このパンデミックは最初の感染が確認された段階で、その場所を広範囲に封鎖をしていれば恐らく防ぐことができたが、それができなかったことで世界に広まってしまった。

封鎖であればどのタイミングでやったのかが全てだと言っていい。
(今回はそれが不可能なウイルスだったのかもしれない。武漢では一見、本来やるべき封鎖をして成功しているように見えるのだが、実際には武漢市が中央政府に嘘を吐いていたために実態の把握が遅れ、封鎖も遅れている。封鎖の直前に情報が洩れ、かなりの住民が逃げ出してもいるのだから、恐らく中国では封じ込めに成功している場所とそうでない場所があるのだろう。「武漢で謎の肺炎が流行している」、「新たなSARSが発生した」といった騒ぎが起きていた時、本当にその問題は武漢だけだったのかどうかも分からない。その時点で既に他の国でも感染者がいた可能性もあると言われている。)


このようなことは鳥インフルエンザが発生した時と似た対応が本来必要であり、どこかの養鶏場で感染が確認された場合、半径10kmにある養鶏場からの出荷を全て停止し、防護服を着用した職員が範囲内にある養鶏場の鶏を全て殺処分するのが通常の手続きのはず。

全国の養鶏場に鳥インフルエンザが広まった段階で封鎖しても意味がない。
発生源で封鎖に失敗し、国内にウイルスが入ってきてからもあまり検査せず、隔離もせず、ある程度感染が拡大してから中途半端な封鎖をする(移動制限など)、では上手くいくはずはない。

特に、感染者を隔離せずに自由に行動させているというのは、汚染を放任しているに等しい。


これは相当強力な感染力を持つウイルスなのだから、たった一人の感染者が入国時に公共交通機関(航空機を含む)や公共の施設等(空港も含む)を利用することによって至る所で感染を広めてしまった可能性がある。

本来であれば最初の感染者を専用車両で移動させ、直ちに隔離するべきだったが、初期の段階ではそれが最初の感染者であるということさえも分かっていなかった。


日本の場合、2019年12月20日に日本から武漢入りし、1月6日に帰国した患者Aが最初に感染が確認された例だったが、実際にはそれよりも前にウイルスを何らかの形で持ち込んでいた可能性も十分考えられるし、その後も何ら対策が取られないまま国内にウイルスが持ち込まれ続けていた。

つまり、全く防疫などしていなかったことになる。

仮に患者Aが日本に入ってきた最初の感染者だとしたら、その感染者が乗った航空機、使った空港、電車やバスなどの交通機関、立ち寄った店舗、利用したクリニック、職場等を全て閉鎖し、消毒しなければならなかった。

そして接触した全ての人物を隔離しなければならなかった。

たった一人の感染者が入国しただけでそれだけのことをする必要があり、しかも全ての接触者を特定することも日本では不可能なのだから、追跡を完全に行うこともできなかった。

さらに、この感染症は潜伏期間があり、初期症状も風邪やインフルエンザと見分けがつかず、無症状者もいるため、普通の感染力ではない。

しかも、空気感染するウイルスであるため、ウイルスそのものが感染力が強い。

つまり、COVID-19は防疫がほぼ不可能な感染症だったのだろう。

(日本の場合は春節の時期の中国人観光客が大勢入国していたことも初動の対応としては問題ある)


一人の感染者が航空機に乗った時点でその近くにいた他の乗客に感染させた可能性が高く、それらの感染者が各空港に降りた時点でもう既に手遅れだったのかもしれない。

つまり、これは鳥インフルエンザが発生した時のような対応ができないということになる。
日本国内の新型コロナウイルス感染症第一例を契機に検知された中国武漢市における市中感染の発生 (niid.go.jp)

 

 

 

感染症が拡大してしまった後で最も重要になるのは、やはり感染者の特定と隔離ということになる。

そうしない限り、何をしても終息するはずはない。

仮に完全なワクチンが完成したとしても感染者の特定と隔離は感染症の場合、必要不可欠なはず。

天然痘の時もワクチンはあったが、感染者の特定と隔離はやっていたのだから、どの道、ワクチンだけで終息は無理なのだろう。

十分な量のワクチンを供給することが難しいのだし、一度接種すれば数年程度は効果があるならいいが、そういうウイルスではないらしい。

特効薬の開発も不可能なのだろう。COVID-19の特効薬をつくるということは、風邪の特効薬よりもっと難しいものをつくるということになる。


中国がうまくいっている理由も大規模検査を繰り返し、感染者と濃厚接触者を特定し、徹底的に隔離し続けたため。

中国の場合、特に重要な都市では全ての市民の健康状態の把握と行動の追跡と誘導が可能になっていて、そういう場所に限って全ての資源を集中し、安全な場所として維持するという強い意志が感じられる。

つまり、中国が最も重視していたことは、安全な場所の確保だったように思える。

まだ感染が確認されていない場所をクリーンに保つというよりは、重要な都市を死守するという方針らしい。

 (今も感染が確認された場所では封鎖措置が取られているが、それがどの程度効果的なのかは分からない) 

