最近は円安が異常に進行しているが、これは円キャリートレードを行っている者が米国債などの取引するために金利がほとんど掛からない日本で借金をして資金調達し、その後、日本円を売って米ドルを買っていることもいくらか円安に寄与しているらしい。

 

【参考】2023年11月17日
金利差に着目した円キャリートレードが増加しているという説もある。確かに2年前まで日本以下のマイナス金利であったドイツなど欧州金利が急上昇し、日本円の調達通貨としての魅力は高まっている。
しかし、キャリートレードは円高になれば大幅な為替損を生む。1ドル=150円の時に1ドル借金し1ドル=100円という円高の下で返済するとすれば、150円返すためには1.5ドルが必要になる。ドル円が151円という1990年以来の33年ぶりの円安になっている時に、更なる円安に人々は賭けているのであろうか。だとすれば、それは著しいギャンブルと言える
そもそもここ数週間、日米金利差が縮小しているのに円安が進行している。また、対米ドルどころかほぼ全通貨に対して円安が進行している。利下げをしている中国人民元や、タカ派姿勢を後退させている韓国ウォンに対してさえ円が安くなっているのである。
円安を享受せよ 投稿日時: 2023/11/17 13:50[みんかぶ株式コラム] - みんかぶ(旧みんなの株式) (minkabu.jp)

 

【参考】

円キャリートレードとは、相対的に金利が低い円建てで資金を借り入れ、その資金を外貨に転換して運用する取引のことです。外貨に転換した後に向かう先は、外国債券や外国株式、原油などの商品先物、海外不動産、ヘッジファンドなど、借り入れた投資家の運用手法によって多種多様です。
円キャリートレード(円借り取引) - 大和アセットマネジメント

 

【参考】

円キャリートレードは、機関投資家・ヘッジファンド等が低金利の円などの通貨で資金調達し、それをドルに換えて、金利の高い米国債等で運用し、金利差収入を獲得する。
円キャリートレード - 野村證券

 

 

しかし、実際にはそれよりも投機によるラリーで急激に円安が進んでいる面が大きいのだから、これも近い内に反転することになる。

きっかけがあってのことなのか、自然にそうなるのかは分からない。

いくらなんでも1ドル=160円台であれば異常な水準であると誰でも分かりそうなものだし、さすがにそこまで行けば財務省も介入に動く可能性が高いため、実際には160円の手前で投機がドル円を売るようになり、勝手に円高になっていくことも十分考えられる。
150円台というのは水準としても「歴史的円安」と言われているが、国内経済を考える上でも内需にダメージがあると誰もが思っている。

「157円を超える円安になれば、輸入コストの上昇が賃上げを相殺し、実質賃金がプラスに転じることは難しくなる」とも言われており、さらに、円安でも株高にはならない動きが出てきている。

2022年以降、円は対ドルで24%下落。主要20カ国・地域(G20)通貨の中では高インフレに悩むトルコとアルゼンチンを除けば、最弱だ」とのことだが、常識的にはこの急激な円安は異常としか言いようがない。

 

【参考】2024年4月24日の記事

152円超える円安は日本株のマイナス要因になる可能性-JPモルガン

みずほ証券の倉持靖彦マーケットストラテジストは、円安によるコスト増が内需の回復を削いでしまうリスクがあると指摘。小売株については「値上げの効果も一巡してくる。個人の節約志向が強まらないか見極めたい」と言う。
円安好き日本株の変節、慢性化でデメリット警戒-コスト増す内需打撃 - Bloomberg

 

 

NRIによれば、以下のようにあまりにもドル高になってしまうとアメリカ経済と世界経済に大打撃になると解説している。

最近のアメリカ政府やFRBは急激な利上げによるドル高をインフレ抑制になるということで歓迎するべきものと捉えているようだが、このままドル高を放置するとアメリカ国内からの不満も高まっていくため、そういった実体経済の都合から勝手に円高・ドル安方向に動く可能性もある。

「アメリカ経済は好調」「アメリカ経済は底堅い」などと言われているが、実態としては借金をしまくって無理して消費しているらしく、そんなことを続けていけば必ず崩壊することになる。(自動車ローンとクレジットカードローンは約3割がサブプライムという話があり、それらは借りたカネを返せない人達なのだから、これから金融機関はそれらの焦げ付きでダメージを受ける可能性が高い。)

 

