「敵基地攻撃能力を持ちながら一方的にやられ続けるなんてありえない。殴り返さないと付け上がる、いじめと一緒。」という意見をよく見るが、こういった発想は短絡的であるように思える。

まず、相手国が演習の準備をしているだけなのに、自国や自国の指導者に「アドバイス」をしている国の判断で「敵が攻撃態勢に入った。やられる前に撃て。」などということになってしまった場合、その情報が正確である保証などなく、早とちりや策略によって不必要な先制攻撃を仕掛けることになるかもしれず、その場合は自分の方から誤解によって戦争を始めたことになってしまう。

自民の連中がこの約10年の間にやってきたことを見ると、それを可能にするための法整備と予算編成だったとしか思えない。

 

自民党の浜田防衛相は日本には敵国というものが存在しないにもかかわらず、「他国が我が国に対して武力攻撃に着手した時」に日本は相手国に先制攻撃していいなどと言っている。

それが軍事演習なのかどうかの区別をどうやってつけるのかについて何も説明することもできないようだが、国際法違反であり、国内法違反でもある先制攻撃について、「反撃能力」などという詭弁を弄している。

(韓国にとって北朝鮮は敵かもしれないが、日本にとって北朝鮮は敵ではない)

 

 

 

 

最近、自民党政権がアメリカから巡航ミサイル「トマホーク」を2100億円分購入する方針を示したが、既にトマホークに搭載可能な核弾頭は全て解体され退役している。

しかし射程距離が約1200km~3000km程度であることから、中国、ロシア、北朝鮮といった国(特に中国と北朝鮮)の基地を強く意識したものとなり、いたずらにそれらの国を刺激することになってしまう。

これは迎撃ミサイルではなく、攻撃用ミサイルであるため、これまで一部で求められてきた「敵基地攻撃能力」「反撃能力」の獲得という意味があり、専守防衛に変更はないにせよ、これまでよりも一歩進んだ防衛体制ということになるのだろう。

(しかし、浜田防衛相は日本の専守防衛を否定している)

このミサイルの射程距離を見る限りでは、やはり中国、ロシア、北朝鮮を念頭に置いた軍事作戦で使用することを想定しているはず。

「射程距離は1200km~3000kmなので、ほぼ2000km以内に点在する中国本土の主要な基地に届きます。抑止力になるという意味で、戦争の脅威は下がります」などと元防衛省情報分析官で軍事アナリストの西村金一という人物が言っているが、個人的な感覚としては全く逆なのではないかと思ってしまう。

 

 

安倍政権下で集団的自衛権の行使を可能にする法律が成立してしまっている現在、中国、ロシア、北朝鮮のいずれかの国で友軍が軍事行動を取り、支援を求めてきた場合、日本からトマホークなどの巡航ミサイルによって攻撃できるような攻撃態勢を整えようとしているとしか思えない。
しかし、一方で、「そもそも巡航ミサイルは何度も旋回し迂回飛行しながら行き先を騙し奇襲攻撃する使い方になるので、最大射程は有効射程としては使わないのが普通です。速度の遅い巡航ミサイルを単純に真っ直ぐ飛ばしたら敵に待ち構えて迎撃されて簡単に撃墜されてしまうからです。」とも言われていることから、実際にはトマホークの射程距離は1600km程度らしい。

つまり、トマホークを実戦配備するにしても、実際に届く場所としては中国とロシアの一部と北朝鮮全域ということになり、北朝鮮との戦いを意識しているのかもしれない。

 

また、トマホークは戦艦や潜水艦から発射されるミサイルであるため、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」(陸上イージス)の配備を断念した経緯を踏まえると、「イージス・アショア」の代わりとなるものとして浮上した案である可能性もある。

トマホーク (ミサイル) - Wikipedia

 

「イージス・アショアの射程は約二千キロと想定される。INF全廃条約では、射程が五百キロから五千五百キロまでの範囲の核弾頭、及び通常弾頭を搭載した地上発射型の弾道ミサイルと巡航ミサイルの廃棄を求めており、海上発射型のそれは禁止されていない。」
という国会でのやり取りもあったため、やはり今回のトマホーク導入はイージス・アショアの代替案であるようにも思えるが、台湾有事を想定し、急いで日本に実戦配備したいというアメリカと自民党の思惑もあるのかもしれない。
イージス・アショア導入と中距離核戦力全廃条約の整合性に関する質問主意書 (shugiin.go.jp)

 

「開発経費ってのは元を取ってるとは思いますけれど、基本的にFMS(対外有償軍事援助)で買うときには、開発経費を割り掛けして、価格にのってくる。アメリカ軍が買う金額と比べて2倍から3倍ぐらいの価格に高くなる」

と言われていることからも分かる通り、これは日本の防衛のためというよりはアメリカのために無駄に高く、そして使いづらい兵器を自民党政権が購入することで、自らの保身を図る意味合いの方が強いのだろう。(アメリカは何らかの形で日本の選挙に影響している)

 

恐らく、トマホークに限らず、今後、自民党政権は次々とアメリカから旧式の使いづらい兵器を購入し続け、アメリカの方は新型の使いやすい兵器を大量に生産するつもりなのだろう。
例:「トマホーク block Ⅴa (ブロック5a)」など

トマホーク巡航ミサイルについて・核攻撃型はもう存在しない・対地/対艦兼用の新型が登場(JSF) - 個人 - Yahoo!ニュース

 

 

 

国際社会は北海道も沖縄も日本の領土であると誰もが認めているのだから、中国やロシアが沖縄や北海道に軍事侵攻し、占領するなどということはやはり考えにくい。

特に北海道については自衛隊と在日米軍を退けたうえで上陸して占領することは難しく、ロシア軍上陸部隊を極東方面に配置するだけでもかなり目立つのだから実行に移す前に察知されてしまい、現実的ではない。

北海道を制圧するだけでもかなりの兵力が必要になるのだから、やはりロシアが日本を攻撃するなどという噂には全く信憑性がない。

アメリカ、財務省、防衛相辺りがメディアで散々危機意識を煽って予算を確保する狙いなのだろう。

尖閣諸島については確かに中国と台湾が領有権を主張しているが、それは海底資源が発見されてから突如として無関心だった尖閣諸島に目を向けるようになった経緯があるのだから、尖閣問題は資源問題であると言っても過言ではなく、それは武力ではなく外交で解決するべき問題であるはず。(台湾に関しては漁業権をめぐるトラブルがメインだが現在鎮静化している)

 

【参考】

「1969年に国連の報告書で東シナ海に石油埋蔵の可能性があることが指摘されると、それまで何ら主張を行っていなかった中国は、日本の閣議決定から76年後の1971(昭和46)年になって、初めて尖閣諸島の「領有権」について独自の主張をするようになりました。」

中国は、長年にわたって、我が国が尖閣諸島を領有する事について一切異議を唱えず、海底資源埋蔵の可能性が指摘された後、突如として領有権について独自の主張を始めました - 尖閣諸島|内閣官房 領土・主権対策企画調整室 (cas.go.jp)

 

 

【参考】

「尖閣―漁業権解決し沈静化した台湾」共同通信外信部次長・太安 淳一 | 特集・ 次の時代 次の思考 Ⅱ (gendainoriron.jp)