中国は国土が広く、人口も多く、貧富の差も激しい国であるため、14億人全てを管理し、検査し、隔離対象にすることが不可能。したがって、的を絞った対策をしているとしか思えない。


欧州の方でも広範囲に封鎖措置(主に移動制限)を続けてきたが、全くと言っていいほど効果がなかった。

本当に完全に人の移動をできなくするならあらゆるインフラは使えなくなってしまい、その場所が死んでしまうため、どうしても中途半端な移動の制限になってしまう。

そのため、封鎖をするならごく初期の段階で限られた場所で行わなければならない。

(都市を丸ごと封鎖する場合、単にその都市からの出入りを禁止するということなのか、それともその都市内での移動も禁止し、ほぼ全員、家か隔離施設に閉じ込めて、最低限のインフラだけ機能させるということなのか、という違いもあるが、そういった都市を隔離施設化するようなやり方は中国のような国でもなければできないらしい) 
中国のように感染が確認されたら直ちに感染者が住む地区の封鎖と濃厚接触者の特定と隔離をしていれば、恐らく封鎖にも効果はあるのだろう。

しかし、感染者と濃厚接触者の特定ができているのであれば封鎖する意味はあまりないような気もする。

なぜ封鎖の効果をここまで疑問視するのかというと、このウイルスは感染力があまりにも強く、鳥インフルエンザなどと同様に捉えていいとは思えないため。

鶏の場合は出荷されるまでは養鶏場にしかいないが、人間の場合はそういうわけにはいかない、というのもある。

(本当に初期の段階で発見できる保証がない。無症状者もいるし、風邪ぐらいの症状しか出ない者もいる。それらの感染者が知らぬ間に人にうつしていることがある。余程自由が制限されていて、居住者は職場と自宅の間ぐらいしか移動できないような状況にでもなっていれば封鎖の効果もあるのだろう)

 

 

 

専門家らはこのウイルスの評価を様々な面で誤った。

毒性についてもそうだが、特に感染力の評価が狂っている。

これの基本再生産数は1.4~6.49(平均3.28)で、実効再生産数は1程度で推移していると3月時点で掲載されているが、実際はそれよりも大雑把に言って数十倍程度高いと思った方がいい。

なぜかというと、これは空気感染するだけでなく、症状が風邪やインフルエンザと見分けがつかない例が多いこと、無症状者も多いために無自覚な感染力を持った人が隠れ潜んでいること、子供がどうやら運び屋になっていること、動物の間でも感染が広まっていて動物からも感染すること、一度感染して免疫を獲得してもすぐに失われてしまうこと、を加味すれば基本再生産数が平均3.28程度、実効再生産数が1程度のはずはないため。※1

(他の感染症の実効再生産数は麻疹が12~18,インフルエンザが2~3)
感染症疫学の用語解説 | 新型コロナウイルス関連情報特設サイト (jeaweb.jp)


こういうウイルスの侵入を防ぐには、発生源で騒ぎがあった時点で情報を待たずに各国が独自の判断で空振りでもいいから直ちに最大級の防疫体制にし、様子を見るといったことをするしかなかった。(空港、港、国境などで入国した人を専用車両で移動させて隔離し、何度も検査して陰性であることが証明されるまで隔離し続けるいったこと)

当時それに近いことができたのは台湾ぐらいしかなかったらしい。(中国は今もそれをやっている)

大抵の国は中国に依存しているため、中国からの流れを止めてしまうと供給が断たれてしまう物が多いが、初期の段階で物ではなく人の流れを止めるべきだった。(中国側も一時的に滞っていた生産や物流を再開するべく努力はしていた)

物の表面でウイルスが増殖したり空気中に拡散するわけではないのだから、物から感染するという例はほとんどないはず。

接触感染に気を付けて、できるだけ消毒していれば特に問題はない。

(アメリカは比較的早期の段階で人の流れを空港で止めていたが、それでも遅かったようだ。そして空港で止めている間、検査をしていたわけではなく、症状が出なかった場合、入国できてしまっていたのだろう)



結局、感染する奴は感染するし、感染しない奴は感染しないのだろう。それは衛生管理次第のようだ。

今はステロイド薬「デキサメタゾン」が重症化を抑えるのに有効であることは知られているが、初期症状に関しては医療機関でできることはあまりないらしい。

(デキサメタゾンは免疫機能を抑える薬であるため、初期症状では使えない)

 

 

 

※2020/12/21 追記

欧州で流行しているCOVID-19は感染力も毒性も強い変異種らしく(特に感染力)、単純に対応を比較できるわけではないのかもしれない。

 

 

※1 2020/12/30追記

最悪の場合で考えると、ほとんどの人がマスクを着用せず、空気が低温且つ乾燥していて、密集、密接、密閉状態の場所に何か所も立ち寄り、感染者がスーパースプレッダーであり、しかも無症状者であるなら、感染力を持っている期間中に自由に行動することによってたった一人の感染者が50~100人程度にうつしていても不思議ではない。うつされた側も無症状者であったり風邪程度の症状で治ってしまっている人もいるはずだし、ヒトから動物にうつる可能性もないわけではない。