【参考】2022年9月21日の記事

第1に、新興国に大きな打撃となる。新興国から米国への資金の巻き戻しを加速させ、株価下落、長期金利上昇を通じて新興国経済に大きな打撃を与える。

第2に、ドルの上昇は、米国の国際競争力を低下させ、輸出の逆風となる。米国経済は、物価高、利上げ、ドル高の3つの逆風に晒されるのである。

第3に、このようにドル高が進むほど、対外収支の悪化や景気悪化を通じてドルの信認は揺らぐことになる。そうなると、さらなるドル高への懸念よりも、行き過ぎたドル高の反動でドルがいつか大きく暴落することを、米国と他国は警戒し始めるだろう。

歴史的円安・ドル高はどのようにして終わるか:プラザ合意Ⅱの可能性も - NRI

 

【参考】2024年2月7日の記事
ニューヨーク連銀が6日発表したアメリカの2023年10月から12月期の家計債務残高は過去最大の17兆5,000億ドル=およそ2,500兆円でした。クレジットカードのローン残高は3四半期連続で1兆ドルを超えました。また、90日以上の深刻なカードローン延滞率は6.36%と2011年以来の高い水準となりました。

米家計債務残高 クレカ延滞率が高水準|テレ東BIZ(テレビ東京ビジネスオンデマンド) (tv-tokyo.co.jp)

 

【参考】2024年4月20日の動画

自動車ローンに関しては現時点で13%の割合の人がサブプライムローンで、ニアプライムと呼ばれるサブプライムまでとは行かなくともまあまあスコアの悪いグループの人も含めると30%近くの割合の人が自動車ローンを保有していました。

ウォレットハブというところによると、3割近いクレジットカードの負債がこのサブプライム層によるものになるということでした。

【全体の2割がサブプライム!】急増しているサブプライム負債者 (youtube.com)

 

【参考】2023年7月19日の記事

FRBの利上げに伴い、各種ローン金利は急上昇しており、クレジットカードは2023年2Qで20.68%、自動車ローンも同7.59%となり金利負担がジワリと効いてくるはずだ。

アメリカの消費者の“安心感”を支える家計純資産の動向 ~富の偏りが大きいなか金利上昇、学生ローン返済復活でセンチメント悪化に注意~ - 第一生命経済研究所

 

【参考】2024年3月6日の記事

ニューヨーク連銀が先月発表したところによると、米国全体の返済延滞件数はコロナ禍前を下回っているが、クレジットカードや自動車ローンの延滞件数は、若年層の借り手も含めて増加している。さらに債務負担には偏りがあるようだ。所得の低い世帯や裕福でない世帯は一般的に、最も金利負担の大きい種類の借り入れに依存している。

クレジットカードなど米家計債務の金利負担、住宅ローンに匹敵 - Bloomberg

 

 

 

ドル円に関してはショートが過去最高を更新しており、何らかの理由で円高方向になるのであれば狂気的なラリーを今も楽しんでいる投機筋や個人は巨額の損失を出すことになるため、かなりのリスクを取って短期的な利益を狙っていることになる。

円ショートが過去最高を更新、日銀会合前の23日時点-CFTC - Bloomberg

 

日米金利差を収益源にしたいキャリー取引によって円安を促す効果はあるが、ドル円の上昇(円安)が円キャリートレードを促す効果があるのかというと、どうやら促す効果があるらしい。

なぜかというと、「キャリートレードは円高になれば大幅な為替損を生む」ため、円キャリートレードを続けるのであれば、ドル円が上昇を続ける方が都合が良くなる。

逆にドル円が下落し続けると金利の掛からない日本で借金をして資金を調達していた者は返済時に為替差損が生じてしまうことになる。(つまり、円キャリートレードはタダでうまみのあることをしているのではなく、ドル円の上昇も続かなければならず、いくら金利差で儲けても為替差で大損すれば何にもならない。そういうリスクを取っている。)

恐らく、近いうちに何らかの理由で円キャリートレードの巻き戻しがあり、かなり円高になる場面があるが、自主的にこの円安ラリー相場を終わらせない場合は円キャリートレードや円安ラリーに乗っている者は大変な損失を出すことになる。

しかしそれも「著しいギャンブル」をしているだけなのだから、それで儲けようが損しようが自己責任でしかない。

 

 

