強欲な奴を操縦するのは容易い。

そういう人物に立場を与え、「閣下」などといった敬称で呼び、何でも自分の思い通りになってきたと錯覚させてやれば全能感を抱くようになる。

その人物は「開けゴマ」と唱えれば本当にどんな扉でもこじ開けることができ、「あいつを殺せ」と言えば本当に殺すことができた。次期君主を指名することさえできた。

しかし実際には何の実力もなく、ただ何者かに願いを叶えてもらっていただけだった。

ある日、その人物にとって非常に不都合なことが起きるが、今回も自分だけは絶対助かると確信する。

ところが、今回ばかりはなぜか思い通りになどならなかった。

なぜなら、その人物は既に用なしになっていたからだった。

権力などというのは所詮、その程度のものでしかない。

(本当に頭のいい奴には敵わない)