いつも冷静で落ち着いた僕は
どこにいってしまったのかな。
ずっとふたり一緒にいるんだから
何でも話して。
何でも一緒に悩んで
何でも一緒に考えようよ。
と言ってたのは僕の方なのに。
何でもは言えなくなって
涙は止まらなくなった。
なんでがんになったんだろう。
日本人女性の9人にひとりはって言うけれど。
なんで私なの?
なんで今なの?
なんで私の大切な人なの?って。
告知を受けた沢山の人が
こんなにたくさんの理不尽を背負って
初めて治療のスタート地点に着くんだね。
10年以上も前に職場で
在宅ホスピスの先生に2年密着した。
患者さんにもご協力いただいて
4人の方の癌の死と、家族の想いを追った
ドキュメンタリー番組を作った。
その時に感じたポスピスの先生の思いと
撮らせてもらった患者さんの思いは
間違いなく今までの僕の
ものごとの決め方の基本を造った。
イヤと言うほど自分の生き方を考えたし
日常生活の大切さを思ったし
愛というものを思い、知った。
つもりだったのかな。
いざ、がんになった僕は
がんになってしまった僕のこれからの
受け止め方がまったくわからなかった。
霞んでいても、うっすら見えていた
ふたりのゴールがよく見えなくなった
気がしてしまって。
君の前でだけは、いつも。
悲しくて、悲しくて。
泣いてしまう。
それでも。
同じように泣いてくれて。
同じようにくやしくて。
同じように寂しくて。
同じように毎日そばにいたくて。
同じように頑張ってくれて。
弱いところを見せてくれてうれしいよって
言ってくれる君がいた。
そうか。
僕はがんになってしまったけれど。
君も一緒に強くなろうと決めてくれたんだね。
そうしたら。
霞んだかのように見えたふたりのゴールは
意外とはっきりと見えて。
そう遠くないのかもしれないと思えたんだ。