※「円キャリートレードは、株式市場が暴落すれば最終的には涙をのむことになる」と言われているが、もし、「だから暴落させちゃいけないの。必死になって買い支えないといけないの。」と思って大金を使って株価を買い支えると、その相場操縦を行っている者が原因で大暴落することになる。なぜかというと、今後、経済状況が悪化していく中で高値圏で買い支えなどしてしまったら、取得平均が高い状態でどんどんロングポジションを巨大化させることになり、少しでも下がっただけで大変な含み損を抱えることになる。そして買い支える資金が枯渇した時、一気にロスカットせざるを得ない事態になり、それがセリングクライマックスに貢献することになる。結局、ファンダメンタルズを無視して投機が逆方向に動かしていてもそれが長く続くということはなく、株式や外為市場などで資金を投じてどんどんポジションを拡大してしまうと後でとんでもないことになる。「素直に流れについていけばいい」とよく言われているが、崖から突き落とされることになっても構わないというならそうすればいいのだろう。

 

【参考】2023年12月14日の記事
日本の量的緩和政策は<国民の預金を連帯保証人とするインフレ政策>である。破滅的なアベノミクス政策は、円安によって企業収益を上げ、その恩恵が家計に還元されるのを待つことが目的であった。
しかし、トリクルダウンはいっこうに起こらず、国民の有意義な賃金上昇をもたらすという点では大失敗であった。この失敗したMMT(現代貨幣理論)実験もゆっくりと終わりに近づいているようだ。
米国市場は劇的にハト派志向を強め、来年の利下げ幅は1.25%と見込まれている。米国の利下げと日本の利上げが2024年に行われたらどうなるだろうか?
日本の異常低金利と量的緩和が世界のエブリシングバブルを支えている。そしてドル/円の上昇はエブリシングバブルの象徴である。円売りのゲームに参加しているのは日本の個人投資家だけではない。日銀が異常低金利を続ける中、円は調達通貨となり、20兆ドルのキャリートレードが行われているという。
注意しなければならないのは、こうした円キャリートレードは、株式市場が暴落すれば(1998年のロシア危機・LTCMショックや2008年のリーマンショックで巻き戻されたように)最終的には涙をのむことになることである。
経済学者のルートヴィヒ・フォン・ミーゼスは、「中央銀行の刺激策で上昇したものは、インフレや弱気相場にかかわらず、必ず下落する。それは時間の問題であり、どれだけ(下落が)深刻なのかという問題である」と語った。
「信用拡大でもたらされた好景気は、結局のところ崩壊するのを避ける手段がない。残された選択肢は、さらなる信用拡大を自ら断念した結果、すぐに訪れる危機か、ツケを積み上げた結果、いずれ訪れる通貨制度を巻き込んだ大惨事かだけである」

(ルートヴィヒ・フォン・ミーゼス)
日本を滅ぼす20兆ドルの円キャリートレード!? | トウシル 楽天証券の投資情報メディア (rakuten-sec.net)

 

 

※ 現在の資産バブルの元凶は新型コロナウイルスの惨禍を理由に各国政府が巨額の国債を発行し、中央銀行が異常な金融緩和を行ったことによる。結局はその予算は有効に使われることはなく、「株式、債券、商品、暗号資産、不動産などの各種資産」に資金が向かい、歴史的な水準にまで価格を暴騰させただけだった。こういうことをやってしまうと必ず後でツケを払うことになり、計画的に崩壊させるか、あるいは手をこまねいている間に破局的な崩壊をするか、そのどちらかしかない。恐らく、今年は迂回輸送に伴う品不足や物流混乱によってインフレがさらに進行し、消費が低迷するのだろう。(紅海危機、ホルムズ海峡封鎖リスクなど)

紅海危機から赤字へ転落する世界 すでに損失は天文学的数字に | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

そうなればアメリカが利下げをする正当性が出てくるため、それによって日米金利差も縮小し、円高方向になりやすい。もしアメリカで何らかの有事となれば極端な円キャリートレードの巻き戻しもあるのかもしれない。一般的にはインフレになれば利上げすると思われがちだが、それは好景気による過度のインフレを抑制するためにやることであり、現在起きているインフレは主に戦争によるものなのだから、中央銀行がいくら利上げをしたところで原油高やサプライチェーンの混乱によって引き起こされる物流コスト上昇を解消できるわけではない。利上げによって企業努力=コスト削減を促すことになり、いくらかのインフレ抑制効果はあるようだが、根本的な解決にはならないのだろう。

