岸田政権が可決させたGX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法とは、多くの原発の運転期間を60年超に引き延ばし、電力会社の経営改善を図るための法律だが、電力の安定供給の方はともかく、脱炭素社会の実現というのは原発を手放したくない電力会社の意向を汲んだ方便なのだろう。

 

国際環境経済研究所 理事・主席研究員の方の話によれば、

 

車検に合格すればどんなクラシックカーでも走行可能であることが良い例諸外国でも、運転期間を定める例は無く、定期的に検査を行って健全性が確認されれば運転継続を認めるという仕組みです。」

 

とのことだが、原発事故の悲惨さとクラシックカーの事故を同列に語っていたり、外国では運転期間を定める例は無いとも主張しており、疑問に思う点が多々ある。

 

 

関西電力によれば、

 

「また諸外国においても、多くは法的な寿命制限を設けていません。例えばアメリカでは、当初の運転認可期間は40年ですが、認可更新できる制度(10CFR Part54)があり、2018年2月末時点で、9割以上のプラントが60年の運転認可更新を申請済みです。また、2回目の運転認可更新(80年の運転)の申請を行ったプラントもあります。」

 

とあり、日本の原発の運転期間60年超という数字はどうやらアメリカの制度を参考にしているらしい。

国際環境経済研究所 理事・主席研究員の方は「諸外国でも、運転期間を定める例は無く」と言っているが、実際には寿命制限を定めていないのであって、運転期間を定めている例はあり、更新制度を利用することによって運転期間を延長している。

 

 

また、福島第一原発事故を受けて、ドイツ、スイス、台湾、韓国は脱原発の方針を決定しているが、チェルノブイリ原発事故を起こしたウクライナはチェルノブイリ原発1~3号機の運転を続けている。(事故を起こしたのは4号機)

(イタリアとベルギーはチェルノブイリ原発事故を受けて原発の建設を禁止している)

原発のあり方については国によって大きい違いが出ている。

つまり、原発を可能な限り使い続け、脱炭素化社会の実現をすることが国の責務であるなどという方針が世界の主流派とか常識というわけではない。

 

 

原発再稼働を特に進めている関西電力と九州電力は共に「倒産確率分析において高リスク」となる企業として指摘されていることから、特に政府に強い働きかけがあって原発再稼働及び運転期間の60年超の実現にこぎ着けたのではないかと思える。

 

【参考】

借入依存度(総借入÷総資産×100)では、業種特性として借入金がかさみやすい物品賃貸業と不動産業に該当する5社を除くと、倒産確率分析において高リスクとなる「50%超」の企業は「関西電力」「九州電力」の2社のみとなった。

 

 

関西電力の美浜原発3号機は2004年8月に高温の蒸気が噴き出して作業員5人が死亡、6人が重傷を負う事故を起こしているが、国内初の40年超えの原発として2021年6月に既に再稼働している。

こういった前例を作っていくことによって、事故を起こしたことのある原発、老朽化した原発などでも「導入技術や設置条件、メンテナンスや使用条件」等をクリアしたということにすれば60年超の運転が全国的にどんどん可能になっていくのだろう。

今後予想される巨大地震(巨大津波)、大噴火、戦争などについても条件をクリアしているのかどうか疑問がある。

 

※南海トラフ巨大地震などが発生しても原発に何も問題が発生しないという保証があるとは思えない。

日本は大災害が多い国なのだから、アメリカなどを基準に考えることはできないはず。

 

 

 

 

九州電力でも玄海原発3~4号機、川内原発1号機(2号機は定期検査中)が運転しているが、これらの原発は26年~39年経過している。

国際環境経済研究所 理事・主席研究員の方の話によれば、

 

運転開始から30年以降は、10年以内毎に点検を受けることを義務付けるという長期運転に係る規制強化(原子炉等規制法)も行われています。

 

