岸田政権は原発の60年超の運転を可能にする「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法」を成立させ、早速、関西電力は高浜原発1号機を7月下旬に再稼働させる方針を固めた。
岸田の言う脱炭素社会を実現する「グリーントランスフォーメーション」などという意味不明な言葉の意味がようやく分かったわけだが、このような国民を小馬鹿にした姑息な原発再稼働のやり方や言葉の使い方からは、いかにも首相を意のままに操る官僚らしさが伝わってくる。
恐らく電力会社としては徹底的に国民や国に対してプレッシャーを掛けることによって全原発の再稼働を実現させる狙いがあるのだろう。
「原発さえ稼働できればあなた達はこの電気料金高騰の苦しみから解放されますよ」と電力会社は言っている。
「原発再稼働させて楽になりましょう?」と電力会社は言っている。
原発には重大な事故を起こすリスクが常に付きまとい、日本だけでもかなりの件数の原発事故が発生しており、2011年の福島第一原子力発電所炉心溶融・水素爆発事故では一時期、広範囲に汚染されることになった。
廃炉費用も含め、広範に計り知れない経済損失が発生した。
当然、その原発事故による精神的・肉体的苦痛、障害なども計り知れない。
一部の政治家は「原発で死亡事故が起きた例がどれくらいあるか調べてみたが、ゼロです」「原子力と原子爆弾の区別がついていない人もおられ、原発は危ないと言う人もいる」などと発言しているが、実際には日本で起きた原発事故だけ見ても、福島第一原子力発電所事故(INESレベル7)では収束作業に従事していた男性が肺がんを発症し死亡している例もあり、汚染に伴う避難生活で1514人が死亡している。
関西電力美浜発電所3号機2次系配管破損事故(INESレベル1)では5名が死亡している。
原発ではないが原子力事故として、東海村JCO核燃料加工施設臨界事故(INESレベル4)では2名が死亡している。
自民・麻生氏「原発で死亡事故ゼロ」発言、官房長官は「起きている」 [自民]:朝日新聞デジタル (asahi.com)
福島原発周辺8町村 1514人が震災関連死 7割が3回以上移転 | 毎日新聞 (mainichi.jp)
また、官房長官も「原発において直接、放射線障害で亡くなった事例はないと認識している」などと発言しているが、放射線で直接的に死亡している例はある。
【参考】
事故から4ヶ月後の1986年8月、ソ連政府はIAEA(国際原子力機関)に事故報告を提出した。その報告などに基づくと、大量の放射線被曝による急性障害が200名あまりの原発職員と消防士に現れ、結局31人が死亡した(爆発の時に行方不明になった1人、事故当日火傷で亡くなった1人、被曝以外の死因1人を含む)。
【参考】
ウクライナ共和国のクラマトルスクに新築されたフルシチョフカ様式のアパートメントに入居した人々のうち、2組の家族から次々に白血病による死者が出た。4名の死者のうち3名までが子供であったが、医師は当初白血病が発生した原因を特定できず、「遺伝的要因によるものではないか?」と推定したが、この説明に納得しない片方の家族の父親が、1989年に当局に対して「建物が何かおかしい」と訴え出た事から事態が発覚した。原因はアパートメントの壁のコンクリートの中に骨材として紛れ込んでいたセシウム137の放射線源であった。この放射線源は1970年代にドネツィク州の採石場で工業用放射線源として使用されていたもので、70年代後半に採石場から紛失し、捜索を行っても行方知れずのままとして報告されていたものであった。この放射線源が意図せず埋め込まれた壁が2家族の子供部屋のベッドの真横に位置していた事が、10代の子供たち3名が犠牲となる悲劇を生んでしまった。
個人的には、2011年の福島第一原発事故後に、原発周辺(大熊町や楢葉町など)にそのまま人が住んでいたら癌や白血病などの重い障害を負った人が多数出ていたのではないかと思えるが(特に若年者)、「旧民主党政権が過剰な避難指示を出して死んだだけだ」などと言っている輩もいる。
事故発生直後に避難したからこそ被爆量を軽減できていたことは明らかなのだから、常識的な感覚から言っても、あれだけの重大な事故を起こしておきながらそのままその場に留まるというのは正常な判断ではないはず。
あの原発周辺地域の病院にそのまま患者を残しておくこともあり得ない判断であり、もし本当にそんなことをするのであれば医療従事者やその他スタッフもあの状況でその場に留まるということになるのだから、やはりあり得ないはず。
当然、チェルノブイリ原発事故の際にも周辺地域の住民は全て避難している。(しかし、避難してから数か月後に再び汚染された自分の家に戻った時、それは永遠に自分の家に別れを告げる意味しかなく、大事なものを持ち出そうにも、汚染が酷いために廃棄せざるを得なかったという)
www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/GN/GN9207.html
福島第一原発事故はチェルノブイリ原発事故ほど深刻な影響はなかったが、閣僚が
「原発で死亡事故が起きた例がどれくらいあるか調べてみたが、ゼロです」
「原子力と原子爆弾の区別がついていない人もおられ、原発は危ないと言う人もいる」
などといった発言をすることには非常に不快感があり、また、不正確で無責任であるように思える。
【参考】
「Williamsによると日本はチェルノブイリ周辺地域と比べてヨウ素の日常的な食事摂取量が多いこと、また、子供の甲状腺被ばく推定線量の最大値がチェルノブイリとは大きく違うこと(福島:66ミリグレイ、チェルノブイリ:5,000ミリグレイ)からも、福島原発事故後の3年間で見つかった甲状腺がんは、原発事故の放射線の影響によるものではないと示唆されています。」
環境省_チェルノブイリ原子力発電所事故と東京電力福島第一原子力発電所事故との比較(被ばく時年齢) (env.go.jp)
どうしても原発を再稼働する必要性があるというのであれば、それ相応の安全対策と丁寧な説明が必要なはずだが、電力会社には伝統的な隠蔽体質があり、信用してほしいと言われても簡単には信用できない。
【参考】
日本では知られているだけでも19件の原子力事故が発生しており、「原発は安全」というのは説得力がない。
【参考】
世界中で原発事故が発生し続けている。