利上げとは?株価や物価など私たちの家計への影響と生活防衛策|タマルWeb|イオン銀行 (aeonbank.co.jp)

 

※ 電力会社やガス会社などは便乗値上げをしていることで過去最高益を叩き出しているが、これは政府による補助金を当てにしている分もある。

しかし、その補助金も今年の5月で一旦終了するのだから日本では6月からインフレが加速することになる。

電気・ガス補助、5月で終了 ガソリンは一定期間延長―斎藤経産相:時事ドットコム (jiji.com)

 

【参考】2024年3年4日の記事
ビットコインの値上がりは、一見、このように固有の材料によって起こっているように見えるが、投資される資金が世界全体の投資マネーの膨張によって嵩上げされているという要因では日経平均株価の上昇と根っこの部分で共通している。これは、所得効果(規模効果)とも言える。2020年のコロナ禍で行われた各国中銀の緩和マネーの膨張がまだ潰れることなく、成長を続けていると理解できる。その膨張がゆえに、株式、債券、商品、暗号資産、不動産などの各種資産の価格が総じて上がっていく。これを「何もかもが上がる」という意味で、エブリシング・バブルという人もいる。2022年3月から始まったFRBの利上げは、当初はエブリシング・バブルを崩壊させるかと思われたが、現状、そうはなっていないようだ。
ところで、なぜ世界的な過剰マネーの勢いが、ここまで育ってしまったのだろうか。発端は、コロナ禍で始まった巨大な財政出動と金融緩和である。2021年春頃からその緩和マネーが物価上昇圧力を生み出した。そこで生じた過剰マネーがFRBの利上げでも吸収し切れずに、2023年秋から資産価格の押し上げに働いた。これは、金融引き締めの下で極めて異例の現象だとみられる。
その様子を端的に表すのは、米国マネーのデータである。米マネーストックのM2の水準は、過去からのトレンドで説明されてきた。2020年には、M2の水準が米政府の財政・金融政策によって大幅に上方シフトした経緯がある。2022年3月以降の金融引き締めはそれを部分的に吸収したが、まだレベルとしては過剰状態にあると言える。以前からのトレンドに対して、2023年末のマネー水準は約15%も過大である。つまり、FRBの金融引き締めは、まだ過剰マネーを完全に吸収できていないと理解できる。これまでの経緯を振り返ると、2023年央に米物価上昇率が急激に下がってきたために、そこで多くの投資家たちは金融引き締めの終幕は近いと思った。FRB自身も、2023年12月の政策金利見通し(ドットチャート)では、2024年中に3回の利下げを予告する(次回は3月20日のFOMCで見通しを発表)。現在のFRBは、当時よりもタカ派的な情報発信が多いように思える。多分、FOMCのメンバー達はまだ利下げのタイミングを見極められていないはずだ。筆者は、米株価にあるリスクは、強すぎる緩和の思惑とFRBの利下げの判断のずれにあると考えている。今後、FRBがどのように利下げの見通しを手直しするかが鍵を握るだろう。
株価4万円超えの過熱感 ~エブリシング・バブルの香り~ | 熊野 英生 | 第一生命経済研究所 (dlri.co.jp)

 

 

※ 今年はアメリカで大統領選を控えているため、どうしてもユダヤ系の有力者に配慮しなければならない事情があり、結局、アメリカ政府はイスラエルを支持することになるのだろう。それによってイスラエルとイランの対立は深まり、ホルムズ海峡の封鎖が現実味を帯びてきている。

 

【参考】2024年4月16日の動画

イランの正規軍「革命防衛隊」は、報復攻撃を行う前にイランに面した「ホルムズ海峡」付近でイスラエルに関連する貨物船を拿捕しています。これは「イスラエルの動き次第ではホルムズ海峡でさらに影響が出るよ」という脅しともとれます。また、イスラエルの強硬派が望む次の一手は『イラン本土への攻撃』とも.…。このような状況で実は日本が一番困る状況になるかもしれません。

【タカオカ解説】緊張する中東 イスラエルは本土攻撃の報復か イランはホルムズ海峡封鎖か 悩ましい「次の一手」日本が一番困る状況に!? youtube

 
【参考】2023年7月6日の動画
 
 

 

直近の動きは日銀がこのタイミングで追加利上げに踏み切らなかったことを根拠に「安心感」が出たことで一気に円安方向になったが、投機といえども日米金利差を意識しての円売りをしていることになり、円の信認を問う動きではない。

