2025年11月のテーマ

「私が何度も読んでいる漫画」

 

第三回は、

「極主夫道」

おおのこうすけ 作、

BUNCH COMICS 新潮社、2018年~発表

 

 

です。

 

この記事を書いている時点でコミックスが16巻まで出ています。

アニメ化、ドラマ化もされているので、ご存じの方も多いと思います。

基本的に一話完結になっているので、あらすじというよりは概要を…。

 

主人公の龍(たつ)はかつて「不死身の龍」と呼ばれた元ヤクザで、現在はヤクザから足を洗って結婚し、専業主夫に転身しています。

妻の未久(みく)はデザイナーをしているキャリアウーマン。家事はからきしだめで、ゲームやアニメ好き。

ヤクザ時代の弟分・雅(マサ)も今は同じく足を洗っていますが、今度は主夫業で龍の舎弟という立ち位置に収まります。主夫道を極めようと日々邁進する龍とは家事に対する熱量が全然違うので、日々お叱りを受けつつも龍の家に出入りするずぼら青年です。

龍と同じように足を洗った元ヤクザたちが日常生活で家事に奮闘する任侠コメディです。

 

私は基本的に任侠ものは苦手な方なので映画とかもあんまり見ないんですが、この作品はアニメで観てすごくおもしろかったのをきっかけに漫画を読むに至りました。(今月の記事毎回この展開だな…。)

とはいえ、面白いのは納得できるとしても、好きなジャンルとも言い難いし、なんで何度も読んでるのかなあ…と自問自答してみたところ、任侠×主夫業"主夫業"の部分に共感しちゃうのと、主人公の龍が今は違うとはいえ風貌はいまだヤクザ!のまま大真面目で家事に奮闘している姿がなんだか救われた気分になってすっきりするんだと気づきました。

 

家事はいまだに女性の仕事だとか、女性の方が得意だとか、思っている人も多いのが現実です。

プライベートな領域での仕事なので、出来栄えなどに対する評価もないといえばないしテキトーにやってもいいっちゃいいので、お金を稼ぐ仕事よりも重要性は低いとみなされていると感じています。

 

その家事を、最も家事に対して理解がなさそう…つまり、やらなさそうなキャラクター(男性・強面の元ヤクザ)が真剣に取り組んでて、またその出来栄えの素晴らしいこと!細かいことまで気を使い、テクニックはプロ級。便利グッズや特売の情報収集にも余念がない。ここまでやってる主婦(主夫)はまずいないでしょう。

まあ、ある意味ファンタジーなんで(あのキッチンにお菓子作りの道具をたくさん保管する場所はないと思う)それは良いとして、元ヤクザと主夫業の組み合わせはコメディとして面白いというだけでなく、主夫(主婦)が日々やっている家事のこまごまとしたことを知らない、知る機会がない、知ろうと思っていない、層の人たちにも知ってもらえるチャンスかなと思うわけです。

掲載している雑誌を私は知りませんが、女性向けというよりは男性向けの漫画雑誌ではないかと思っているからです。

(今は家事をする男性も増えているのは知っていますが、まだまだ家事の主軸担い手は女性が多いと感じているので…。偏見が入っているのは否めませんので、不愉快に感じる方がいらっしゃるかもしれません。すみません。)

 

それと同時に、主人公の龍がやりすぎなくらい家事に取り組んでいるのをみると、「ああ、この作業のめんどくささ(または、ちょっとした苦労とか努力)をわかってくれてるなあ…。」っていう気持ちになることがあって、すっきりするんだと思います。誰もわかっちゃくれない!って感じるのは不満をため込むことになってよろしくない。

 

ただ、任侠要素がたっぷりなので、怖い黒服のおじさんお兄さんがいっぱい出てくるし、言葉遣いもちょっとアレです。

小麦粉やら片栗粉やら何でもかんでも"白い粉"って言うのも好きではない。

でも、そんな強面のヤクザや元ヤクザが犬や猫を可愛がったり、スイーツを楽しんだり、フツー(日常風景)のことをフツーにしているところはなんだかほっこりします。

 

というか、この漫画の中ではフツーの人(元ヤクザじゃない)である妻の美久ちゃんの方がある意味ぶっ飛んでいます。家事がダメというのも普通のレベルのダメではないのです。野菜の斬り方ひとつとっても危ない!龍の誕生日をサプライズで祝おうと準備をしたら部屋が滅茶苦茶になってしまったり。ダンベルを片手でひょいと持ち上げてしまう怪力なところもあったりします。

元ヤクザの龍の方が常識家に見えてしまう天然キャラなのです。

 

ほのぼの夫婦である龍と美久は二人とも見た目の印象と本質が逆転していて、そこが結構いいコンビです。

ストーリーというよりは、日々のちょっとした一コマを一話完結で綴ってあるので、エッセイみたいな漫画です。

ふとした時にパラパラめくってくすっと笑える、知らないうちに手に取ってしまう。

そんな風に何度も読んでしまうのが「極主夫道」です。

もう読んだという方もいっぱいいらっしゃるかもですが、おすすめいたします。(*^▽^*)