一条の光~ダブルストーマ(人工肛門・人口膀胱)と日常と -13ページ目

一条の光~ダブルストーマ(人工肛門・人口膀胱)と日常と

大腸がん治療のため骨盤内臓全摘術を受け、人工肛門と人口膀胱(ダブルストーマ)を持つことになった41男が、ストーマや日々のことをつづります。17年11月に局所再発が見つかり、現在そいつと向き合っています。

涙の話題が続きましたので、ついでに入院中の不思議な経験について紹介します。
今回最後の入院は3ヶ月半に及びました。入院時から長期入院になることは覚悟していましたので、自分の心は完全に防御モードに入っていました。それは具体的には、
退院のことは考えない
多少のことでは一喜一憂しない
悪くなる事態を想像しない
といったことです。
そういう姿勢で、心に波風を立たせずただひたすらに耐えていました。
耐えているということすら忘れるくらい、自己暗示をかけていました。

ところが、2度目の手術から2週間ほど経ち、徐々に回復して流動食などを摂れるようになったある日、涙が止まらなくなりました。
看護師さんと他愛ない話をしては泣き、他の方のブログを見ては泣き、きっかけはなくとも家に帰りたいと思うだけで泣き、自分の好きな映画の一場面を頭の中で再生しては泣き、それが2、3日止まりませんでした。

悲しくてそうなっているのではなく、
自分が生者の国に戻って来ているからそうなっているということは、自分の中では確信できていました。

確実に身体の中で変化が起こっていました。
2ヶ月間まともに食事をすることができず点滴だけで過ごしていた時期、身体は次第に生気を失い、痩せ衰えていきました。胸は肋骨が浮き出て、臀部からは肉が削げ落ちてしまいました。
しかし流動食とはいえ食事を取り始めたことで、次第にエネルギーを持つ液体が身体に流れるのを感じました。
指先がその得体の知れない液体でビリビリしびれながら、生きている人間が持つ感覚を取り戻していました。
そういう身体の変化と同時に涙が止まらないということが起こったのです。

そうなると心にも変化が起こりました。
家に帰りたいと、強く願うようになったのです。それまではそんなことは絶対考えないようにしていたのに。

そして、その10日後には本当に退院することができました。

自分の感覚で恐縮ですが、あの時、死へ向かう道から生者の国に戻って来たに違いないと思っています。