2022年の9月と10月に財務省は円買い介入を行ったが、その時、外為特会が保有する米国債を売却して介入の資金調達をしていたらしい。

円買い介入資金賄うための米国債売りは大海の一滴、利回りは変動せず - Bloomberg

外貨準備の減少率最大に 為替介入が影響、22年度末 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

恐らく今回も財務省が介入に動くのであれば米国債を売却することになるが、既に前回介入した水準から大きく上昇しているため、予想されているよりも大規模な介入になる可能性もある。(中途半端な介入をしてもあまり効果はない)

このまま介入しなくても何らかの形で円高に向かう可能性も考えられるが、最悪の場合、どこまで円安が続くのか分からなくなり、1ドル200円などといった異次元空間に突入してしまったら、いよいよ日本もインフレを制御できなくなっているということになりかねず、中央銀行である日銀の責任も問われることになる。(それぐらい最近の投機マネーは異常性を感じるものがある)
自国通貨の急激な下落は人々にハイパーインフレを連想させることになり、キャピタルフライトを誘発することにも繋がる。

最近では「銀行の預貯金は一刻も早く引き出したほうがいい」といった煽り記事が散見されるようにもなっている。

 

【参考】

すべての商品の価格が上昇し、現地通貨の実質的な価値が急速に失われていく。これにより、人々はその通貨の保有額を最小限に抑え、より安定した外国通貨(最近では米ドルが多い)に切り替えようとする。

国際会計基準の定めでは『3年間で累積100%以上の物価上昇』をハイパーインフレの定義としている。

ハイパーインフレーション - Wikipedia

 

【参考】 2024年2月2日の記事

ハイパーインフレはアルゼンチンのような新興国に特有の現象で、日米欧など先進国で起こるはずはないと、たかをくくらないほうがいい。ミレイ大統領がダボス会議で語ったとおり、アルゼンチンはかつて自由な市場経済によって世界の経済大国となったが、その後の統制経済で貧困国に転落した。ハイパーインフレはその末期症状といえる。社会保険料を含む増税や規制で経済の活力が衰え、多額の政府債務を抱える日米欧にとって、ハイパーインフレは決して無縁とはいえない。「明日のアルゼンチン」にならない保証はない。

ハイパーインフレとは何か? そのとき株価はどうなる?(木村貴の経済の法則!) - |QUICK Money World -

 

 

つまり、日銀が円安を容認したことによってどこまで円安ラリーが続くのか分からない状態に陥っており、日銀や財務省が何もせずとも勝手に円高になるにしても、どこまで円安になってからそうなるのかという問題が起き、円高になったとしても1ドル150円ぐらいにしか戻らないということでは困ってしまう。

そのため、日銀も財務省もこのまま何もせずに円安をずっと放置し続けることは非常に考えづらく、日銀は利上げ、財務省は介入をどこかのタイミングで行うことになるのだろう。

この円安の根本的な原因はFRBが狂ったように一気に利上げし続けたことと、黒田日銀がマイナス金利政策を長く続けてしまったことにあるが、FRBの利下げが本当に年内に3回あるのかどうかや、植田日銀がどの程度利上げするのかといったことが不透明であるため、それがはっきりしないことも投機マネーを呼び込んでしまっている。

円買い介入資金賄うための米国債売りは大海の一滴、利回りは変動せず - Bloomberg

外貨準備の減少率最大に 為替介入が影響、22年度末 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

【参考】2022年11月1日の記事

「外貨準備は政府と日銀にあり、九割以上が政府の外為特会で保有されている。多くが米国債などのドル建て資産で、為替相場の急激な変動に対応する備えとして運用されている。」

外貨準備高、日本が突出 米国債など1.4兆ドル:中日新聞Web (chunichi.co.jp)

 

円が対ドルで155円30銭台、34年ぶり-介入警戒レベルに到達 - Bloomberg

 

 

※ 円安になり過ぎてしまったのだから、どういう理由でこの相場が終わるにしても、それは投機のせいでそうなるとしか言いようがない。これまでも海外の利下げや有事などによって度々円キャリートレードの巻き戻しが起き、一気に円高になる場面はあったが、なぜか今回だけはそうならないとか、これはバブルではないとか、そういった煽りが目立ち、株式や外為市場でさらに資金が投じられてしまっている。以前、ドル円が160円をつけたのは1990年のバブル崩壊の頃であり、それから5年ぐらいかけて80円まで円高になっているが、やはり一部では今回はバブルではないのだから株もドル円も暴落なんてしないし暴落なんてさせませんといった空気になっているようだ。(そういう連中がセリングクライマックスを引き起こす)