とのことだが、「10年以内毎に点検」という表現が微妙であり、本当に規制強化をして安全性を確保しているのかどうかよく分からない。

(つまり、ちょうど30年経過した原発でも、その10年後に点検しても問題ないということなのだろうか? 意味が分からない。毎年点検を受ける義務とかそういう話なら分かりやすいが、どうもそうではないらしい。)

九州電力 運転状況のお知らせ (kyuden.co.jp)

九州電力 原子力発電所の概要 (kyuden.co.jp)

 

原発運転「60年超」可能に GX電源法が成立 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 

 

 

 

日本には、「バイナリー発電」という既に実用化された温泉発電があり、非常に有望視されているが、今のところ、電力会社は原発で稼いでおきたいという強い思いがあるらしく、他の発電については前向きになっていないらしい。

こういったことについて、河野太郎 デジタル大臣 内閣府特命担当大臣(デジタル改革、消費者及び食品安全)は、

 

「電力業界が再稼働、再稼働と叫ぶのは、ひとえに再稼働しないと電力会社の経営を直撃することになるからだ。」

 

「廃炉が決定すると、資産に計上している核燃料と原子力発電設備が資産から落とされるので損失が計上されることになり、電力会社によっては債務超過になるところもあった。そこで2013年10月に経産省が勝手に省令変更をして、原子力発電設備は廃止決定をしても一括償却しなくてよいことになった。会計上、資産というものは利益を生むもののはずだが、「廃止措置資産」は利益を生むどころか、廃炉にするための費用がかかってくるものだ。それを資産として計上し減価償却を認めるというのは、企業会計原則から逸脱したむちゃくちゃなルールで、電力会社の財務諸表はインチキだということになる。」

 

「原発は、バックエンドのコストを入れても安いなどとうそぶいていたのはなんだったのか。」

 

と2014年の時点で語っており、基本的には脱原発路線であることが分かる。

 

不都合な原子力を救済する? | 衆議院議員 河野太郎公式サイト (taro.org)

 

 

また、2021年時点では

 

「安全が確認された原発を再稼働していくのはある程度必要だ」

 

「来年にやめろとは言わないが、いずれ原子力はなくなる」

 

と語っており、2014年時点で電力会社や経産省に強い姿勢を見せていた河野氏だったが、最近はやや軟化しているらしい。

河野太郎氏「原発再稼働は必要」 自民党総裁戦出馬への「布石」か:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

 

 

河野氏の所属政党である自民党もGX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法などという際どい法律を成立させており、結局、自民党というのは有力議員がどのように持論を展開していても官僚や電力会社の意向に真っ向から対立するようなことはしていない。(つまり、そのまま通している)

 

 

【参考】

減価償却は、資産取得時の投資額を、資産の利用期間に割り振って毎年の経費として計上する手続き。原発設備の償却費用は電気料金から賄う。安全投資などがあれば、原発の資産額はその分、上乗せされる。廃炉が決定すると利益を生み出さない設備となるため、未償却の費用を一括で損失計上しなければならなかった。だが、会計規則の見直しで一部の原発資産は、廃炉後も継続して減価償却できるようになった。

原発の減価償却制度|ワードBOX|【西日本新聞me】 (nishinippon.co.jp)

 

 

 

 

 

・おまけ

第1位 松野博一
第2位 高市早苗
第3位 林芳正
第4位 鈴木俊一
第5位 河野太郎

 

【参考】

内閣総理大臣臨時代理は、日本の内閣総理大臣が欠けた場合又は事故のある場合に、臨時にその職務を担う国務大臣として予め指定された大臣が用いる職名である。ただし、この職名の使用は、実際に当該事態が発生しその職務を行う場合に限られる。概説内閣法第9条は「内閣総理大臣に事故のあるとき、又は内閣総理大臣が欠けたときは、その予め指定する国務大臣が、臨時に、内閣総理大臣の職務を行う」と規定している(内閣法第9条)。

内閣総理大臣臨時代理 - Wikipedia