早ければ7月にも10bpの利上げが実施される確率は90%となっている。
しかし、トレーダーがすでに利上げを想定しているため、日銀が来月、タカ派的なシグナルを発したとしても、円安を止めるには不十分かもしれない。
ストーンXファイナンシャルの為替トレーダー、呉明賾氏(シンガポール在勤)は「市場の勢いに照らして、日銀が何を言っても不十分で遅過ぎる可能性が高く、キャリートレードの需要は円ショートを促す」との見方を示し、「ドル・円のリスクは介入前水準へのドル高へと傾いている」と話した。
「植田総裁と財務省は、これ以上の介入が必要ないことを望んでいるだろうが、日本の経済データが軟調である限り、また米国のデータが底堅さを示すものである限り、これは保証できない」と同氏は述べた。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-05-28/SE6660T1UM0W00
【参考】2024年3月28日の記事
この人工的な円安が継続するかぎり日本株や日本の不動産は上昇する傾向にある。現在、1980年代後半のような資産バブルが起きつつある。
しかし、この物語には、「低金利と円安によって日本の資産バブルがこのまま進めば、貧富の差が社会問題となり、日銀は予想外の大幅な利上げに追い込まれる」という落とし穴がある。資産バブルに続いて、最悪の経済的結果が生じる傾向があることを頭に入れておくべきだろう。
https://media.rakuten-sec.net/articles/-/44705?page=2