 

アングル:ドル高の痛み、最も感じているのはどこか | ロイター (reuters.com)

 

 

 

「もし金利が大幅に上昇する前に過度にインフレが進んだ場合、物価は急上昇しているにもかかわらず、政府の借金の額は変わりません。最終的に物価が2倍になれば、実質的に政府の借金は半分になります」という話をよく見かけるが、その部分だけを見れば間違った話になる。

例えば、昔の感覚の10円と今の感覚の10円では全く価値が異なっているが、それは物価が上がっただけではなく、所得もそれに伴って増えていたため。

もし物価だけ上がって所得が増えないのであれば家計は大変なことになってしまう。

インフレになれば借金を減らせるという話は詭弁であり、同じ金額でも以前よりも小さく感じる感覚になるためには所得が増えなければならない。

経済学やら財政学やら、そういった学術的な世界では「物価が2倍になれば、政府の借金は半分に」「インフレ課税」といった話はまるで常識であるかのように語られているが、一般常識の世界では物価だけ2倍になって所得が今までと同じであればどういうことになるのかバカでも分かる。

銀行の預貯金は一刻も早く引き出したほうがいい…インフレ時代に真っ先にやるべき「マネーの常識」【2022下半期BEST5】 不動産やゴールドへ安易に手を出すのも危険 (2ページ目) | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

 

昔の日本は著しい経済成長があったから物価も上がったし所得も増えた。

しかし、今の日本は明らかに経済が低迷しているため、昔のような経済成長はもうあり得ず、このまま物価だけ上がって所得が低いままであれば市民は生活に困窮していくだけになる。

このようなことは政府についても同じようなことが言える。

つまり、支出ばかりどんどん増えて税収があまり増えないのであれば財政は大変なことになる。

「政府が国債を大量に発行し続けて予算を確保し、間接的な形で日銀にほとんど全部買わせればいい」

「日銀は政府の子会社だから借金なんて返さなくていいの」

というのが自民党政権ではスタンダード化しているが、日銀のバランスシートが悪化していくことは通貨の信認を損なうことに繋がってしまう。

また、国債には「60年償還ルール」というものがあり、「返さなくていい」などということはない。

国債の発行額が増え続けていくなか、償還は可能なのでしょうか : 財務省 (mof.go.jp)

 

日本企業が積極的に海外投資を行っている理由は、日本市場が確実に萎んでいくことが分かっているからであり、企業が収益を増やしたり生き残るためにはそうするしかないということなのだろう。
最近では「買わなければ100%オフ」などという話題で盛り上がっているが、これも安倍・岸田政権の経済政策によって引き起こされた内需崩壊を如実に表している。

買わなければ100%オフ - Google 検索

 

いくらインフレになっても株高になれば問題ないといったバカな話もよく見かけるが、これも詭弁であり、インフレ(自国通貨安)になれば必ず株高になるというわけでもないし、もしそうなるのだとしてもアルゼンチンやトルコのように通貨が暴落していく中で株高になっても、最初のうちは一見すると株をやっていない人よりは豊かであるかのように思えるが、それがいつまでも続くと通貨が紙屑化してしまい、株式を利益確定しても紙屑が増えるだけになるため、自国通貨と自国株式しか持っていない者は結局生活に困窮することになってしまう。

(実際、アルゼンチンとトルコではそうなっていて、米ドル、ゴールド、ビットコインなどを保有する者以外は大変なことになっていると現地を知る人は語っている)

 

【参考】2023年6月30日の記事

「トルコの人がトルコの株とトルコの通貨しか持っていなかったら、大変なことに」

経済番組にトルコから生電話出演! トルコの通貨安やハイパーインフレは、少し形が違うものの、日本にも当てはまる。その対策は分散投資しかない!|成長する米国&世界に投資する最強のFIRE計画(プロジェクト)|ザイ・オンライン (diamond.jp)

 

 

「理論上、ハイパーインフレ時に株価が上昇するのは、企業が物価上昇分を消費者に転嫁し、利益率が維持される可能性があるからだ。」と言われているが、どうやら実際にはその「理論」は成立しないようだ。(個人的には意味不明に思える。少なくとも「アルゼンチンやトルコではハイパーインフレでも株高だから安心」ということにはなっていない。自国通貨での支払いを拒否されているのだから株でいくら儲かっても意味がない。)

そもそも株価というのは企業の実体価値を反映していなければならないのだから、通貨の暴落によって株式が実体価値からかけ離れて暴騰するのは異常であり、それはバブルなのだから、そうなってしまったら株式が暴落しようがしまいが結局誰も得をする者などいない。

ハイパーインフレとは何か? そのとき株価はどうなる?(木村貴の経済の法則!) - |QUICK Money World -

 

【参考】2023年12月9日の記事

2000年には15万円くらいの価値があった「高額紙幣」の1000ペソ札が今では公的レートでも400円くらいになってしまったので、普段の買い物に分厚い札束を持ち歩かなければならない

商品価格は毎日のように変わるので、店員は値札の張り替えに大わらわ。当然、後払いを歓迎する店などなく、クレジットカード払いは現金より2割も割高。そしてモノが高すぎて買えなくなった庶民の間に流行っているのが、自宅にあるものをお互いに融通し合う「物々交換」フリマだ

経済の「ドル化」はすでに進んでいて、ペソを受け付けない店もある。日本でお店に行って、円でのお支払いはお断りです、と言われるようなものだ

日本も他人事ではない…通貨はドルに、中央銀行は廃止?“アルゼンチンのトランプ”ミレイ大統領誕生に見る「先進国脱落」のシナリオ(小出 フィッシャー 美奈) | マネー現代 | 講談社 (gendai.media)

 


 

アメリカ政府は大量のゴールドを保有しているが、これはブレトンウッズ体制の名残によるものであり、最近になって増やしたわけではないらしい。

世界で金の保有量が多いのはどこの国?その理由も解説|ときわ総合サービス (tokiwa-ss.co.jp)

 

また、8133トンものゴールドを保有していても金額では6700億ドル≒100兆円ぐらいであるため、保有量で見ると莫大ではあるが金額で見るとそれほど大きいわけではない。(1ドル=158円で計算)

アメリカ政府の債務残高は34兆ドル(約4870兆円)に達しており、

 

「金を通貨と紐づければ国家は倒産しないということは、歴史的に証明されている」

「金と通貨を紐づけるという意味は、金本位制度を復活させる=すなわち、金とドルの交換を政府が保証するということ」

「これによって、いくらアメリカに借金が多くても倒産しないことになるのです」

 

とは言えないような気がする。

米政府の債務、34兆ドルを突破 過去最大に - CNN.co.jp

金の価値をアメリカの保有量を元に説明してみた。 | 金・プラチナ・ダイヤ・宝石高額買取なら実績No.1のリファスタ (kinkaimasu.jp)

 

管理通貨制度になってからの通貨発行量は尋常ではなく、国債発行と信用創造によって際限なくカネが流通するようになっているため、ゴールドの保有量で銀行券発行量が拘束されていた時代と今の時代を単純に比較することはできず、「また金本位制にしちゃえばいいの」といった理屈は恐らく成立しないのだろう。

管理通貨制度 - Wikipedia

信用創造 - Wikipedia

 
つまり、いくらゴールドといえども今の金銭感覚で見てしまうと、大したものではないということになってしまう。

物価も収入も予算も、あまりにも金本位制当時の感覚からかけ離れており、今更金本位制に戻そうと思ってもすんなり移行できるのかどうか疑問。

金本位制の時代の記事を読んでみると、今からまたそれを復活させようと思ってもあり得ないように思える。

金本位制 - Wikipedia

 

結局のところ、本当に価値のあるものというのは資源や人材であり、基軸通貨、列強の国債、株式などではない。

また、ゴールドにも一般的に思われているほどの価値はなく、企業も永久に成長していくわけではないのだからどこかで凋落することになっている。

そのため、「米国株が長期間下がるってことは歴史上で一度もない 2回の世界大戦中だって米国株は上がり続けてる」というのは神話を信じているようなものであり、実態は「歴史を見ればわかる通り国は栄枯盛衰を繰り返す」というのが真実であるはず。

いくら株価指数構成銘柄の入れ替えをやったところで、無限に上昇が続くということはないはずであり、現在、時価総額ランキングで上位にある銘柄であっても衰退したり他国に拠点を移したりすることもあるし、ライバル国に得意分野を取られてしまうといったことも往々にしてある。

1つの大帝国のような存在が永久に支配的な地位にあるというのは考えづらいことであり、イギリスの次はアメリカ、アメリカの次は中国、中国の次は~、といった具合に時代は常に移り変わっていくようだ。

日銀、利上げ4回から9回か? 2-3年をメドに1-2%の利上げ示唆 円安騒動の陰で研ぐタカの爪 [お断り★] (5ch.net)

 

つまり、どう足掻いたところでG7はこのまま沈んでいく運命にあり、豊富な資源や人材を持つBRICSがこれから存在感を増していくことになる。

AIやロボットなどで人材確保ができるという主張もあるが、それらが本当に人の代わりが務まるほどのレベルに達するにはまだかなりの時間を要するはず。

ロボットの方は工場、物流、配膳、受付などで既に導入されているが、あくまでも人の作業を補助したり支援したりするような使われ方となっていて、人間の代わりになるような完全なものは当分の間、出てこない。
少なくとも一部で言われているように、2年とか5年でAIが完成するとは思えない。

どれだけ中国に対してネガティブキャンペーンをやっていても、中国には資源と人材があり、今では高い水準の技術も持っている。

いずれ中国経済は復活し、世界経済の中心的役割を担うことになる可能性はある。

だかこそ「挑戦的」な態度を取っている中国を今のうちに潰しておこうというのがアメリカ政府の方針のようだが、どうも上手くいってないのではないかという疑念が生じ始めている。

アメリカにも豊富な資源や人材があり、これまでの世界経済において中心的役割を担ってきた実績もあるが、よく言われているようなアメリカの衰退や中国の台頭によって立場が逆転する恐れがある。
 

【参考】

1 XAU から USD | Gold Ounces を アメリカドル に換算 | Xe

オンス グラム - Google 検索

2.8688e+8 掛ける 2337 - Google 検索

指数表記の早見表 #math - Qiita

 

 

 

 

 

※10年ほど前に書いた個人用メモ

インフレで借金は返せない。
食料やエネルギーなどであれば必需品だから売れるけど、インフレ下で誰が特別必要でもないものを高いカネを出して買うというのか。
収入が先に増えてからでなければ、同じ物やサービスを今までよりも高い値段で買うということはない。
日本政府は畑や石油などを持っていないはず。
インフレで収入が増えるということもない。
物やサービスの値段が高くなるということは、「高くて買えない」という事態になり、貧しくなることを意味するが、「高くなると収入が増える」というのは全く筋が通らない。
仮に中央銀行が新規に自国通貨を大量に発行して自国国債を大量に買い、政府が隅々にまで行き渡るようにカネをばらまいたとしても、人々は節約しようとし、カネを貰った分だけ使うということはしないだろう。
実力が伴った意味のある収入増でなければ非常に気持ちの悪い話であり、「こんなカネが無限に貰えるわけがないだろ」と思うようになる。

インフレで借金が棒引きできるなんて言っている奴は、インフレが起きれば借金の額は変わらないのに収入が大幅に増えるから
借金を楽に返せると言っているが、インフレで収入が増えるということはない。
百年ぐらい経過して現代文明がさらに大きく進歩でもしていれば、経済規模も大きくなって収入も大きくなるかもしれないが、インフレで文明が発展するということがまずない。
古代文明の時の借金を現代文明になってから返せばいいということらしいが、実際は今が経済規模のピークで、これから爆発的に経済発展しないということなのであれば、今、借り換えをやり続けて返すつもりのない莫大な借金はどうなるのかとういうことになる。
つまり、今の運営は無限に経済発展し続けることを前提にしてカネを回している。
いわば「出世払いだ」と言っている者に莫大なカネを貸し続けている者がいる状態。
どこで「経済成長しませんでした」と結論付けるのかというと、恐らく最後のバブル崩壊の時だろう。

よく、「物価が上がると企業が儲かるからそれによって賃金が上昇する。今、まさにそういう経済の好循環が起きようとしている。」
などというトンデモ理論をマスコミやトンデモ学者や財務省OB達が吹聴しているが、まず、企業が今までと同じものを高い値段で売っても消費者が文句を言わずに今までと同じ量を買うということがありえない。
そして、仮にそうなったとしても萎んでいく日本市場のために企業がベースアップをするなんていうこともありえない。